高調波とは?発生原因と対策|抑制対策をプロが解説

電気設備・高調波

見えない「電気のひずみ」が設備を傷める

高調波の正体と発生原因、抑制対策を、電気設備のプロが解説

「進相コンデンサが焼けた」「機器が原因不明の誤作動をする」——その裏に、目に見えない「高調波」が潜んでいることがあります。高調波とは、電源の基本波(50Hzまたは60Hz)に重なる、周波数のひずみ成分のこと。インバータをはじめとする現代の電気機器から日常的に発生し、放置すると設備の過熱・焼損や誤作動を引き起こします。特にキュービクルを持つ高圧受電の事業所では、系統への高調波の流出を抑える対策が求められます。この記事では、電気設備の専門業者の立場から、高調波とは何か、その発生原因と障害、そして直列リアクトルやフィルタによる抑制対策までを、実務目線でわかりやすく解説します。

〰️高調波とは?基本波のひずみをわかりやすく

高調波とは、電源の「基本波」に対して、その整数倍の周波数を持つ電圧・電流の成分のことです。日本の電力の基本波は、東日本で50Hz、西日本で60Hz。この基本波に、2倍・3倍・5倍…といった周波数の波が重なることで、本来なめらかな正弦波であるはずの波形が「ひずむ」——これが高調波です。

── 基本波と高調波(60Hzの例)──
名称 周波数(60Hz系) 特徴
基本波 60Hz 電力の基準となる波
第5次高調波 300Hz 特に問題になりやすい代表格
第7次高調波 420Hz 第5次に次いで含有が多い

※第5次=基本波の5倍、第7次=7倍の周波数。数値は60Hz系の例です。

なぜ「第5次」が問題になるのか

高調波にはさまざまな次数がありますが、実務で特に問題になるのが「第5次高調波」です。理由は、含有する量が比較的多いことに加え、後述する進相コンデンサとの「共振」を起こしやすいためです。次いで第7次も含有が多く、これらの低次の高調波が、設備トラブルの主な原因になります。

目に見えないから厄介:高調波は、電圧計や電流計の数値には表れにくく、専用の測定器を使わないと把握できません。普段は問題なく使えているように見えても、水面下で設備に負担をかけ続けていることがあります。「見えないひずみ」であることが、高調波対策を難しくしています。電気の基礎知識はデマンドの基礎知識とあわせて理解すると、電力管理全体が見えてきます。

波形が「ひずむ」とはどういうことか

もう少しイメージをつかんでおきましょう。本来、電気の波形は、なめらかな山と谷を繰り返す「正弦波(サインカーブ)」です。ここに、周波数の異なる高調波(第5次・第7次など)が重なると、波形の山が欠けたり、肩に小さな波が乗ったりして、いびつな形になります。これが「波形のひずみ」です。

このひずんだ波形が、電線や機器を流れることで、余分な電流・発熱・振動を生みます。人間の耳には聞こえない雑音が、機械には負担になるようなイメージです。基本波というきれいなリズムに、余計な波が混ざることで、設備が少しずつ疲弊していく——これが高調波の本質です。だからこそ、混ざった余計な波(高調波)を取り除く・抑えることが、対策の目的になります。

⚙️高調波の発生原因|非線形負荷・インバータ

高調波は、なぜ発生するのでしょうか。原因のほとんどは「非線形負荷」と呼ばれる機器です。非線形負荷とは、電源から見て、電圧に比例したなめらかな電流が流れない機器のこと。内部で電流を急激にオン・オフ(スイッチング)することで、波形をひずませ、高調波を生み出します。

高調波を発生させる主な機器

  • インバータ機器空調・ポンプ・ファンのインバータ制御など。交流を直流に変換する過程で高調波が発生します。最も代表的な発生源です。
  • 整流器・UPS(無停電電源装置)交流を直流に整流する装置。産業用に多く、高調波を発生させます。
  • スイッチング電源パソコン・OA機器・LED照明などの電源。1台は小さくても、多数集まると影響が大きくなります。
  • 調光器・アーク炉・溶接機電流を細かく制御する機器も、高調波の発生源になります。

現代の設備は高調波が出やすい

注目すべきは、これらの機器が「省エネ・高効率」の主役でもあるという点です。インバータ制御は省エネに欠かせず、LED照明も普及しています。EV充電器のように、これから増える機器も高調波を発生させます。つまり、設備を新しく・省エネにするほど、高調波は出やすくなるという側面があります。だからこそ、現代の電気設備では高調波対策の重要性が増しているのです。

「省エネ機器=高調波源」の面も:省エネのためにインバータ機器やLEDを導入することは望ましいことです。ただし、その裏で高調波が増えている可能性も意識しておく必要があります。特に、まとまった台数を一度に導入する際は、高調波の影響も含めて検討することが、後々のトラブルを防ぎます。

⚠️高調波が引き起こす障害・問題点

高調波は、目に見えないうちに、さまざまな設備トラブルを引き起こします。「原因不明の不具合」の裏に、高調波が潜んでいることも少なくありません。代表的な障害を見ていきましょう。

① 進相コンデンサ・リアクトルの過熱・焼損
高調波電流が進相コンデンサに流れ込み、過熱・焼損を引き起こします。高調波障害の中でも、特に起こりやすいトラブルです。
対策:直列リアクトルを併用し、高調波の流入を抑える(第5・6章)。
② 変圧器の過熱・効率低下
高調波電流により、変圧器が余分に発熱します。過熱は寿命の低下や、容量の実質的な圧迫につながります。
対策:発生源の把握と、フィルタ等による高調波の低減。
③ 機器の誤作動・誤動作
高調波による波形のひずみが、制御機器やブレーカーの誤作動を招くことがあります。原因が特定しにくいのが厄介です。
対策:高調波の測定で、隠れた原因を可視化する。
④ 通信障害・その他
高調波が通信線などに影響し、ノイズや障害を起こすことがあります。計器の指示値に誤差が出ることも。
対策:発生源の分離や、抑制機器の導入。
「気づいたときには焼損」も:高調波障害の怖いところは、症状が出たときには機器が壊れている、というケースが多い点です。特に進相コンデンサの焼損は、火災につながる恐れもあります。「なんとなく機器の調子が悪い」「コンデンサがよく壊れる」といった場合は、高調波を疑い、専門業者に測定を依頼することをおすすめします。設備の点検については電気設備の保守点検もご覧ください。

📋高調波抑制対策ガイドラインとは|規制の基本

高調波は、自分の設備を傷めるだけでなく、電力系統を通じて「他の需要家」にも影響を及ぼします。そこで、高調波の流出を抑えるための「高調波抑制対策ガイドライン」が定められています。特に、キュービクルを持つ高圧・特別高圧の需要家に関わる重要なルールです。

「受電点からの流出」を抑える

ガイドラインの基本的な考え方は、「需要家の受電点から、電力系統へ流出する高調波電流を、上限値以下に抑える」というものです。自分の敷地内で発生した高調波を、系統に垂れ流さないように、需要家側で対策する責任がある、という考え方です。

2つのガイドライン:高調波抑制対策には、大きく2つの枠組みがあります。ひとつは「家電・汎用品」を対象にしたもの、もうひとつは「高圧または特別高圧で受電する需要家」を対象にしたものです。キュービクルを持つ事業所は、後者に基づいて、受電点での高調波流出を管理する必要があります。高圧受電設備を持つ事業所の位置づけは自家用電気工作物とはをご覧ください。

流出量は「計算」で確認する

需要家が系統に流出させる高調波電流は、設置する機器の種類や容量から計算して求めます。機器ごとに定められた換算係数などを使い、受電点での高調波流出量を算定し、上限値を超えないかを確認します。上限を超える場合は、抑制対策(次章)が必要になります。

対策が必要になりやすい事業所

すべての事業所で、同じレベルの高調波対策が必要なわけではありません。特に対策の検討が必要になりやすいのは、次のような事業所です。心当たりがあれば、一度、高調波の状況を確認しておくとよいでしょう。

  • インバータ機器を多く使う工場ポンプ・ファン・コンプレッサなどをインバータ制御している設備。
  • 大型の整流器・UPSがある施設データセンター、医療施設など、直流を多用する設備。
  • 省エネ改修で機器を一斉導入したLED化やインバータ化を大規模に行った事業所は、高調波が増えている可能性。

これらに当てはまる場合、機器の増設や更新のタイミングで、高調波の流出量を再確認することが大切です。新しい機器を入れたことで、それまで問題なかった設備が、ガイドラインの上限を超えてしまうこともあるためです。

🛠️高調波の抑制対策|直列リアクトル・フィルタ

高調波の抑制には、いくつかの方法があります。設備の状況や、抑えたい高調波の程度に応じて、適切な対策を選びます。代表的な抑制対策を紹介します。

── 主な高調波抑制対策 ──
対策 内容・特徴
直列リアクトル(SR) 進相コンデンサと直列に接続し、高調波の流入・増幅を抑える。最も基本的な対策
パッシブフィルタ(受動) 特定次数の高調波を吸収する回路。狙った次数に効果的
アクティブフィルタ(APF) 逆位相の電流を注入して高調波を打ち消す。広い次数に対応、高性能
相殺・多パルス化 変圧器のΔ結線や多パルス整流で、高調波を相殺・低減する

基本は「直列リアクトル」

最も基本的で広く使われるのが、直列リアクトル(SR)です。進相コンデンサと直列に接続することで、高調波電流がコンデンサに流れ込むのを抑え、共振による増幅も防ぎます。一般に、コンデンサ容量に対して6%のリアクトルが標準とされ、第5次などの高調波が多い環境では13%を選定する場合があります。進相コンデンサを設置するなら、直列リアクトルはセットで考えるのが実務の基本です。

── 直列リアクトルの割合の目安 ──
リアクトルの割合 使いどころ
6% 標準。一般的な環境で広く採用される
13% 第5次高調波が多い環境。より強く抑えたい場合

※コンデンサ容量に対する割合。環境・高調波の状況で選定します。

直列リアクトルは、高調波を抑えるだけでなく、進相コンデンサ投入時の突入電流を抑える役割も果たします。コンデンサとリアクトルは「二人三脚」で、力率改善と高調波対策を両立させているのです。どちらか一方だけでは、設備の安全は成り立ちません。

より強力な対策|アクティブフィルタ

直列リアクトルで足りない場合や、より積極的に高調波を減らしたい場合には、アクティブフィルタ(APF)が使われます。高調波と逆位相の電流を注入して打ち消す仕組みで、幅広い次数の高調波に対応できる高性能な対策です。ただし、コストは高くなるため、必要性を見極めて選定します。

対策は「発生源の把握」から:やみくもに抑制機器を導入しても、効果的とは限りません。まずは、どの機器が・どの次数の高調波を・どれだけ発生させているかを、測定で把握することが第一歩です。そのうえで、直列リアクトルで足りるのか、フィルタが必要なのかを判断します。適切な対策には、専門的な測定と設計が欠かせません。

🔌進相コンデンサと高調波|共振・焼損に注意

高調波障害の中でも、電気設備業者として特に注意を促したいのが、進相コンデンサとの関係です。力率改善のために設置する進相コンデンサが、実は高調波トラブルの震源地になりやすいのです。

なぜコンデンサが焼けるのか

進相コンデンサは、周波数が高いほど電流を通しやすい性質があります。そのため、周波数の高い高調波電流は、コンデンサに集中して流れ込みやすくなります。さらに、コンデンサと系統のインダクタンスが「共振」を起こすと、高調波電流が異常に増幅され、コンデンサが過熱・焼損してしまいます。特に第5次高調波との共振が、代表的なトラブルです。

「裸のコンデンサ」は危険:直列リアクトルを付けずに進相コンデンサだけを設置すると、高調波の流入や共振を防げず、焼損・火災のリスクが高まります。古い設備では、リアクトルなしのコンデンサが使われていることがあり、点検で見つかることもあります。進相コンデンサには、原則として直列リアクトルをセットで設置することが、安全の基本です。

進相コンデンサは、キュービクル(高圧受電設備)の中に設置されるのが一般的です。力率改善という本来の役割を安全に果たすためにも、高調波対策とセットで考える必要があります。キュービクルの構成はキュービクルの基礎知識、変圧器まわりは変圧器(トランス)交換の費用・寿命もご覧ください。

📏測定・点検で高調波トラブルを防ぐ【実務】

ここからは、電気設備業者としての実務的な進め方です。高調波は目に見えないため、「測って可視化する」ことが、対策のすべての出発点になります。

1

高調波を測定する

専用の測定器で、受電点や各回路の高調波電流・電圧を測定します。どの次数が・どれだけ含まれているかを把握します。

見えないひずみを数値で可視化することが、対策の第一歩です。
2

発生源と流出量を特定する

どの機器が高調波の発生源かを特定し、受電点からの流出量がガイドラインの上限を超えていないかを確認します。

3

適切な対策を選定・設計する

直列リアクトルで足りるのか、フィルタが必要なのかを判断し、容量や設置方法を設計します。

4

対策後に効果を確認・継続点検

対策後に再度測定し、高調波が低減したかを確認します。以降も定期点検で状態を見ていきます。

定期点検で早期発見を:高調波の問題は、進相コンデンサの状態や、機器の異常な発熱として、点検の中で兆候が見つかることがあります。キュービクルの保守点検の際に、コンデンサ・リアクトルの状態もあわせて確認しておくと、焼損などの重大トラブルを未然に防げます。電気設備の種類ごとの点検ポイントは電気設備の種類もご参照ください。

こんな症状は高調波を疑う

次のような症状が出ている場合、その裏に高調波が潜んでいる可能性があります。「原因不明」で片付けず、高調波を疑ってみる価値があります。

!

コンデンサの故障多発

進相コンデンサが何度も焼損・膨張する。高調波の典型的なサイン。

!

異常な発熱

変圧器やケーブルが、負荷のわりに熱い。高調波電流による発熱かも。

!

謎の誤作動

機器やブレーカーが理由なく誤動作する。波形のひずみが原因のことも。

高調波対策は、測定・設計・施工・点検と、専門的な知識と技術を要する分野です。「コンデンサがよく焼ける」「省エネ機器を大量に入れた」といった心当たりがあれば、まずは専門業者に測定を相談することをおすすめします。早く可視化すれば、大きな故障や火災を未然に防げます。

高調波の測定・対策は斉木電気設備へ

「進相コンデンサがよく焼損する」「省エネ機器の導入で高調波が心配」——高調波の測定から対策の設計・施工まで、電気設備のプロが対応します。キュービクルを持つ工場・ビル・店舗の設備管理をサポートします。

高調波対策を相談する

よくある質問(FAQ)

Q. 高調波とは、簡単に言うと何ですか?

電源の基本波(50Hzまたは60Hz)に重なる、その整数倍の周波数を持つ電圧・電流の「ひずみ成分」です。本来なめらかな正弦波であるはずの波形が、高調波によってゆがみます。インバータなどの機器から発生し、設備トラブルの原因になります。

Q. なぜ第5次高調波が問題になるのですか?

第5次高調波は、含有する量が比較的多いことに加え、進相コンデンサと「共振」を起こしやすいためです。共振すると高調波電流が異常に増幅され、コンデンサの焼損などにつながります。次いで第7次も多く、これら低次の高調波が主な問題です。

Q. 一般家庭でも高調波対策は必要ですか?

家庭では、個別の大がかりな対策は通常不要です。家電やLEDなどは、製品側で高調波を抑える基準に対応しています。一方、キュービクルを持ち、インバータ機器を多く使う工場・ビルなどの高圧受電の事業所では、ガイドラインに基づく対策が求められます。

Q. 進相コンデンサに直列リアクトルは必須ですか?

原則としてセットで設置するのが安全です。リアクトルなしのコンデンサは、高調波の流入や共振を防げず、焼損・火災のリスクが高まります。古い設備でリアクトルが付いていない場合は、点検・更新を検討することをおすすめします。

Q. 高調波が出ているか、どうすればわかりますか?

専用の測定器で測る必要があります。電圧計・電流計の数値には表れにくいため、専門業者による測定が確実です。「コンデンサがよく壊れる」「機器が原因不明の誤作動をする」といった症状があれば、高調波を疑って測定を依頼しましょう。

📝まとめ|見えない高調波に備える

高調波とは、電源の基本波に重なる、整数倍の周波数を持つひずみ成分です。インバータやスイッチング電源などの非線形負荷から発生し、省エネ機器が普及する現代では、ますます身近な問題になっています。目に見えないうちに、進相コンデンサの焼損、変圧器の過熱、機器の誤作動といったトラブルを引き起こします。

特にキュービクルを持つ高圧受電の事業所では、ガイドラインに基づき、系統への高調波の流出を抑える対策が求められます。対策の基本は、進相コンデンサとセットの直列リアクトル。足りない場合はアクティブフィルタなどを検討します。そして何より、対策は「測定による発生源の把握」から始まります。見えない高調波だからこそ、専門業者による測定・点検で可視化し、トラブルを未然に防ぐことが大切です。

この記事のポイント

  • 高調波=基本波(50/60Hz)の整数倍のひずみ成分。第5次・第7次が代表
  • 発生源はインバータ・整流器・スイッチング電源などの非線形負荷
  • 障害:進相コンデンサ焼損・変圧器過熱・機器の誤作動・通信障害
  • 高圧受電の需要家は、ガイドラインで系統への流出を抑える義務
  • 対策の基本は直列リアクトル(6%/13%)。強化にはアクティブフィルタ
  • 進相コンデンサは共振・焼損に注意。対策は測定による可視化から