🏗 耐震クラスS・A・Bを正しく理解して
地震に強い電気設備を設計する
建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)に基づく選定基準を図表で完全解説
「耐震クラスSって何?」「耐震クラスと耐震種別は何が違うの?」——電気設備の設計・施工に携わる方なら、一度は疑問に思ったことがあるはずです。
耐震クラスは建物の用途や重要度に応じてS・A・Bの3段階に分類され、それぞれ求められる設計用標準震度が異なります。さらに「耐震種別」(S種・A種・B種)という別の概念もあり、混同されがちです。
本記事では、建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)をもとに、耐震クラスの定義から選定基準、設計用標準震度の求め方、電気設備ごとの耐震支持間隔まで、実務で使えるデータを一覧表で解説します。
📋 目次
- 電気設備の「耐震クラス」とは?S・A・B 3段階の基本
- 建物用途別|耐震クラス選定基準一覧
- 「耐震クラス」と「耐震種別」の違い(混同注意)
- 設計用標準震度(局部震度法)の求め方
- 電気設備別の耐震支持基準
- 建築設備耐震設計・施工指針 2014年版の改訂ポイント
- BCP対策としての耐震クラス見直し
- 耐震クラス選定チェックリスト
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
🏗電気設備の「耐震クラス」とは?S・A・B 3段階の基本
電気設備の耐震クラスとは、建物の重要度や用途に応じて求められる耐震性能のレベルを示す区分です。建築設備耐震設計・施工指針(国土交通省・2014年版)により、S・A・Bの3段階に定義されています。
クラスが高いほど大きな設計用震度を適用し、より強固なアンカーボルトや耐震支持が求められます。電気設備の設計・施工において、耐震クラスは「設計の出発点」となる最重要の基準です。
S
クラスS
防災拠点・病院・消防署など
地震後も機能継続が必須の建物
A
クラスA
一般的な事務所・学校・商業施設など
標準的な建物に適用される基本クラス
B
クラスB
重要度が比較的低い設備
・倉庫・小規模建物など
耐震クラスが決まる2つの要素
耐震クラスは、次の2つの要素を組み合わせて決定されます。
| 要素 | 内容 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| ① 建物の重要度 | 地震後に機能継続が必要かどうか | 防災拠点・医療・通信など |
| ② 設備機器の重要度 | 建物内での設備の役割・危険性 | 非常用電源・幹線・消防設備など |
建物クラスが同じであっても、設備機器の重要度によってクラスが上がる場合があります。たとえば、クラスAの建物でも非常用発電機や幹線設備はクラスSで設計するケースがあります。
📌 ポイント
耐震クラスは「建物全体のクラス」と「個々の設備機器のクラス」が異なる場合があります。設計段階で建物用途と設備の重要度を必ず確認してください。
🏢建物用途別|耐震クラス選定基準一覧
耐震クラスは建物の用途によって概ね決まります。以下の一覧表を基本方針として活用してください。なお、最終的な耐震クラスは設計者・建築主が指針に基づいて決定します。
建物用途別 耐震クラス目安
| 耐震クラス | 建物用途の例 | 理由・判断基準 |
|---|---|---|
| S | ・消防署・警察署・防災拠点 ・病院(救命救急センター含む) ・放送局・通信施設 ・発電所・変電所 ・避難所に指定された学校体育館 | 大地震後も継続的な機能維持が必要な施設。停電・設備損傷が人命や社会機能に直結する |
| A | ・一般的な事務所ビル ・学校(避難所指定なし) ・商業施設・ホテル ・工場・研究施設 ・集合住宅(共用部) | 一般的な建物。標準的な耐震性能を確保することで地震後の安全性を担保する |
| B | ・倉庫・物置 ・重要度が低い附属設備 ・小規模な建物の一般設備 | 地震後の機能継続の優先度が比較的低い設備・建物 |
設備機器の重要度によるクラスアップ
建物の耐震クラスがAであっても、次の設備機器はクラスSで設計する必要があります。
✅ クラスSが要求される設備機器(建物クラスに関わらず)
- 非常用発電機・蓄電池設備
- 消防用設備への電源供給幹線
- 防火シャッター・排煙設備の制御盤
- エレベーター機械室の電気設備
- 特別高圧・高圧受変電設備(キュービクル)で上層階に設置するもの
⚠️「耐震クラス」と「耐震種別」の違い(混同注意)
⚠️ よくある誤解:耐震クラスと耐震種別は別の概念です
「クラスS=種別S種」と思っている方が多いですが、これは間違いです。耐震クラスと耐震種別は役割が異なり、クラスから種別を決定するという関係性があります。
耐震クラスとは?
耐震クラス(S・A・B)は、建物・設備の重要度を示す区分です。「どのレベルの耐震性能が必要か」を決定するための基準です。設計の最初に確定させる項目です。
耐震種別とは?
耐震種別(S種・A種・B種)は、配線・配管の耐震支持方法を決定するための区分です。ケーブルラックや電線管などの支持間隔や固定方法を定める際に用います。
耐震クラスと耐震種別の対応関係
| 耐震クラス | 対応する耐震種別 | 支持方法の特徴 |
|---|---|---|
| クラスS | S種 | 最高レベルの支持。アングル架台+アンカーボルトで堅固に固定。振れ止め間隔が最も短い |
| クラスA | A種 | 標準的な耐震支持。アンカーボルトで固定し、規定の支持間隔を守る |
| クラスB | B種 | 最低限の耐震支持。全ネジ棒などで振れ止め支持を設ける |
📌 設計の順序
① 建物の用途・重要度から「耐震クラス(S/A/B)」を決定する
② 耐震クラスに対応する「耐震種別(S種/A種/B種)」を確認する
③ 耐震種別をもとにケーブルラック・電線管の支持間隔・固定方法を決定する
📐設計用標準震度(局部震度法)の求め方
電気設備の耐震設計では、局部震度法が基本的な設計手法として用いられます。局部震度法とは、設備機器が設置される階(上層階・中間階・1階・地階)と耐震クラスに応じた「設計用標準震度」を用いて地震力を求める方法です。
水平方向の設計用標準震度(KH)
以下の表は、建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)に基づく設計用水平標準震度の目安です。
| 耐震クラス | 上層階 (上から1/3) | 中間階 | 1階・地階 |
|---|---|---|---|
| S | 2.0 | 1.5 | 1.0 |
| A | 1.5 | 1.0 | 0.6 |
| B | 1.0 | 0.6 | 0.4 |
⚠️ 上層階ほど震度が大きくなる理由
建物は地面から高くなるほど地震の揺れが増幅されます(鞭打ち効果)。屋上やペントハウスに設置したキュービクル・受変電設備は特に大きな震度を受けるため、アンカーボルトの強度計算を慎重に行う必要があります。
鉛直方向の設計用標準震度(KV)
鉛直震度は水平震度の1/2が基本です。ただし、機器の設置形態(吊り下げ設備など)によっては別途検討が必要です。
🧮 アンカーボルトへの地震力の計算(基本式)
水平地震力 QH = 機器重量(W)× 水平震度(KH)
鉛直地震力 QV = 機器重量(W)× 鉛直震度(KV)
※ KV = KH / 2 を標準とする。実際の計算は耐震計算書に基づき、アンカーボルト本数・径・埋め込み深さを決定します。
上層階の定義(何階から上層階か)
「上層階」は建物全体の階数により定義が異なります。
| 建物の階数 | 上層階(上から1/3)の目安 |
|---|---|
| 3〜5階建て | 最上階(屋上含む) |
| 6〜9階建て | 上から2〜3階 |
| 10階以上 | 上から1/3の階数分 |
🔌電気設備別の耐震支持基準
耐震クラス・種別が決まれば、電気設備の種別ごとに定められた支持間隔・固定方法を適用します。主要な電気設備の耐震支持基準を整理します。
ケーブルラックの耐震支持間隔
| 耐震種別 | 横引き(水平配線)の振れ止め支持間隔 | 固定方法 |
|---|---|---|
| S種 | 6m以下ごとに斜め振れ止め支持 | アングル架台をスラブ・梁にアンカーボルト固定 |
| A種 | 6m以下ごとに振れ止め支持 | アングルまたは専用金具でアンカーボルト固定 |
| B種 | 12m以下ごとに振れ止め支持 | 全ネジ棒(吊りボルト)を利用した振れ止め |
ケーブルラックの末端付近(末端から600mm以内)は、耐震クラスに関わらず振れ止め支持を設けることが必要です。
電線管・金属ダクト・バスダクトの耐震支持間隔
| 配線種別 | S種・A種(mm以下) | B種(mm以下) |
|---|---|---|
| 金属管(E管・C管)横引き | 1,500 | 3,000 |
| 金属ダクト 横引き | 3,000 | 6,000 |
| バスダクト 横引き | 3,000(斜め振れ止め付き) | 6,000 |
| 立て配管(縦方向) | 各フロア貫通部に固定(クラス共通) | |
配電盤・キュービクルのアンカーボルト
配電盤類は盤本体の重量とアンカーボルトの引張・せん断強度を計算し、耐震クラスに応じた震度を確保します。
| 機器種別 | 耐震クラスS・A | 耐震クラスB |
|---|---|---|
| 低圧配電盤・分電盤 | 耐震計算書に基づきアンカーボルト本数・径を決定 | 標準アンカーボルト(M12以上)を4本以上 |
| キュービクル(受変電設備) | 耐震計算書必須。屋上設置はクラスSを推奨 | アンカーボルト固定(計算書省略可の場合あり) |
| 非常用発電機 | クラスS適用。防振架台+耐震アンカー | 適用なし(非常用はS必須) |
📌 適用除外となる主なケース
- 管径28mm以下の電線管(横引き長さが短い場合)
- ケーブルラックの幅が300mm以下でかつ重量が軽微な場合
- 剛接合されたスラブ直結の支持(壁直張り含む)
※適用除外の判断は設計者の責任において行います。
電気設備の耐震対策全般については、電気設備の耐震対策完全ガイド|BCPと安全確保のために今やるべきこともあわせてご参照ください。
📅建築設備耐震設計・施工指針 2014年版の改訂ポイント
電気設備の耐震設計の根拠となる「建築設備耐震設計・施工指針」は、2014年に大幅に改訂されました。2026年現在も最新版です。設計・施工に携わる方は2014年版への準拠が必須です。
2005年版(旧指針)
旧指針の問題点
阪神・淡路大震災(1995年)の教訓を反映して策定。しかし、2011年の東日本大震災で電気設備の被害が多数報告され、旧指針の基準では不十分な点が明らかになった。
- 耐震クラスの定義があいまい
- 設備機器の重要度による分類が不明確
- 上層階の増幅効果が十分に考慮されていなかった
2014年版(現行指針)
主な改訂内容
東日本大震災・東北地方太平洋沖地震の被害データを反映。耐震クラスの定義を明確化し、設計用標準震度を見直した。
- 耐震クラスS・A・Bの定義を明確化
- 上層階の設計用標準震度を引き上げ(特にSクラス)
- ケーブルラックの耐震支持間隔を具体的に規定
- 非常用電源設備への耐震クラスSの適用を明記
- 既設設備の耐震改修に関する考え方を追加
2026年現在
2014年版が引き続き最新版
2026年時点で2014年版が最新の指針です。「2024年版」「2025年版」は存在しないため注意が必要です。指針本体は国土交通省・(一社)建築設備技術者協会から入手できます。
⚠️ 「最新版」に関する注意
ネット上に「2024年版指針」「2025年版指針」という情報が散見されますが、これらは存在しません。2026年現在の正式な最新版は2014年版です。設計根拠には必ず「建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)」を明記してください。
💼BCP対策としての耐震クラス見直し
企業のBCP(事業継続計画)の観点から、電気設備の耐震クラスを見直す動きが活発になっています。大地震後に電気が止まれば、生産ライン・ITシステム・空調設備がすべてストップし、事業再開に数週間〜数ヶ月を要するケースもあります。
1
既設設備の耐震診断
旧指針(2005年版以前)で設計・施工された設備は、2014年版基準で再評価が必要です。アンカーボルトの強度・本数を確認します。
2
クラスS相当への引き上げ
BCP上重要な設備(基幹サーバー室・非常用発電機・主幹分電盤)は、既存のクラスAからクラスSへの耐震改修を検討します。
3
改修費用と補助金活用
電気設備の耐震改修には中小企業向け補助金が活用できるケースがあります。事前調査→補助金申請の順で進めましょう。
耐震クラスSへのアップグレード判断基準
以下に当てはまる場合は、耐震クラスSへの引き上げを強く推奨します。
- ✓ 非常用発電機・UPSが設置されている停電時の電源維持が事業継続に直結する設備は必ずクラスS
- ✓ キュービクルが屋上・上層階に設置されている設計用標準震度2.0が適用される高リスクゾーン。旧基準での設計は要見直し
- ✓ 消防設備・防災設備への電源幹線がある消防法・建築基準法上も耐震クラスSが求められる可能性がある
- ✓ 大地震後も24〜72時間以内の事業再開が必要BCPの目標復旧時間(RTO)が短い企業はクラスSへの引き上げを検討
- ✓ 建物が旧耐震基準(1981年以前)で建設されている建物自体の耐震性能と電気設備の耐震クラスを同時に見直すことが効果的
耐震診断・改修のご相談は、斉木電気設備のサービス案内をご覧ください。補助金活用については補助金・助成金情報もご参照ください。
✅耐震クラス選定チェックリスト
設計開始前に以下のチェックリストで耐震クラスの選定漏れがないか確認してください。
- ✓ 建物の用途・重要度を確認した防災拠点・病院・通信施設 → クラスS/一般建物 → クラスA
- ✓ 設備機器ごとの重要度を確認した非常用電源・消防幹線はクラスSが必要な場合がある
- ✓ 設備の設置階(上層階・中間階・1階)を確認した上層階は設計用標準震度が最大で、アンカーボルト計算に影響する
- ✓ 耐震クラスと耐震種別を混同していないクラスSの建物 → 種別S種を適用。クラスとは別の概念
- ✓ ケーブルラック・電線管の支持間隔を種別に応じて設定したS種:6m以下の振れ止め支持 / B種:12m以下の振れ止め支持
- ✓ アンカーボルトの耐震計算書を作成したクラスS・AはKH×W で地震力を算出し、ボルト本数・径・埋め込み深さを確認
- ✓ 指針は2014年版を使用している2026年現在の最新版は2014年版。旧指針(2005年版以前)は使用しない
❓よくある質問(FAQ)
Q 耐震クラスAとBはどのように使い分けますか?
A クラスAは一般的な事務所・商業施設・学校などに適用される標準的なクラスです。クラスBは重要度が低い附属設備や倉庫などに適用されますが、実務上はクラスAが最低ラインとして扱われるケースが多くなっています。BCP対策が重要な企業では、一般設備もクラスAを選択することを推奨します。
Q 同じ建物内で設備によって耐震クラスが異なることはありますか?
A あります。建物全体の耐震クラスがAであっても、非常用発電機・消防設備への電源幹線・UPSなどはクラスSで設計する必要があります。設備ごとに重要度を判断し、クラスを個別に設定することが必要です。
Q 既存の電気設備が旧指針(2005年版)で設計されている場合、改修が必要ですか?
A 法的な改修義務はありませんが、2014年版では設計用標準震度が引き上げられているため、旧基準の設計では大地震時に損傷するリスクがあります。特にクラスSが求められる設備(非常用電源・消防幹線)については、耐震診断を実施して必要に応じた改修を検討されることをお勧めします。
Q キュービクルを屋上に設置する場合、耐震クラスはどうなりますか?
A 屋上は「上層階」に該当し、設計用標準震度が最大になります(クラスSで水平震度2.0)。一般的なオフィスビルでも屋上設置のキュービクルはクラスA・上層階の震度(1.5)が適用されます。アンカーボルトの本数・径・埋め込み深さは必ず耐震計算書で確認してください。
Q 電気設備の耐震工事にかかる費用の目安を教えてください。
A 耐震工事の費用は設備の種類・規模・設置環境によって大きく異なります。ケーブルラックの振れ止め追加工事は数十万円〜、キュービクルのアンカーボルト増強は数十万〜数百万円が目安です。補助金を活用することで自己負担を抑えられるケースもあります。まずは無料お見積もりでご相談ください。
📝 まとめ|電気設備の耐震クラス 重要ポイント
- 耐震クラスはS・A・Bの3段階。建物の重要度・用途と設備機器の重要度の両方で決まる
- クラスSは防災拠点・病院・非常用電源設備など「地震後も機能継続が必須」のものに適用
- 「耐震クラス」と「耐震種別」は別の概念。クラスから種別が決まり、種別から支持間隔が決まる
- 設計用標準震度は局部震度法で求める。上層階ほど震度が大きく、クラスS・上層階は水平震度2.0
- ケーブルラックはS・A種が6m以下、B種が12m以下で振れ止め支持を設ける
- 根拠指針は2014年版が最新。「2024年版」「2025年版」は存在しないため注意
- BCP対策として既設設備の耐震診断を実施し、必要に応じてクラスSへの引き上げを検討する
⚡ 電気設備の耐震診断・改修はご相談ください
「うちの設備、耐震クラスが合っているか確認したい」「旧指針のまま設計されているかもしれない」——そのようなご不安は斉木電気設備にご相談ください。現地調査から耐震計算、改修工事まで一貫して対応します。無料相談・お問い合わせはこちら
※ 本記事は建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)をもとに作成しています。設計・施工においては必ず最新の指針原本および関係法令を確認し、専門技術者の判断に基づいて実施してください。
※ 耐震クラスの最終決定は設計者・建築主の責任において行われます。