【法律で義務】ビルの電気設備点検、怠るとどうなる?費用・内容をプロが解説

「ビルの電気設備点検は、法律で義務だと聞くけど具体的に何をすればいいの?」「費用はどれくらいかかる?もし点検を怠ったらどうなるの?」ビルのオーナーや管理者様なら、一度はこのような疑問を持ったことがあるかもしれません。結論から申し上げると、一定規模以上のビル(自家用電気工作物)の電気設備点検は、電気事業法で定められた所有者の「義務」です。この義務を怠ると、法律違反による罰金が科されるだけでなく、最悪の場合、自社のビルだけでなく周辺地域一帯を停電させてしまう「波及事故」を引き起こし、多額の損害賠償や社会的信用の失墜につながる重大なリスクを負うことになります。この記事では、ビルの電気設備点検がなぜ法律で義務なのかという根拠から、点検を怠った場合の罰則、点検の具体的な内容と頻度、気になる費用相場、そして信頼できる業者の選び方まで、専門家が網羅的に解説します。最後まで読めば、法令を遵守し、ビルの安全と資産価値を守るための具体的なアクションがすべてわかります。

ビルの電気設備点検は法律で定められた義務

オフィスビルや商業施設、マンションなどの建物を所有・管理されている方にとって、電気設備の保安点検は避けて通れない重要な責務です。「うちのビルは点検が必要なの?」「なんとなく業者に任せているけど、そもそもなぜ必要なの?」といった疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。結論から申し上げますと、一定規模以上のビルにおける電気設備の点検は、法律で厳格に定められた義務です。これは、ビルで働く人々や居住者の安全を守ることはもちろん、周辺地域への電力供給に影響を及ぼす「波及事故」を防ぐために不可欠な措置なのです。この章では、その法的根拠と、点検義務の対象となるビルの条件について詳しく解説します。

根拠となる法律は電気事業法

ビルの電気設備点検の義務を定めている根拠は、「電気事業法」という法律です。この法律は、電気事業の健全な発達を図り、電気を使用する人々の利益を保護し、公共の安全を確保することを目的としています。具体的には、電気事業法第39条において、事業用電気工作物の所有者(設置者)は、その電気工作物を国が定める技術基準に適合するように維持しなければならないと定められています。さらに、同法第42条では、安全を確保するために自主的な保安ルールである「保安規程」を作成し、国に届け出て、それを遵守する義務も課せられています。

つまり、ビルの所有者や管理者は、法律に基づき、電気設備を常に安全な状態に保ち、そのための点検や管理体制を確立する責任を負っているのです。この保安体制の中心的な役割を担うのが、専門知識を持つ「電気主任技術者」であり、その選任も同法第43条で義務付けられています。定期的な点検は、この法律で定められた義務を果たすための具体的な行動の一つなのです。

点検が必要なビル(自家用電気工作物)の対象

では、具体的にどのようなビルが法律による点検義務の対象となるのでしょうか。その鍵となるのが「自家用電気工作物」に該当するかどうかです。「自家用電気工作物」とは、電力会社から高圧(600ボルトを超える電圧)で電気の供給を受ける電気設備を指します。多くのオフィスビル、商業施設、工場、病院、一定規模以上のマンションなど、屋上や敷地内にキュービクル式高圧受電設備が設置されている建物がこれに該当します。

一方で、一般家庭や小規模な店舗のように、電柱の変圧器を通して低圧(100ボルトや200ボルト)で電気の供給を受ける設備は「一般用電気工作物」と呼ばれ、法律で定められた定期的な点検義務の対象とはなりません(ただし、安全のための自主的な点検は推奨されます)。

ご自身のビルがどちらに該当するかわからない場合は、電力会社との契約内容(受電電圧)を確認するか、設置されている電気設備(キュービクルの有無など)をチェックすることで判断できます。以下の表で、その違いを整理しました。

区分自家用電気工作物一般用電気工作物
受電電圧高圧(600V超)または特別高圧で受電するもの低圧(600V以下)で受電するもの
主な設置場所オフィスビル、商業施設、工場、病院、大規模マンションなど一般住宅、小規模な店舗・事務所など
保安管理の義務【義務あり】
・技術基準の維持
・保安規程の作成・遵守
・電気主任技術者の選任
・定期的な点検(月次・年次)
【義務なし】
(電力会社による安全調査あり)

このように、電力会社から高圧で受電している「自家用電気工作物」を設置しているビルの所有者・管理者は、電気事業法に基づき、専門家による定期的な保安点検を実施する義務があります。この義務を正しく理解することが、安全なビル管理の第一歩となります。

電気設備点検を怠った場合のリスクと罰則

ビルの電気設備点検は、法律で定められた重要な義務です。この義務を「費用がかかるから」「面倒だから」といった理由で怠ると、罰則が科されるだけでなく、事業の継続すら困難になるほどの甚大なリスクを背負うことになります。ここでは、点検を怠った場合に起こりうる具体的なリスクと罰則について詳しく解説します。

最悪の場合に起こりうる波及事故とは

電気設備点検を怠った場合のリスクとして、最も恐ろしいのが「波及事故(はきゅうじこ)」です。波及事故とは、自社のビル内の電気設備の故障が原因で、電力会社の配電線を通じて周辺地域一帯を停電させてしまう事故を指します。

例えば、自社ビルで漏電やショートが発生した際、本来であればビル内の保護装置(遮断器など)が作動して事故を内部で食い止めます。しかし、点検不足で保護装置が劣化・故障していると、異常な電流が電力会社の配電線に流れ込み、電力会社の変電所が地域全体を守るために送電をストップさせてしまうのです。

波及事故が発生すると、以下のような深刻な事態に発展します。

  • 莫大な損害賠償責任の発生
    停電によって営業停止に追い込まれた近隣の店舗や工場、データが消失したオフィス、機能が停止した医療機関などから、多額の損害賠償を請求される可能性があります。
  • 社会的信用の失墜
    「安全管理ができていない企業」というレッテルを貼られ、企業のブランドイメージや社会的信用が大きく損なわれます。テナントの退去や取引停止につながるケースも少なくありません。
  • 多額の復旧・調査費用
    自社設備の修理費用はもちろん、事故原因の調査や報告書作成にも多大なコストと時間がかかります。
  • 行政からの厳しい処分
    経済産業省(管轄の産業保安監督部)から原因究明や再発防止策の報告を求められ、厳しい行政指導や命令を受けることになります。

たった一度の事故が、企業の存続を揺るがすほどの経営的ダメージにつながる、それが波及事故の本当の恐ろしさです。

法律違反による罰金などの罰則規定

電気設備の保安点検は、電気事業法によって厳格に定められています。この法律に違反した場合、事故の有無にかかわらず罰則が科される可能性があります。主な違反行為と罰則は以下の通りです。

違反行為罰則内容根拠条文(電気事業法)
技術基準適合維持義務違反300万円以下の罰金第百十八条
保安規程の届出・遵守義務違反300万円以下の罰金第百十八条
電気主任技術者の選任義務違反300万円以下の罰金第百十八条
経済産業大臣による命令違反1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方第百十七条
立入検査の拒否・妨害30万円以下の罰金第百二十条

特に重要なのが「技術基準適合維持義務」と「保安規程の遵守義務」です。これらは、定期的な点検(月次・年次点検)を適切に実施することで初めて遵守できる義務です。つまり、法定点検を怠る行為そのものが、罰則の対象となりうるのです。

これらの罰則は、あくまで法律上のペナルティに過ぎません。罰金を支払えば済むという問題ではなく、その背景には人命に関わる重大な事故や、社会インフラを麻痺させる波及事故のリスクが潜んでいることを、ビルオーナーや管理者は強く認識しておく必要があります。

ビルの電気設備点検の具体的な内容と頻度

ビルの電気設備点検は、電気事業法およびそれに基づく保安規程によって、その内容と頻度が定められています。点検は大きく分けて、毎月実施する「月次点検」と、年に一度実施する「年次点検」の2種類があります。それぞれの点検は目的が異なり、両方を実施することで電気設備の安全性を維持します。ここでは、それぞれの具体的な点検内容と頻度について詳しく解説します。

毎月行う月次点検

月次点検は、原則として電気主任技術者が毎月1回(または隔月1回など、設備の条件による)実施する点検です。この点検は、電気を止めずに行う「活線状態」での点検が基本となり、日常的な設備の稼働状態に異常がないかを確認することが主な目的です。五感を活用した点検や測定器による簡易的なチェックを通じて、トラブルの兆候を早期に発見します。

主な点検内容は以下の通りです。

  • 目視点検:キュービクル(高圧受電設備)の外観に錆や腐食、損傷がないか、雨水の侵入痕がないかなどを確認します。また、内部の機器にホコリの蓄積やクモの巣などがないかもチェックします。
  • 聴覚・嗅覚点検:変圧器(トランス)や遮断器などから「ブーン」という正常な音以外の異音が発生していないか、焦げ臭いなどの異臭がしないかを確認します。
  • 温度測定:配線の接続部分や機器本体に異常な発熱がないかを、サーモグラフィカメラなどの測定器を用いて非接触で測定し、過熱によるトラブルを未然に防ぎます。
  • 電圧・電流測定:受電電圧や各機器の負荷電流をクランプメーターなどで測定し、平常時の数値と比較して異常がないか、過負荷になっていないかを確認します。

これらの月次点検は、いわば電気設備の「健康診断」のようなものです。定期的に状態を把握することで、年次点検を待たずに異常を察知し、大きな事故や故障を未然に防ぐという重要な役割を担っています。

年に一度の年次点検(停電点検)

年次点検は、その名の通り年に1回実施される、より精密で大規模な点検です。月次点検と大きく異なるのは、ビル全体の電気を一時的に止めて(停電させて)行う点です。停電させることで、普段は電気が流れていて点検できない設備の内部や、活線状態では測定できない項目まで詳細にチェックすることが可能になります。

この年次点検は、設備の安全性や性能が法律で定められた基準を満たしているかを確認するための、非常に重要な法定点検です。テナントや入居者への影響を最小限にするため、休日や夜間に実施されることが一般的です。

年次点検の主なチェック項目

年次点検では、専門的な測定機器を用いて、多岐にわたる項目を厳密にチェックします。以下に、主なチェック項目とその内容をまとめました。

点検項目主な点検内容目的
外観・内部点検各機器の損傷、汚損、腐食、油漏れの有無などを詳細に確認。キュービクル内部の清掃や、ボルト・ネジ類の増し締めも行います。経年劣化や物理的な損傷を早期に発見し、接触不良やショートなどのトラブルを防ぎます。
絶縁抵抗測定電路と大地間の絶縁状態をメガテスターで測定します。漏電の有無を確認する最も重要な試験の一つです。絶縁劣化による感電や火災事故を防止します。
接地抵抗測定接地極(アース)が規定の抵抗値以下であるかを測定します。漏電が発生した際に、電気を安全に大地へ逃がすための接地が正しく機能するかを確認します。
保護継電器試験専用の試験装置を用いて継電器に模擬的な異常電流・電圧を加え、設定通りに正常に作動するかを試験します。万が一の事故(過電流や地絡)の際に、電気を瞬時に遮断する安全装置が確実に働くかを確認する重要な試験です。
遮断器・開閉器の動作試験高圧の電気を入り切りする遮断器や開閉器が、手動および自動(継電器からの指令)でスムーズかつ確実に動作するかを確認します。電気事故の際に、被害の拡大を防ぐための最終的な安全装置の動作を保証します。
変圧器(トランス)精密点検絶縁油の採取・成分分析(PCB含有の有無や劣化度の確認)、内部の点検などを行います。電力供給の心臓部である変圧器の健全性を確認し、突発的な故障による大規模な停電を防ぎます。

このように、年次点検は月次点検では確認できない部分まで踏み込み、電気設備全体の健全性を総合的に診断します。これらの点検を定期的に実施することが、ビルの安全と安定した電力供給を支える上で不可欠です。

気になる電気設備点検の費用相場

ビルの電気設備点検が法律上の義務であることは理解できても、オーナーや管理者様にとって最も気になるのは「一体いくらかかるのか?」という費用面ではないでしょうか。電気設備点検の費用は、ビルの規模や設備の状況によって大きく変動するため、一概に「いくら」とは言えません。しかし、費用の内訳や相場観を把握しておくことで、業者から提示された見積もりが適正かどうかを判断する重要な指標となります。ここでは、電気設備点検にかかる費用の内訳、相場、そして適正な価格で信頼できる業者に依頼するためのポイントを詳しく解説します。

費用の内訳と変動する要因

電気設備点検の見積もりは、主に以下の項目で構成されています。これらの要因がどのように費用に影響するのかを理解しましょう。

【主な費用の内訳】

  • 基本料金:月次点検、年次点検の作業に対する基本的な料金です。
  • 人件費:点検を行う電気主任技術者などの有資格者の技術料です。作業人数や時間によって変動します。
  • 機材費:絶縁抵抗計や継電器試験装置など、専門的な測定機器の使用料です。
  • 報告書作成費:点検結果をまとめて行政機関へ提出する書類の作成費用です。
  • 緊急時対応費:24時間365日の緊急駆けつけサービスなどが契約に含まれる場合の費用です。
  • 交通費・出張費:点検業者の拠点から現場までの距離に応じて発生する経費です。

【費用が変動する主な要因】

  • 受電設備容量(契約電力):費用を決定する最も大きな要因は、キュービクルなどの受電設備の容量(単位:kW)です。容量が大きくなるほど設備の規模が大きく複雑になり、点検項目や作業時間が増えるため、費用は高くなります。
  • 建物の規模と用途:延床面積や階数、テナントの数なども費用に影響します。特に、24時間稼働している施設や、特殊な設備を持つ商業施設、病院などは点検の難易度が上がり、費用が高くなる傾向があります。
  • 設備の設置場所:キュービクルが屋上や地下など、アクセスしにくい場所に設置されている場合、作業の安全性確保や機材の搬入に手間がかかるため、追加費用が発生することがあります。
  • 築年数と設備の老朽化:築年数が古いビルや、設備が老朽化している場合は、より慎重な点検や詳細な測定が必要となるため、点検費用が割高になる可能性があります。

ビルの規模や契約形態別の費用目安

電気設備点検の費用は、保安管理業務を外部の業者に委託する「外部委託契約」が一般的です。ここでは、受電設備容量に応じた外部委託契約の費用目安をまとめました。あくまで一般的な相場であり、実際の金額は前述の変動要因によって変わるため、参考としてご覧ください。

受電設備容量(契約電力)月次点検の費用目安(月額)年次点検の費用目安(年1回)
50kW未満15,000円~30,000円80,000円~150,000円
50kW~100kW20,000円~40,000円100,000円~200,000円
100kW~300kW30,000円~60,000円150,000円~300,000円
300kW~500kW50,000円~80,000円250,000円~450,000円
500kW以上70,000円~(要見積もり)400,000円~(要見積もり)

※上記は消費税別の目安です。
※月次点検の費用には、報告書作成費や通常時の相談料などが含まれていることが一般的です。
※年次点検は、停電を伴う大掛かりな作業となるため、月次点検とは別に費用が発生します。作業員の人数や試験項目の多さによって金額が大きく変動します。

見積もりを取る際の注意点

適切な業者に適正な価格で依頼するためには、見積もりを慎重に比較検討することが不可欠です。以下の点に注意して、後悔のない業者選びを行いましょう。

  • 複数業者から相見積もりを取る:最低でも2~3社から見積もりを取り、価格とサービス内容を比較検討しましょう。1社だけの見積もりでは、その価格が適正かどうかを判断することが困難です。
  • 見積もりの内訳を詳細に確認する:「点検一式」といった曖昧な記載ではなく、「どの点検に」「何人の作業員で」「どのような測定を行い」「どこまでが費用に含まれるのか」が明確に記載されているかを確認します。特に、緊急時の対応範囲や追加料金の有無は重要なチェックポイントです。
  • 安さだけで判断しない:相場よりも極端に安い見積もりには注意が必要です。必要な点検項目が省略されていたり、経験の浅い技術者が担当したり、万が一の事故の際に十分な補償が受けられない可能性があります。価格だけでなく、業者の実績や信頼性、サービスの質を総合的に評価することが大切です。
  • 契約に含まれない業務を確認する:通常の点検作業で発見された不具合の修理や、部品交換、改修工事などは、別途費用となるのが一般的です。そうした追加業務が発生した場合の料金体系についても、事前に確認しておくと安心です。

信頼できる電気設備点検業者の選び方

ビルの電気設備点検は、法律で定められた義務を果たすだけでなく、建物の資産価値やテナントの安全を守るための重要な業務です。しかし、どの業者に依頼すれば良いか迷われる方も多いのではないでしょうか。ここでは、安心して任せられる信頼できる電気設備点検業者を選ぶための3つの重要なポイントを解説します。

必要な資格と実績の確認は必須

業者選びで最も基本となるのが、法令で定められた資格を有しているか、そして豊富な実績があるかという点です。安全に関わる重要な点検だからこそ、技術力と経験を客観的な指標で判断する必要があります。

まず、電気事業法では自家用電気工作物の保安監督を行う「電気主任技術者」の選任が義務付けられています。点検業者は、この有資格者が在籍している、または提携していることが絶対条件です。経済産業省から承認を受けた「保安法人」や、各地の「電気保安協会」などが代表的な選択肢となります。

資格と合わせて必ず確認したいのが、自社のビルと類似した物件での点検実績です。ビルの規模、用途(オフィス、商業施設、マンションなど)、設備の特性によって、点検のポイントや注意点は異なります。豊富な実績を持つ業者は、様々な状況に対応できるノウハウを蓄積しており、潜在的なリスクの発見や的確な改善提案が期待できます。

業者のウェブサイトで施工事例を確認したり、見積もり依頼時に具体的な実績を提示してもらったりして、信頼性を慎重に見極めましょう。

緊急時対応の体制をチェック

電気設備のトラブルは、いつ発生するか予測できません。万が一の漏電や停電といった緊急事態に、迅速かつ的確に対応してくれるかどうかは、業者選定における極めて重要な判断基準です。

平時の定期点検だけでなく、24時間365日、いつでも連絡が取れて対応してくれるサポート体制が整っているかを確認しましょう。深夜や休日にトラブルが発生した場合、連絡がつかなければ被害が拡大し、テナントからの信頼を失うことにもなりかねません。

また、連絡後の対応スピードも重要です。問い合わせの際には、以下の点を確認しておくと安心です。

確認項目具体的な質問例なぜ重要か
対応時間「24時間365日、電話での連絡は可能ですか?」トラブルは時間を選ばないため、常時連絡が取れることが事業継続の鍵となります。
駆けつけ時間「連絡してから、現場に到着するまでの目安時間はどのくらいですか?」到着が早いほど、被害の拡大を最小限に抑え、早期復旧が可能になります。
対応範囲「応急処置だけでなく、その後の恒久対策や原因調査までお願いできますか?」その場しのぎの対応ではなく、再発防止まで見据えた一貫したサポートが受けられるかを確認します。

契約内容に緊急時の対応範囲や出動費用が含まれているかも、事前にしっかりと確認しておくべきポイントです。

相見積もりでサービスと価格を比較検討

適切な業者を選ぶためには、複数の業者から見積もりを取り、サービス内容と価格を多角的に比較検討する「相見積もり」が欠かせません。1社だけの見積もりでは、その価格やサービスが適正であるか判断が難しいため、最低でも2~3社から見積もりを取得することをおすすめします。

見積もりを比較する際は、単純な総額の安さだけで判断しないことが重要です。極端に安い見積もりには、必要な点検項目が省略されていたり、緊急時の対応が別料金になっていたりするケースも考えられます。以下の表を参考に、詳細な内容までしっかりと見比べましょう。

比較項目チェックする内容
点検内容月次点検・年次点検の具体的な項目は明記されているか。法律で定められた基準を満たしているか。
報告書の形式点検結果が分かりやすく記載されているか。写真付きか。改善提案は含まれているか。
料金体系基本料金に含まれるサービス範囲はどこまでか。追加料金が発生するケース(緊急対応、部品交換など)は明示されているか。
担当者の対応質問に対して専門的な知識に基づき、分かりやすく丁寧に回答してくれるか。レスポンスは迅速か。

見積書の内容に不明な点があれば、遠慮なく質問しましょう。その際の担当者の対応も、その業者の信頼性を測るための良い材料となります。価格、サービス、そして信頼性のバランスを総合的に判断し、長期的に付き合える最適なパートナーを選びましょう。

電気設備点検の依頼から完了までの流れ

ビルの電気設備点検を初めて外部の専門業者に依頼するビルオーナー様や管理ご担当者様も多いのではないでしょうか。ここでは、安心して点検を任せられるよう、問い合わせから点検完了後の報告までの一連の流れを、具体的なステップに分けて詳しく解説します。

問い合わせから契約までのステップ

信頼できる業者を選び、適切な内容で契約を結ぶまでには、いくつかの重要なステップがあります。以下の流れを参考に、計画的に進めましょう。

ステップ主な内容オーナー・管理者側で準備すること
ステップ1:業者選定と問い合わせインターネット検索や紹介などを通じて、実績のある保安法人や電気管理技術者を探します。複数の候補に問い合わせ、自社のビルの状況を伝えます。ビルの概要(所在地、規模、用途、築年数)受電方式と受電容量(kW)過去の点検記録や図面の有無
ステップ2:現地調査とヒアリング業者の担当者が実際にビルを訪問し、キュービクルなどの電気工作物の設置状況、劣化具合、配線などを確認します。管理担当者へのヒアリングも行われます。電気設備の設計図書(単線結線図など)過去の年次点検・月次点検の報告書電気室やキュービクルへの立ち入り許可
ステップ3:見積書の受領と検討現地調査の結果に基づき、業者から詳細な見積書が提出されます。複数の業者から見積もり(相見積もり)を取り、サービス内容と価格を比較検討することが重要です。見積もり内容の精査(点検項目、緊急時対応の有無、費用内訳)不明点の質問と確認
ステップ4:契約内容の確認と締結契約内容を十分に確認し、双方が合意の上で保安管理業務委託契約を締結します。契約書は、点検範囲、報告義務、緊急時の連絡体制、賠償責任の範囲など、細部までしっかり確認しましょう。契約後、業者は経済産業省の産業保安監督部へ主任技術者選任に関する届出を行います。契約書の最終確認必要書類への署名・捺印

点検当日の準備とテナントへの告知

特に年に一度の年次点検では、ビル全体を停電させる必要があります。テナントの業務に支障をきたさないよう、周到な準備と丁寧な告知が不可欠です。

管理者側の事前準備

点検をスムーズに進めるため、管理者側でも事前の準備が必要です。業者との連携を密にし、万全の体制を整えましょう。

  • 業者との事前打ち合わせ:点検日時、停電させる範囲と時間、作業手順、緊急連絡先などを最終確認します。
  • 鍵の準備:電気室やキュービクル、点検に必要な各部屋の鍵を準備し、業者への受け渡し方法を決めておきます。
  • 当日の立会人決定:点検当日に立ち会う担当者を決め、緊急時に判断ができるようにしておきます。
  • バックアップの確認:非常用発電機やUPS(無停電電源装置)が正常に作動するか、事前に確認しておくとより安心です。

テナントへの告知の重要性

年次点検に伴う停電は、テナントの業務に直接的な影響を与えます。サーバーやPCのデータ消失、生産設備の停止、セキュリティシステムの誤作動といったトラブルを防ぐため、十分な期間を設けた事前告知が極めて重要です。

告知は、最低でも1ヶ月前には第一報を入れ、1週間前などに再度リマインドするなど、複数回にわたって行うのが理想的です。

項目記載内容の例
目的法律(電気事業法)に基づく電気設備の年次点検実施のため
実施日時202X年X月X日(X曜日) 午前1時00分~午前5時00分まで
停電範囲ビル全館(共用部および各専有部) ※非常用電源で稼働する設備を除く
影響照明、コンセント、空調、エレベーター、給排水ポンプ等が停止します。固定電話やインターネット回線が使用できなくなる場合があります。
テナントへのお願い事項停電開始前に、PCなどの電子機器は必ずシャットダウンし、電源プラグをコンセントから抜いてください。サーバーなど重要な機器のデータは、事前にバックアップを取得してください。停電時間中のエレベーターの利用はできません。
問い合わせ先ビル管理室 電話番号:XX-XXXX-XXXX

これらの内容を記載した書面を、エレベーター内や掲示板への掲示、各テナントへのポスティングやメールなどで確実に周知します。

点検完了後

点検作業が完了すると、業者から作業完了の報告があります。その後、正式な「点検報告書」が提出されます。報告書には、測定結果や各設備の状況、改善が必要な点などが記載されています。指摘事項があった場合は、業者と相談の上で修繕計画を立て、ビルの電気設備の安全性を維持していくことが大切です。この報告書は法律で保管が義務付けられているため、大切にファイリングしておきましょう。

まとめ

本記事では、ビルの電気設備点検について、法律上の義務から具体的な内容、費用、業者選びのポイントまでを解説しました。結論として、高圧で受電しているビル(自家用電気工作物)の電気設備点検は、電気事業法によって定められた所有者・管理者の法的義務です。これは、設備の安全を確保し、社会的なインフラを守るために不可欠な措置です。

点検を怠った場合、設備の故障による火災や感電事故だけでなく、周辺地域を巻き込む「波及事故」を引き起こす可能性があります。その結果、社会的な信用を失うだけでなく、法律に基づき最大300万円の罰金が科されることもあります。こうしたリスクを回避するためにも、定期的な点検は必ず実施しなければなりません。

点検には、毎月の「月次点検」と、年に一度の停電を伴う「年次点検」があります。どちらも専門的な知識と技術が必要であり、それぞれの点検を適切に行うことで、電気設備の健全性が保たれます。費用はビルの規模や契約内容によって異なりますが、安全を確保するための必要不可欠なコストと捉えるべきです。

信頼できる点検業者を選ぶ際は、必要な資格の有無や実績、緊急時の対応体制を確認し、複数の業者から相見積もりを取ることが重要です。適切な電気設備点検は、法令遵守はもちろんのこと、ビルの資産価値を維持し、テナントや利用者の安全・安心を守るための重要な投資です。まずは信頼できる専門業者に相談し、自社の管理体制を見直すことから始めましょう。