【ビルオーナー必読】テナントの電気代問題を解決する電気設備投資戦略|空室ゼロを目指すオーナーの新常識


はじめに|「電気代が高い」という一言が空室をつくる

「先月からうちのテナントさんが退去の相談をしてきた。理由を聞いたら、電気代が高すぎて経営が苦しいと言われた…」

こんな話を、ビルオーナー様からご相談いただくことが増えています。

2022年以降の電気代高騰は、一般家庭だけでなく、テナントを構える中小企業や店舗にとって深刻な経営課題となっています。従量単価は20〜35円/kWhが相場とされる昨今、売上は変わらないのに毎月の光熱費だけが膨らんでいく状況では、テナントが「もっと安いビルへ移ろう」と考えても無理はありません。

しかし、ここで重要なことがあります。テナントの電気代問題は、テナント自身だけの問題ではなく、ビルオーナーの「資産価値」と「収益性」に直結する経営課題だということです。

本記事では、創業50年以上・総施工数20,000件超の電気設備のプロとして、ビルオーナー様が知っておくべき電気代の仕組みから、テナントとの関係を強化し空室リスクを下げるための電気設備投資戦略まで、実務に即してわかりやすく解説します。


1. まず理解する|テナントビルの電気代の2つの仕組み

テナントビルの電気料金の仕組みは大きく2つに分かれます。この違いを正しく把握することが、すべての対策の出発点です。

① 一括契約(高圧一括受電)

大規模なオフィスビルや商業ビルで主流の方式です。ビルオーナーが電力会社と一括で高圧契約を結び、変圧器(キュービクル)で100V・200Vに変換してから各テナントへ分配します。

オーナー側のメリット

  • 個別契約と比べて電気単価が安くなりやすい(業務用高圧は低圧より割安)
  • ビル全体の電力を一元管理できる
  • テナントへ電気代を請求することで、管理収入の一部にもなりえる

注意すべき点

  • テナントは電気料金の内訳を自分で確認しにくい
  • 電気代の「上乗せ請求」は法律上違法であり、訴訟リスクがある(東京地裁・札幌高裁で相次いで判決が出ています)
  • キュービクルの維持管理費はオーナー負担になる

② 個別契約

各テナントが独自に電力会社と契約する方式です。小規模ビルや雑居ビルに多く見られます。

特徴

  • テナントが自分で電力会社やプランを選べるため自由度が高い
  • オーナーの電気代管理コストは低い
  • 一方で、テナントが高いプランを選び続けても、オーナーは関与しにくい

どちらの方式を採用しているビルも、今まさに「電気代の高騰」という共通の課題に直面しています。そしてこの課題への対応が、テナントの継続率と直結しているのです。


2. 電気代高騰がテナント離れを引き起こすメカニズム

ビルオーナーの立場で考えると、電気代問題は次のような連鎖を引き起こします。

電気代高騰
  ↓
テナントの光熱費負担が増加
  ↓
テナントの収益が圧迫される
  ↓
「より安いビルへ移転」を検討
  ↓
空室発生 → 賃料収入が減少
  ↓
ビル資産価値の低下

特に飲食店やクリニック、美容室など、設備用電力の多い業種のテナントは電気代への感度が非常に高いです。こうした業種はビルの電気設備の質によって、月間で数万〜十数万円単位の差が生まれることもあります。

一方で、逆にとらえれば**電気代を抑えられる環境を整えたビルは「選ばれるビル」**になります。「入居したら電気代が安くなった」「設備が新しくて快適」という評判は、口コミやテナント仲介業者を通じて広がり、入居希望者の呼び込みにもつながります。

テナントの電気代問題への取り組みは、単なる「好意」ではなく、ビルの競争力を高める経営投資と捉えるべき時代です。


3. ビルオーナーが取るべき5つの電気設備対策

では、具体的に何をすればいいのか。電気設備のプロ視点から、効果の高い5つの対策を解説します。


対策① 共用部・廊下・駐車場のLED化

最も即効性があり、投資回収も早いのがLED照明への切り替えです。

従来の蛍光灯や白熱灯と比較すると、LEDは消費電力を約50〜80%削減できます。廊下・エントランス・駐車場・外灯など、24時間365日点灯している共用部の照明を一括でLED化するだけで、月々の共用電力費が大きく下がります。

投資回収の目安

  • 初期費用:1灯あたり5,000〜20,000円程度(工事費含む)
  • 電気代削減効果:蛍光灯比で月々数千円〜数万円
  • 投資回収期間:約2〜3年が一般的(補助金活用でさらに短縮可能)

また、LED照明は寿命が約40,000〜60,000時間と長く、球切れによる交換コストや緊急対応の手間も大幅に削減できます。

ビルオーナーとしての視点:共用部のLED化はテナントに直接的なコスト削減メリットをもたらします。また、明るく清潔感のある共用部はビルのグレード感向上にもつながり、賃料維持・向上にも寄与します。


対策② 空調設備の省エネ型への更新

ビルのランニングコストの中で最も大きな比率を占めるのが空調です。特に製造から15年以上経過した空調設備は、最新の省エネ型と比べて電力消費量が20〜40%多い場合があります。

セントラル空調からの更新や、個別空調の省エネ型への切り替えは、テナントが直接恩恵を受ける節電対策です。特に一括契約型のビルでは、空調の省エネ化がテナントへの電気代請求金額の低下に直結します。

導入時のポイント

  • 更新前に専門家によるエネルギー診断を受ける
  • 設備の更新だけでなく、適切な温度設定や定期的なフィルター清掃も忘れない
  • インバーター制御や自動制御システムの導入で、さらに省エネ効果を高める

ある商業施設での実例では、LED化+空調自動制御システムの導入によって投資回収期間が約2〜3年に抑えられ、空調だけでも年間コストを20%以上削減できたケースがあります。


対策③ 受変電設備(キュービクル)の適切な維持管理と更新

一括受電型ビルの「心臓部」とも言えるのが、キュービクル(受変電設備)です。

キュービクルの法定耐用年数は15年(実用上は20〜25年程度)とされていますが、老朽化した設備は変圧ロスが増え、電力効率が著しく低下します。つまり、テナントが使った分より多くの電力をビル全体で消費していることになります。

また、2026年4月から「トップランナー変圧器」の新基準が適用されます。旧基準の変圧器(トランス)は基準を満たせなくなるため、この機会に設備更新を検討するオーナー様が急増しています。

老朽化したキュービクルを放置するリスク

  • 無駄な電力消費による電気代の増加
  • 突然の故障による停電→テナント営業停止リスク
  • 法令点検義務違反(電気事業法)による罰則
  • 設備の突発的な修繕費(部品によっては100万円超)

定期点検と適時の更新は、オーナーにとって「コスト」ではなく「テナントへの安心保証」です。信頼のおける電気設備会社と長期的な保守契約を結ぶことを強くお勧めします。


対策④ 太陽光発電の導入

屋上や駐車場(カーポート型)への太陽光発電設備の導入は、ビルオーナーにとって中長期的な省エネ・収益対策として有効です。

活用方法は主に2パターン

  1. 自家消費型:発電した電力を共用部や空調・照明に充て、購入電力量を削減
  2. テナントへの供給型:余剰電力をテナントに販売し、新たな収益源を確保

自家消費型の場合、太陽光発電の導入により電力購入量が減るため、電気代の基本料金(最大需要電力)の引き下げにも効果があります。これはテナントへの請求単価を下げることにも直結します。

設置費用は屋上規模や容量によって異なりますが、国や自治体の補助金を活用することで初期費用を大幅に抑えられます。また、一定の要件を満たせばFIT(固定価格買取制度)による売電収入も見込めます。


対策⑤ 電力会社・契約プランの見直し

電力自由化以降、高圧一括受電のビルでも電力会社の切り替えや料金プランの見直しが可能になっています。

現在契約している電力会社が最安とは限りません。特に大手電力会社から新電力(PPS)への切り替えや、デマンドコントロールの導入により、基本料金を下げることができる場合があります。

デマンドコントロールとは 1日の中で最も電力を多く消費した30分間の最大需要電力(デマンド値)が基本料金を決めます。このピークを意識的に抑えることで、基本料金を恒久的に引き下げることができます。専用のデマンド監視装置を導入することで、リアルタイムにアラートを出し、過消費を防ぐことが可能です。

電力会社の切り替えやデマンドコントロールは設備投資不要・または比較的小さな投資で実現でき、費用対効果が非常に高い対策のひとつです。


4.【2026年最新情報】トップランナー変圧器基準改定への対応

2026年4月から、経済産業省によるトップランナー変圧器の新基準が施行されます。

これはエネルギー消費効率の低い旧型変圧器(トランス)の使用を制限し、省エネ性能の高い新型への更新を促進するものです。キュービクルには変圧器が搭載されているため、旧基準の変圧器を使い続けているビルは、この機会に更新を検討する必要があります。

対応を急ぐべき理由

  • 既存設備を使い続けること自体は違法ではありませんが、更新すれば電力効率が向上し、電気代削減効果が得られます
  • 工事需要の集中による工期の遅延や費用上昇が見込まれるため、早めの対応がコスト面で有利です
  • 補助金の活用期限がある場合があり、申請は早いほど有利です

弊社では、現在のキュービクルの状態診断から新基準対応の更新工事まで、ワンストップでご対応しております。まずは現状診断のご相談からお気軽にどうぞ。


5. オーナーとテナントのWin-Win|グリーンリース契約の活用

近年、注目されているのが「グリーンリース契約」という新しい賃貸契約のかたちです。

グリーンリース契約とは、ビルオーナーとテナントが省エネ・環境対策について合意し、双方が協力して建物の環境性能を向上させることを取り決める契約・覚書のことです。

具体的な仕組みのイメージ

  1. オーナーがLED化や空調更新などの省エネ設備に投資する
  2. テナントは削減された電気代の一部を「グリーンリース料」としてオーナーに支払う
  3. オーナーは投資回収ができ、テナントも光熱費が削減されてメリットを得る

これにより、従来は「オーナーが設備投資をしてもテナントだけが恩恵を受ける」という不公平感が解消されます。グリーンリース契約を締結することで、投資回収期間を10年程度に設定した計画的な省エネ改修が可能になります。

さらに、環境省の「テナントビルの省CO2改修支援事業」など、グリーンリースを前提とした補助金制度も存在しており、補助金を活用すれば実質的な費用負担をさらに下げることができます。


6. 活用できる補助金・助成金

電気設備の省エネ化には、国や自治体からの補助金・助成金を積極的に活用しましょう。2026年時点で利用可能な主な制度は以下の通りです。