【飲食店開業者必読】電気設備の全知識|計画ミスで100万円以上損する前に知っておくべきこと

2026年最新版|斉木電気設備 監修


はじめに:「電気のことは後回し」が開業失敗の最大の原因

飲食店の開業準備といえば、物件探し、メニュー開発、スタッフ採用、内装デザイン——。多くのオーナーが胸を躍らせながらこれらを進める一方、「電気設備」を後回しにしてしまうケースが後を絶ちません。

しかし現実はどうでしょうか。

「厨房機器を入れたらブレーカーが落ちて、追加工事に80万円かかった」 「電気容量が足りず、希望のメニューが提供できなくなった」 「開業日直前に電気工事が間に合わず、オープンを1ヶ月延期した」

これらはすべて、創業51年・総施工数20,000件超の実績を持つ斉木電気設備が実際に相談を受けてきたケースです。飲食店における電気設備の失敗は、金銭的損失だけでなく、開業のタイミングそのものを狂わせます。

本記事では、飲食店の電気設備について**「物件選定〜開業〜運営」**の全フェーズにわたり、他のどの記事よりも実践的かつ網羅的に解説します。これを読めば、電気設備で失敗するリスクを大幅に減らすことができます。


1. 飲食店の電気設備|全体像を正しく把握しよう

飲食店に必要な電気設備は、大きく分けて以下の4つに分類されます。

カテゴリ主な設備
厨房電気設備IHコンロ・業務用冷蔵庫・製氷機・食洗機・スチームコンベクション・フライヤー
空調・換気設備業務用エアコン・換気扇・排気ダクトファン
照明設備LED照明・スポットライト・ネオンサイン・外観看板照明
その他設備POS端末・防犯カメラ・BGM設備・Wi-Fiルーター・非常灯

これらが同時に稼働する飲食店の消費電力は、一般家庭の10〜30倍に及ぶことも珍しくありません。電力会社から引き込む電力には限りがあるため、しっかりとした計画が不可欠です。

電圧の種類を理解する

電気設備を理解する上で、まず「電圧」の種類を押さえておく必要があります。

  • 100V(単相100V):コンセント・小型機器・照明など
  • 200V単相(単相200V):家庭用・小型業務用エアコン、一部の調理機器
  • 200V三相(三相200V=動力):業務用エアコン・大型冷蔵庫・製氷機・業務用食洗機など

飲食店では、この「三相200V(動力)」の引き込みが必要かどうかが、開業コストと電気代を大きく左右するポイントになります。


2. 業態別・必要電気容量の完全ガイド

「どれくらいの電気容量が必要か?」は飲食店の業態と規模によって大きく異なります。下記の表を参考にしてください。

業態別の電気容量目安(2026年版)

業態規模(坪数)単相電力の目安動力契約の要否総電力目安
カフェ・軽飲食10〜15坪40〜60A不要な場合も6〜10kW
居酒屋・和食20〜30坪60〜100Aほぼ必須15〜25kW
ラーメン・中華20〜30坪100A以上必須25〜40kW
焼肉・鉄板焼き30〜50坪100A以上必須40〜60kW
ファミレス・大型店50坪以上150A以上必須(高圧検討)60kW以上

電気容量の計算方法(3ステップ)

ステップ1:使用機器をすべてリストアップする 電気を使う全機器を書き出します。見落としがちなのがPOS端末やBGMシステム、防犯カメラなどのIT機器類です。

ステップ2:消費電力を合算する 各機器の消費電力(W数)を確認し、合計します。主要厨房機器の目安は以下の通りです。

機器名消費電力の目安
業務用エアコン(15畳用)3,000〜5,000W
IHコンロ(2口)4,000〜6,000W
業務用冷蔵庫(縦型)200〜400W
製氷機(中型)500〜800W
業務用食洗機3,000〜6,000W
スチームコンベクション6,000〜9,000W

ステップ3:同時使用率を考慮する 実際には全機器が同時フル稼働することはありません。一般的に飲食店では**同時使用率60〜80%**で計算します。合計消費電力に0.7をかけた数値を目安にすると現実的な容量が算出できます。


3. 物件選定で失敗しないための電気設備チェックリスト

物件を契約する前に、必ず以下を確認してください。これだけで開業後の予期せぬ出費を大幅に防ぐことができます。

✅ チェックリスト(物件内見時)

① 契約アンペア数の確認 テナント内の分電盤(ブレーカーボックス)を開けて、現在の契約アンペア数を確認しましょう。表示が薄くなっていることもあるため、管理会社や電力会社への問い合わせも有効です。

② 単相2線式か単相3線式かを確認 古い物件(昭和〜平成初期)では「単相2線式」が採用されているケースがあります。単相2線式では100Vしか利用できないため、業務用機器の接続に限界があります。電力量計(スマートメーター)やブレーカーへの引き込み線が2本か3本かを確認することで判別できます。

③ 動力(三相200V)の引き込み有無 分電盤に動力ブレーカーがあるかを確認します。なければ新規引き込みが必要となり、工事費が30〜100万円以上かかる場合もあります。

④ 幹線容量とテナント割り当て ビルテナントの場合、ビル全体の幹線容量が限られていることがあります。管理会社に「テナントへの最大供給可能電力」を必ず確認してください。

⑤ 増設工事の許可確認 テナント物件では、大規模な電気工事がオーナーの許可を要する場合があります。契約前に書面で工事の可否を確認しておくことが必須です。

居抜き物件の落とし穴

居抜き物件は初期費用を抑えられる反面、電気設備面では注意が必要です。

  • 前テナントの業態を確認:業態が異なると電気容量が不足する可能性大
  • 残置配線の劣化リスク:築年数が古い場合、配線の絶縁劣化が進んでいることがある
  • 機器の電源仕様の不一致:残置された機器が現在の電源仕様と合わない場合がある

居抜き物件を検討する際は、必ず専門の電気設備業者による**現地調査(無料相談)**を活用しましょう。


4. 厨房の電気設備|安全と効率を両立する設計ポイント

厨房は飲食店の中で最も電気設備が集中するエリアです。安全性と作業効率の両立が求められます。

防水・防湿対策が命取り

厨房は水や油が飛散する過酷な環境です。通常のコンセントや配線器具では漏電・感電・電気火災のリスクが高まります。

  • **防水コンセント(IP44以上)**の使用が必須
  • シンク・洗い場周辺は**漏電遮断器(漏電ブレーカー)**付き回路を独立設置
  • 配線はPF管(合成樹脂製可とう管)に収めて保護

アース工事は法令で義務付け

業務用冷蔵庫・食洗機・電子レンジなどは電気設備技術基準によりアース工事が義務付けられています。アース工事が不十分な場合、万一の漏電時に感電事故につながります。食品衛生法の観点からも徹底が必要です。

専用回路の設計が重要

消費電力の大きい機器(IHコンロ・フライヤー・スチームコンベクション等)は専用回路を引くことが鉄則です。複数の大型機器を同一回路に繋ぐと、ピーク時にブレーカーが落ち、営業中のトラブルに直結します。

経験則:専用回路を1〜2回路追加するだけで、ブレーカー落ちのほとんどは解決できます。


5. 照明設備で「売上」が変わる!プロが教える飲食店照明の選び方

電気設備の中で、多くの記事が軽視しがちなのが照明です。しかし照明は、飲食店の雰囲気・客単価・回転率に直結する重要な経営ツールです。

業態別・照明の色温度と照度の目安

業態推奨色温度照度の目安効果
高級レストラン2700K(電球色)100〜200lx落ち着き・非日常感を演出
カフェ3000K(温白色)200〜300lxリラックス感・長居を促進
居酒屋2700〜3000K150〜250lx活気と温もりのバランス
ファストフード・ラーメン5000K(昼白色)500lx以上清潔感・回転率向上

照明計画の3つのポイント

① 調光機能(ディマー)の導入 昼と夜、ランチとディナーで照明の明るさを変えられる調光機能は、空間の演出力を飛躍的に高めます。LED照明は調光対応製品が豊富で、電力消費も大幅に抑えられます。

② スポットライトで料理を引き立てる テーブル上にスポットライトを配置することで料理の見栄えが格段に向上します。特に演色性の高いRa90以上のLEDを使うと、料理の色が鮮やかに見えSNS映えにもつながります。

③ 外観照明で集客力を高める 看板や外観の照明は通行客への強力なアピールになります。LEDによる節電と長寿命化を図りながら、視認性の高い照明設計を行いましょう。夜間の外観照明の有無で来店率が変わるというデータも存在します。


6. 電気工事のスケジュールと費用の目安

開業スケジュールにおける電気工事のタイミング

多くのオーナーが勘違いしているのが、「内装工事が終わってから電気工事を頼む」という順序です。実際には、電気工事は内装工事と並行または先行して進める必要があります。

フェーズ目安時期内容
物件契約前開業6〜8ヶ月前電気設備の現地調査・容量確認
基本設計開業5〜6ヶ月前機器配置・電気容量計画の策定
幹線・動力工事開業3〜4ヶ月前幹線引き込み・動力申請(電力会社への申請が必要)
内装連携工事開業2〜3ヶ月前配線・コンセント・照明器具設置
完成・試運転開業1〜2週間前全機器の動作確認・負荷試験

⚠️ 特に注意が必要なのが「動力(三相200V)の新規申請」です。電力会社への申請から工事完了まで1〜2ヶ月かかるケースがあります。開業日が決まっている場合は、できるだけ早めに動き出しましょう。

電気工事費用の目安(2026年版)

工事内容費用目安
単相3線式への変更10〜30万円
動力(三相200V)新規引き込み30〜100万円
専用回路の増設(1回路あたり)3〜8万円
分電盤の交換・増設10〜25万円
照明設備一式(20〜30坪)20〜50万円
防水・アース工事(厨房)5〜15万円

※工事費用は建物の構造・既存設備の状況によって大きく異なります。必ず事前に見積もりを取得してください。


7. 知らないと損する!省エネ設備と補助金活用術

飲食店の電気代は年間100〜300万円以上になることも珍しくありません。適切な省エネ対策で大幅にコストを削減できます。

LED照明への全面切り替え

既存の蛍光灯・白熱灯をLEDに切り替えることで、照明の消費電力を最大60%削減できます。LEDは長寿命(40,000〜60,000時間)のため、電球交換のコストと手間も激減します。

高効率業務用空調の導入

近年の業務用エアコンは省エネ性能が大幅に向上しています。10年以上前の機種からの更新では、空調コストを30〜40%削減できるケースもあります。

デマンドコントロールの活用

電力会社との契約電力は、30分間の平均電力の最大値(デマンド値)によって決まります。デマンドコントローラーを導入することで、基本料金の削減が可能です。契約電力を下げることができれば、月数万円単位のコスト削減も現実的です。

活用できる補助金・助成金(2026年時点)

  • 省エネルギー設備導入補助金(経済産業省系):省エネ機器への更新で補助率1/3〜1/2
  • 中小企業省エネ・脱炭素支援補助金:LED化・高効率空調などが対象
  • 各都道府県・市区町村の補助制度:地域によって異なるため要確認

補助金は申請窓口や要件が複雑なため、専門業者との連携が申請成功の近道です。


8. 開業後も安心!電気設備のメンテナンスと点検

電気設備は「設置したら終わり」ではありません。適切なメンテナンスが安全な営業継続設備の長寿命化に直結します。

法定点検の義務

低圧(一般的なテナント)の場合でも、電気設備の定期的な自主点検が推奨されます。高圧受電設備(キュービクル)を設置している施設では年1回以上の法定点検が義務付けられています。

飲食店でよく起きる電気トラブルと対策

トラブル主な原因対策
営業中にブレーカーが落ちる電気容量オーバー専用回路の増設・契約電力の見直し
漏電警告が出る配線の経年劣化・防水不足絶縁測定・配線更新
照明のちらつき・急な消灯安定器の劣化・接触不良LED化・器具の点検交換
エアコンが効かない電圧降下・容量不足配線の見直し・電圧確認
電気代が突然高くなった機器の劣化・漏電電力使用量の診断・点検

**「何かおかしいな」と感じた時点で、専門業者に相談することが最大のリスク回避策です。**特に漏電は感電事故や電気火災につながる危険があるため、放置は絶対に禁物です。


まとめ:電気設備は「最初」が肝心

飲食店の電気設備について、物件選定から省エネ・メンテナンスまで幅広く解説してきました。最後に要点を整理します。

✅ 物件選定前に必ず電気容量を確認する ✅ 業態に合わせた電気容量設計を行う ✅ 動力(三相200V)の要否を早い段階で判断する ✅ 厨房は防水・アース・専用回路が必須 ✅ 照明は業態に合わせた色温度・照度設計を行う ✅ 電気工事は内装工事と並行して早めに動き出す ✅ 省エネ設備の導入で長期的な電気代削減を目指す

電気設備の計画は、飲食店の「安全」「効率」「コスト」「集客力」すべてに関わる重要な経営判断です。しかし、専門知識がないと何から手をつければよいかわからないのも事実。