【記事の概要】
「電気代の高騰が経営を圧迫している」「取引先からCO2削減の具体的な計画を求められたが、何から手をつければいいかわからない」。
現在、多くの企業様からこのようなご相談をいただきます。オフィスのCO2削減は、単なる環境貢献活動ではなく、企業の利益を守り、将来のリスクを回避するための重要な「経営戦略」となりました。
本記事では、創業51年の実績を持つ電気設備会社・斉木電気設備の視点から、精神論ではない「数値に基づいた実践的なCO2削減事例」と「投資回収シミュレーション」を解説します。電気設備の根本的な見直しから、確実に効果が出るアプローチをお伝えします。
1. なぜ今、オフィスのCO2削減が急務なのか
かつて省エネやCO2削減は「できればやったほうがいい」活動でしたが、現在は「やらなければ生き残れない」課題へと変化しています。その背景には、大きく分けて3つの要因があります。
1-1. 電気料金の高騰と経営へのインパクト
最大の要因は、エネルギー価格の高騰です。2020年頃と比較して、法人向けの電気料金単価は大幅に上昇しました。燃料調整費の高騰や再エネ賦課金の影響により、何も対策をしなければ固定費は増え続ける一方です。CO2削減に取り組むことは、すなわち「電気使用量を減らし、利益を守ること」に直結します。
1-2. サプライチェーン全体で求められる「環境対応」
大企業を中心に、取引先に対してCO2排出量の開示や削減を求める動きが加速しています(Scope3対応)。「脱炭素に取り組んでいない企業とは取引できない」と言われる時代がすぐそこまで来ています。ESG投資の観点からも、環境対応は企業の評価を左右する重要指標です。
1-3. 2050年カーボンニュートラル目標と法規制
日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しています。これに伴い、省エネ法や地球温暖化対策推進法(温対法)の規制も年々強化されています。一定規模以上の事業者には報告義務が課せられていますが、中小規模のオフィスであっても、将来的な規制強化を見据えた対策が必要です。
2. 電気設備のプロが見るオフィスのエネルギー消費の実態
効果的な対策を打つためには、まず敵を知る必要があります。一般的なオフィスビルにおいて、エネルギーはどこで消費されているのでしょうか。
オフィスの電力消費内訳
省エネルギーセンターのデータ等に基づくと、標準的なオフィスビルの電力消費内訳はおおよそ以下のようになっています。
- 空調設備:約40〜45%
- 照明設備:約30〜35%
- OA機器・コンセント:約15〜20%
- その他(給湯、エレベーター等):約5〜10%
つまり、「空調」と「照明」で全体の約7〜8割を占めていることになります。この2大要素にメスを入れることが、CO2削減の最短ルートです。
見落とされがちな「見えない電力ロス」
我々電気設備の専門家が現場調査を行うと、機器の使用量以外にも「見えないロス」が発生しているケースが多々あります。
- 受変電設備(キュービクル)の老朽化による変換ロス:古い変圧器は、電気を使っていなくても熱としてエネルギーを捨てています。
- 力率(りきりつ)の悪化:無効電力が増えることで、基本料金が割高になっているケースがあります。
- 過剰な契約容量:実際の使用実態と乖離した契約により、無駄な基本料金を支払っている場合があります。
3. 【実践編】効果実証済み!オフィスのCO2削減取り組み事例
ここからは、斉木電気設備が実際に提案・施工を行ってきた中で、特に費用対効果(ROI)が高く、CO2削減効果が明確な事例を5つ紹介します。
事例1:LED照明への全面切替(初期投資型)
最も手軽で、かつ即効性があるのがLED化です。しかし、単に電球を交換するだけでは不十分です。「適切な照度設計」を行うことで、快適性を維持しながら極限まで消費電力を落とすことができます。
◆ 300㎡(約90坪)オフィスのLED化シミュレーション
従来の蛍光灯110W × 100台
最新LED照明40W × 100台
CO2削減効果約 6.5トン-CO2 / 年(▲63%)
電気代削減額約 35万円 / 年
概算工事費約 80万円
投資回収期間約 2.3年
※電気料金単価30円/kWh、1日12時間・月25日稼働で試算。数値は目安です。
【専門家のポイント】
古い蛍光灯器具をそのまま使い回してLED管だけを交換する方法(バイパス工事)もありますが、器具自体の耐用年数(約15年)を超えている場合は器具ごとの交換(一体型LEDベースライト)を推奨します。配光効率が良く、見た目もリニューアルされ、オフィスの雰囲気が明るくなります。
事例2:空調設備の最適化とインバーター化(中期投資型)
15年以上前の空調機(EHP/GHP)を使用している場合、最新の省エネ機種への更新で劇的な効果が得られます。最新機種はインバーター制御が高度化されており、部分負荷時の効率が飛躍的に向上しています。
◆ 築20年ビルの空調更新シミュレーション
更新対象15年前の定速機 → 最新の高効率インバーター機
CO2削減効果約 40% 削減
電気代削減効果基本料金 + 使用量料金で年間 約80万円削減
投資回収期間4〜6年(補助金活用時)
【専門家のポイント】
設備更新だけでなく、「デマンドコントロールシステム」の導入を推奨します。設定した電力値を超えそうになると自動で空調を制御し、基本料金の決定要因となる「最大デマンド値」を抑制します。これにより、CO2削減とコスト削減を同時に実現します。
事例3:受変電設備の更新によるロス削減(長期投資型)
高圧受電(キュービクル)を利用しているオフィスビル向けの対策です。変圧器(トランス)には「トップランナー変圧器」という省エネ基準があります。
1990年代以前の変圧器を、最新のトップランナー変圧器(2014年基準準拠など)に更新することで、電力変換ロスを約40〜60%削減できます。これは「何もしていないのに電気代が下がる」という本質的な改善です。また、PCB含有機器の処理問題や、波及事故(近隣停電)のリスクヘッジという意味でも、更新は重要な経営判断となります。
事例4:太陽光発電×蓄電池システム(補助金活用型)
オフィスの屋根や屋上を活用した「自家消費型太陽光発電」です。作った電気を売るのではなく、自社のオフィスで使い切ることで、電力会社から買う電気を減らします。
- メリット:CO2排出量の大幅削減(再エネ比率向上)、電気代削減、遮熱効果(屋根置きの場合)。
- BCP対策:蓄電池と組み合わせることで、災害停電時でも照明や通信機器、PCサーバーを稼働させることができ、事業継続計画(BCP)の強化につながります。
事例5:BEMSによる見える化と自動制御(運用改善型)
BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を導入し、「いつ、どこで、どれくらい電気を使っているか」を見える化します。
「昼休み中なのに会議室の空調がついている」「残業していないエリアの照明が明るすぎる」といった無駄をデータで可視化し、自動制御することで、運用改善だけで10〜15%の省エネを実現する事例もあります。
4. 知っておくべき補助金・優遇制度
CO2削減のための設備投資には、国や自治体から手厚い補助金が用意されています。これらを活用することで、投資回収期間を大幅に短縮できます。
| 制度名 | 対象設備 | 補助率・特徴 |
|---|---|---|
| 省エネ補助金 (経済産業省) | 高効率空調、LED、EMS、変圧器など | 設備費の1/3〜1/2補助。 省エネ診断の受診などが要件。 |
| SHIFT事業 (環境省) | CO2削減ポテンシャルの高い設備更新 | CO2削減量に応じて補助。 意欲的な目標設定が必要。 |
| 中小企業経営強化税制 | 認定を受けた省エネ設備 | 即時償却 または 税額控除(7〜10%)。 決算対策としても有効。 |
※補助金情報は年度により公募内容が異なります。最新情報は斉木電気設備までお問い合わせください。
5. 失敗しないための重要ポイント
CO2削減の取り組みで失敗しないためには、電気設備のプロとして以下の点に注意を促します。
「安かろう悪かろう」のLED照明に注意
ネット通販等で極端に安価な海外製LEDが出回っていますが、「フリッカー(ちらつき)」による健康被害や、「ノイズ」によるWi-Fiや医療機器への干渉トラブルが報告されています。オフィス環境には、JIS規格に準拠した信頼できるメーカー品を選定してください。
電気容量(アンペア)の再計算を忘れずに
省エネ設備に入れ替えることで全体の電流値は下がりますが、インバーター機器などは始動時にノイズや高調波を発生させることがあります。適切なブレーカー選定や幹線ケーブルの確認を行わないと、設備更新後にブレーカートリップ(停電)が頻発する恐れがあります。
6. 電気設備会社に依頼するメリット
オフィスのCO2削減は、コンサルタント会社や機器メーカーに相談することもできますが、我々のような「施工を行う電気設備会社」に直接依頼することには大きなメリットがあります。
- 現場の実態に即した提案:机上の計算だけでなく、配線の劣化状況や分電盤の空き状況など、現場を見ているからこそできる「実現可能な提案」を行います。
- 法令遵守と安全性:電気事業法、内線規程、消防法などを熟知しており、安全でコンプライアンス違反のない工事を保証します。
- 補助金申請サポート:複雑な補助金申請に必要な、省エネ計算書や図面の作成をワンストップでサポートします。
- 長期的な保守管理:工事して終わりではなく、その後の法定点検やトラブル対応まで責任を持って対応します。