A種・B種・C種・D種、どこがどう違う?
接地工事の4種類と接地抵抗値を、電気設備のプロが図解
「接地工事のA種・B種・C種・D種、違いがいまいち分からない」——電気に関わる方なら、一度は感じる疑問です。接地(アース)工事は、感電や火災から人と設備を守る、電気安全の土台となる工事です。使う電圧や機器の種類によって4つの種別に分けられ、それぞれ求められる接地抵抗値も異なります。この記事では、接地工事の目的から、A種・B種・C種・D種の違いと接地抵抗値、C種とD種を分ける「300V」の境目、そして0.5秒以内の遮断による緩和条件までを、早見表付きで整理します。高圧機器・変圧器・低圧機器という実際の設備での使われ方や、保守点検での扱いまで、電気設備の専門業者の視点で解説します。
📋 目次
- 接地工事とは?なぜ必要か|感電・火災を防ぐ仕組み
- 接地工事は4種類|A・B・C・D種の早見表
- A種接地|高圧機器・キュービクルの接地
- B種接地|変圧器の低圧側(系統接地)
- C種・D種接地|「300V」が境目の低圧機器
- 接地抵抗値と測定方法|規定値・500Ω緩和
- 【実務】保守点検での接地の扱い・省略条件
- よくある質問(FAQ)
- まとめ|接地工事の種類を正しく理解する
⚡接地工事とは?なぜ必要か|感電・火災を防ぐ仕組み
接地(アース)工事とは、電気設備の金属部分などを大地と電気的につなぐ工事です。ふだんは意識しませんが、万一の漏電・故障のとき、危険な電気を安全に大地へ逃がすための「逃げ道」をつくる、電気安全の要となる工事です。
接地の3つの目的
接地には、大きく分けて3つの目的があります。どれも、人と建物を電気の事故から守るためのものです。
1
感電の防止
機器が漏電しても、電気が大地へ逃げ、人が触れたときの感電を防ぎます。
2
保護装置の確実な動作
漏電時に地絡電流を流し、漏電遮断器やブレーカーを確実に動作させます。
3
電位の安定・雷対策
異常電圧の上昇を抑え、雷サージなどから設備を守ります。
法律でも定められています:電気設備技術基準(電技)第10条・第11条では、感電・火災その他の危険を防ぐため、電気設備の必要な箇所に接地などの措置を講じることが定められています。接地は「あった方がよい」ではなく、安全のために欠かせない措置です。
「接地抵抗」が小さいほど安全
接地の効き目を表すのが「接地抵抗値」です。これは接地極と大地の間の電気抵抗で、値が小さいほど地絡電流が流れやすく、危険な電気をスムーズに大地へ逃がせます。だからこそ、接地工事には種別ごとに「接地抵抗値は○Ω以下」という基準が定められているのです。この抵抗値の考え方が、次に説明する4種類の分類の中心になります。
接地がないと何が起きるのか
接地の大切さは、「なかったらどうなるか」を考えると分かりやすくなります。たとえば、洗濯機の内部で漏電が起きたとします。接地があれば、漏れた電気は接地線を通って大地へ逃げ、同時に漏電遮断器が働いて回路を切ります。ところが接地がないと、逃げ道のない電気が金属の外箱にたまり、人が触れた瞬間、体を通って大地へ流れます。これが感電事故です。
接地は「見えない安全装置」:普段はまったく目立たない接地ですが、漏電という「もしも」のときに、人の命を守る最後の砦になります。特に水気のある場所(洗面所・厨房・屋外)では、感電の危険が高まるため、接地の重要性がいっそう増します。目に見えないからこそ、正しく施工され、維持されていることが大切です。
📊接地工事は4種類|A・B・C・D種の早見表
接地工事は、電気設備技術基準の解釈(電技解釈)第17条により、A種・B種・C種・D種の4種類に分けられます。どの種別を施すかは、機器の使用電圧と種類で決まります。まずは全体像を早見表で確認しましょう。
── 接地工事の種類と接地抵抗値(早見表)──
| 種別 | 主な対象 | 接地抵抗値 |
|---|---|---|
| A種 | 高圧・特別高圧機器の金属製外箱、避雷器など | 10Ω以下 |
| B種 | 高圧/低圧を変成する変圧器の低圧側(中性点など) | 150(300・600)÷Ig |
| C種 | 300Vを超える低圧機器の金属製外箱・金属管など | 10Ω以下(※) |
| D種 | 300V以下の低圧機器の金属製外箱・金属管など | 100Ω以下(※) |
※C種・D種は、地絡時に0.5秒以内で自動遮断する装置を施設する場合、500Ω以下に緩和されます。B種のIgは1線地絡電流です。
2つの役割で整理するとわかりやすい
4種類は、役割で2つに分けると理解しやすくなります。A種・C種・D種は「機器を接地して人を守る(機器接地)」、B種は「変圧器の低圧側を接地して系統を守る(系統接地)」という違いです。
| 役割 | 種別 | 守るもの |
|---|---|---|
| 機器接地 | A種・C種・D種 | 漏電した機器に触れる「人」を守る |
| 系統接地 | B種 | 高低圧の混触時に「低圧側の系統」を守る |
覚え方のコツ:A→B→C→Dの順に「扱う電圧が下がっていく」とイメージすると整理できます。A種は高圧・特別高圧、C種は300V超の低圧、D種は300V以下の低圧。B種だけは変圧器の低圧側という別の役割、と押さえましょう。次章から、種別ごとに詳しく見ていきます。
接地線の太さにも基準がある
接地工事では、接地抵抗値だけでなく、機器と接地極を結ぶ「接地線(アース線)」の太さにも下限が定められています。地絡電流を安全に流すため、細すぎる電線では役割を果たせないからです。接地線の太さは、種別や、その回路を保護する過電流遮断器の定格などに応じて、電技解釈・内線規程で決められています。
接地線の基本ルール:接地線の被覆の色は、原則として「緑」または「緑/黄(黄緑)」と定められています。現場でアース線を見分ける手がかりになります。また、断線・腐食した接地線は役割を果たせないため、点検で状態を確認することも重要です。
🏭A種接地|高圧機器・キュービクルの接地
A種接地工事は、高圧・特別高圧の電気機械器具に施す接地です。扱う電圧が高く、万一の漏電時の危険も大きいため、最も厳しい「10Ω以下」という接地抵抗値が求められます。
A種接地の主な対象
- ✓ 高圧・特別高圧機器の金属製外箱・鉄台高圧で動く機器の外箱など。漏電時に高電圧が外箱に現れるのを防ぎます。
- ✓ 避雷器(LA)雷サージを大地へ逃がす避雷器の接地。確実な放電のために低い抵抗値が必要です。
- ✓ 高圧計器用変成器の二次側高圧の計測機器まわりなど、高電圧が関わる箇所に施します。
A種接地が身近に関わるのが、ビルや工場、店舗の受電に使われる「キュービクル(高圧受電設備)」です。キュービクル内の高圧機器には、このA種接地が施されています。高圧を扱うだけに、接地の施工・維持は専門的な管理が欠かせません。キュービクルの基本はキュービクルの基礎知識で解説しています。
A種は「有資格者」の領域:高圧を扱うA種接地の施工・点検は、電気主任技術者の管理のもと、専門の電気工事業者が行う領域です。高圧設備は感電すれば命に関わります。自家用電気工作物として、適正な保安管理が求められます。
なぜA種は「10Ω以下」と厳しいのか
A種の接地抵抗値が最も厳しく「10Ω以下」と定められているのは、扱う電圧が高いぶん、漏電・地絡が起きたときに大地へ流す必要のある電流が大きく、危険度も高いからです。抵抗値が高いと、地絡電流が流れにくく、機器の外箱に危険な電位が残ってしまいます。高圧設備で確実に電気を逃がすには、低い接地抵抗が欠かせません。
また、避雷器のA種接地は、落雷時の大きなサージ電流を一気に大地へ逃がす役割を担います。ここで抵抗値が高いと、雷サージをうまく逃がせず、設備に過大な電圧がかかる恐れがあります。A種の厳しい基準は、こうした高圧・雷という大きなエネルギーに対応するためのものです。
🔌B種接地|変圧器の低圧側(系統接地)
B種接地工事は、少し特殊です。機器を守るのではなく、変圧器の内部で高圧側と低圧側が触れ合う「混触」が起きたとき、低圧側の電位が異常に上がるのを抑えるための接地です。高圧を低圧に変換する変圧器の低圧側(中性点など)に施します。
B種の接地抵抗値は「計算」で決まる
A・C・D種が固定値なのに対し、B種の接地抵抗値は計算で求めます。基本は「150 ÷ Ig(1線地絡電流)」Ω以下です。高圧側の地絡を自動で遮断する装置の遮断時間に応じて、分子が300・600に緩和されます。
🧮 B種接地抵抗値の考え方
■ 原則:150 ÷ Ig(Ω以下)
■ 1〜2秒以内に自動遮断:300 ÷ Ig(Ω以下)
■ 1秒以内に自動遮断:600 ÷ Ig(Ω以下)
※Ig=高圧側電路の1線地絡電流(A)。遮断が速いほど、許容される抵抗値が緩和されます。
この「変圧器の低圧側を守る」という役割から、B種接地は変圧器(トランス)と切り離せない関係にあります。変圧器の仕組みや交換については変圧器(トランス)交換の費用・寿命もあわせてご覧ください。
なぜB種が必要?変圧器内で高圧と低圧が混触すると、本来100Vや200Vのはずの低圧側に高圧が侵入し、家庭やオフィスの機器に危険が及びます。B種接地は、この異常電圧を大地へ逃がし、低圧側全体を守る「系統の安全弁」の役割を果たしています。
🔧C種・D種接地|「300V」が境目の低圧機器
C種とD種は、どちらも低圧機器の金属製外箱や金属管などに施す「機器接地」です。私たちの身近な電気設備に最も多く関わる接地でもあります。両者を分けるのは、使用電圧の「300V」という境目です。
── C種とD種の違い ──
| 項目 | C種 | D種 |
|---|---|---|
| 対象の電圧 | 300V超の低圧 | 300V以下の低圧 |
| 接地抵抗値 | 10Ω以下 | 100Ω以下 |
| 緩和条件 | 0.5秒以内遮断で500Ω以下 | 0.5秒以内遮断で500Ω以下 |
| 身近な例 | 400V級の動力機器など | 一般的な100V/200V機器 |
なぜ300Vで分けるのか
同じ低圧でも、電圧が高いほど漏電時の危険は大きくなります。300Vを超える機器はより厳しい「10Ω以下」(C種)、300V以下の機器は「100Ω以下」(D種)と、危険度に応じて基準を分けているのです。工場の三相200V/400Vの動力機器はC種になることがあり、家庭やオフィスの一般的な100V/200V機器はD種にあたります。
D種は最も身近な接地:洗濯機や電子レンジのアース線、コンセントのアース端子——これらはD種接地につながっています。低圧機器の漏電から人を守る、最も数の多い接地です。漏電のときにこの接地が働くことで、感電や火災を防いでいます。漏電の調べ方は漏電の調べ方をご覧ください。
接地と混同されやすいのが「絶縁抵抗」です。接地は電気を大地へ逃がす道、絶縁抵抗は電気が漏れていないかを示す指標で、まったくの別物です。両者は保守点検で一緒に確認されることが多く、セットで理解しておくと実務に役立ちます。詳しくは絶縁抵抗測定のやり方で解説しています。
📏接地抵抗値と測定方法|規定値・500Ω緩和
接地工事は「施工して終わり」ではありません。規定の接地抵抗値を満たしているかを測定し、維持していく必要があります。ここでは、接地抵抗値の考え方と測定方法を整理します。
「500Ω緩和」の意味
C種(10Ω以下)とD種(100Ω以下)には、緩和条件があります。地絡を生じたときに0.5秒以内で自動的に電路を遮断する装置(漏電遮断器など)を施設する場合、接地抵抗値は「500Ω以下」まで緩和されます。これは、漏電を素早く遮断できるなら、抵抗値がやや高くても安全を確保できる、という考え方に基づいています。
緩和のポイント:土壌の条件によっては、10Ωや100Ωを確保するのが難しい場所もあります。そうしたときに、漏電遮断器を設けて500Ωまで緩和する方法が実務でよく使われます。ただし、緩和はあくまで条件つき。装置の設置と適正な動作が前提です。
接地抵抗の測定方法
接地抵抗は「接地抵抗計(アーステスタ)」で測定します。代表的なのが、補助接地極を使う「電位降下法」です。測定した値が規定の抵抗値以下であることを確認します。
| 測定項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 接地抵抗値 | 種別ごとの規定値(緩和条件含む)を満たすか |
| 接地線の状態 | 断線・腐食・緩みがないか。被覆色は緑/黄緑が原則 |
| 接続部 | 接地端子・接続箇所が確実に締結されているか |
接地抵抗の測定は、絶縁抵抗の測定とともに、電気設備の定期的な保守点検で行われます。どちらも「安全に電気が使えているか」を確かめる基本的な測定です。
📋【実務】保守点検での接地の扱い・省略条件
ここからは、電気設備の専門業者として、実務での接地の扱いをお伝えします。接地は、日々の保守点検や法定点検の中で、その健全性が確認される対象です。
保守点検で接地はこう確認される
自家用電気工作物(キュービクルを持つビル・工場・店舗など)では、電気主任技術者の管理のもと、定期的な保守点検が行われます。その中で、接地抵抗の測定や接地線の状態確認が実施されます。経年で接地線が腐食したり、接続が緩んだりすると、いざというとき接地が働かない恐れがあるためです。
関連自家用電気工作物の保安には、定期的な点検と有資格者による管理が求められます。詳しくは自家用電気工作物とはをご覧ください。
D種接地を省略できる条件
実は、一定の条件を満たすと、D種接地を省略できる場合があります。代表的なのは次のようなケースです。ただし省略には条件があり、自己判断は禁物です。
- ✓ 対地電圧150V以下の乾燥した場所使用電圧が低く、乾燥した場所の機器では省略できる場合があります。
- ✓ 二重絶縁構造の機器二重絶縁が施された機器は、そもそも外箱に電気が現れにくい構造です。
- ✓ 漏電遮断器で保護された回路適切な漏電遮断器を設けた回路では、条件により省略が認められます。
省略条件の判断はプロに:省略できる条件は、電技解釈で細かく定められています。条件を満たさないのに省略すると、感電・火災のリスクを残すことになります。設備の設計・施工・点検は、有資格の専門業者に任せるのが確実です。接地を含む電気設備全体の点検制度は電気設備の保守点検、電気設備の法定点検をご覧ください。
接地工事・電気設備の保安は斉木電気設備へ
「接地抵抗が規定値を満たしているか不安」「キュービクルの点検・接地の状態を診てほしい」——電気設備のプロが、施工から保守点検までまとめて対応します。ビル・工場・店舗の設備管理をサポートします。接地・点検を相談する
❓よくある質問(FAQ)
Q. A種・B種・C種・D種の違いを一言でいうと?
A種は高圧・特別高圧機器、C種は300V超の低圧機器、D種は300V以下の低圧機器に施す「機器接地」です。B種だけは役割が異なり、変圧器の低圧側を守る「系統接地」です。扱う電圧が高いほど、求められる接地抵抗値も厳しくなります。
Q. C種とD種はなぜ300Vで分かれるのですか?
電圧が高いほど、漏電時の危険が大きくなるためです。300Vを超える機器はより厳しい10Ω以下(C種)、300V以下は100Ω以下(D種)と、危険度に応じて接地抵抗値の基準を分けています。
Q. なぜD種は100Ω以下でよいのですか?
D種の対象は300V以下と比較的電圧が低く、漏電時の危険がA種やC種より小さいためです。ただし、より安全を高めるため、0.5秒以内に遮断する漏電遮断器を設ければ500Ωまで緩和される、という条件も用意されています。
Q. B種の接地抵抗値はなぜ固定でないのですか?
B種は、変圧器高圧側の1線地絡電流(Ig)の大きさによって、低圧側に及ぶ危険度が変わるためです。そこで「150÷Ig」のように計算で求め、遮断が速いほど分子が300・600に緩和される仕組みになっています。
Q. 接地工事は自分でできますか?
接地工事は電気工事にあたり、電気工事士などの資格が必要です。特に高圧を扱うA種や、変圧器まわりのB種は、電気主任技術者の管理下で専門業者が行う領域です。安全に関わるため、有資格の業者に依頼してください。
📝まとめ|接地工事の種類を正しく理解する
接地工事は、感電・火災から人と設備を守る、電気安全の土台です。A種・B種・C種・D種の4種類は、扱う電圧と役割で分けられ、それぞれに接地抵抗値の基準があります。A種は高圧機器、B種は変圧器の低圧側、C種は300V超、D種は300V以下の低圧機器——この対応を押さえれば、全体像がつかめます。
そして、接地は施工して終わりではなく、保守点検で接地抵抗を測定し、健全な状態を維持することが大切です。キュービクルを持つ自家用電気工作物では、なおさら適正な保安管理が求められます。接地の設計・施工・点検は、有資格の専門業者に任せるのが安全で確実です。
この記事のポイント
- 接地は感電・火災を防ぎ、保護装置を確実に動かすための工事
- A種10Ω/C種10Ω/D種100Ω以下。B種は「150÷Ig」で計算する
- A種は高圧機器・キュービクル、B種は変圧器の低圧側(系統接地)
- C種とD種の境目は「300V」。危険度に応じて基準が異なる
- C・D種は0.5秒以内遮断の装置があれば500Ωまで緩和される
- 接地は保守点検で維持。施工・省略判断は有資格の専門業者へ
※本記事は接地工事の種類・接地抵抗値の一般的な解説です。数値・条件は電気設備技術基準およびその解釈(電技解釈)等に基づきますが、実際の適用は設備・条件により異なります。設計・施工・省略の判断は、必ず電気設備技術基準の解釈および最新の関連省令をご確認のうえ、有資格の専門業者・電気主任技術者にご相談ください。