省エネルギー法の対象事業者とは?最新の判定基準と義務を電気設備のプロが徹底解説

はじめに

「うちの会社は省エネ法の対象になるのだろうか?」 「最近法改正があったと聞いたが、何が変わったのか?」

電気設備会社として50年以上、自治体や民間企業の省エネ対策に携わってきた斉木電気設備では、多くの事業者様からこのようなご相談をいただいています。

省エネルギー法(正式名称:エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、2023年4月に大幅な改正が施行され、対象範囲や報告義務が大きく変わりました。さらに2026年には新たな制度改正も控えており、企業の省エネ対応は待ったなしの状況です。

本記事では、省エネ法の対象となる事業者の条件から具体的な義務内容、そして2023年改正の重要ポイントまで、電気設備工事51年の実績を持つ当社の視点から、実務に役立つ情報を分かりやすく解説します。


目次


1. 省エネ法とは?その目的と歴史

省エネ法が生まれた背景

省エネ法は、1973年と1979年に発生した2度のオイルショックを契機として、1979年に制定されました。当時、石油の供給停止への不安から日本中が大混乱に陥ったことを教訓に、エネルギー資源の有効利用エネルギー消費の抑制を図ることを目的として誕生したのです。

エネルギー資源のほとんどを輸入に依存する日本にとって、エネルギーの安定供給確保は国家の最重要課題のひとつ。省エネ法は、限りあるエネルギーの使用効率を高めることで、資源の節約と供給の安定化を図るとともに、間接的に温室効果ガスの排出削減にも貢献する法律なのです。

時代とともに進化する省エネ法

制定以来、省エネ法は時代のニーズに合わせて幾度も改正されてきました。

主な改正の歴史

  • 1993年:基本方針の作成および定期報告制度の導入
  • 1998年:京都議定書採択を受け、「トップランナー制度」を導入
  • 2013年:建材への「トップランナー制度」適用拡大
  • 2023年:非化石エネルギーへの転換を法の目的に追加、法律名称も変更

特に2023年の改正は、日本が2050年カーボンニュートラルを宣言したことを受けた大きな転換点となりました。


2. 【最重要】あなたの会社は対象?省エネ法の適用判定

省エネ法の対応を考える上で、まず押さえるべきは「自社が対象事業者に該当するか」という点です。対応の流れは以下の2段階で判定します。

ステップ1:適用対象者であるか確認

まず、自社の事業が以下の5つのカテゴリーのいずれかに該当するか確認します。

省エネ法の適用対象者(5つのカテゴリー)

  • 工場・事業場の設置者
    • 製造業の工場、オフィスビル、商業施設、病院、学校など
    • ほとんどの事業者がこのカテゴリーに該当します
  • 貨物・旅客輸送事業者
    • トラック運送会社、バス・タクシー会社、鉄道会社、航空会社など
  • 荷主
    • 自社で輸送を行わないが、他社に委託して貨物を輸送している事業者
  • 機械器具等の製造・輸入事業者
    • 自動車、家電製品、建材などを製造または輸入する事業者
  • 小売事業者
    • 家電小売店、エネルギー小売事業者など

ステップ2:報告義務等対象者であるか確認

適用対象者に該当する場合、次にエネルギー使用量が一定基準を超えるかを確認します。この基準を超えると「報告義務等対象者」となり、具体的な義務が発生します。

報告義務等対象者の基準(工場・事業場の設置者の場合)

【事業者単位での判定】

  • 事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算で1,500kl以上
    • 本社、すべての工場・店舗・事業所のエネルギー使用量を合算して判定
    • 対象となる事業者は「特定事業者」に指定される

【事業所単位での判定】

  • 個別の工場・事業場の年間エネルギー使用量が原油換算で1,500kl以上
    • 該当する事業所は「エネルギー管理指定工場等」に指定される
    • 事業者単位の報告に加え、事業所ごとの個別報告も必要

エネルギー使用量の目安

「原油換算1,500kl」と言われてもピンとこない方も多いでしょう。電気設備会社の視点から、具体的な目安をお示しします。

電気使用量での換算例

  • 年間電気使用量:約164万kWh(1,500kl相当)
  • 月平均電気使用量:約13.7万kWh
  • これは中規模工場や大型商業施設の使用量に相当します

複数拠点を持つ企業の場合

  • 本社の電気使用量:月5万kWh(年間60万kWh)
  • 工場Aの使用量:月7万kWh(年間84万kWh)
  • 営業所Bの使用量:月2万kWh(年間24万kWh)
  • 合計:年間168万kWh → 約1,537kl特定事業者に該当

このように、個別の拠点では基準以下でも、企業全体で合算すると対象になるケースが多いのです。


3. 対象事業者に課される5つの義務

特定事業者に指定されると、以下の義務が発生します。

義務①:エネルギー管理統括者等の選任

選任が必要な役職

  • エネルギー管理統括者:事業者全体のエネルギー管理の責任者(1名)
  • エネルギー管理企画推進者:統括者を補佐し、実務を推進(1名)

エネルギー管理指定工場等では追加で選任が必要

  • エネルギー管理者:工場・事業場ごとに選任(国家資格保有者)
    • 第一種エネルギー管理指定工場(3,000kl以上):エネルギー管理士などの有資格者
    • 第二種エネルギー管理指定工場(1,500kl以上3,000kl未満):エネルギー管理員

選任・解任時には、経済産業局への届出が必要です。

義務②:エネルギー使用状況届出書の提出(初回のみ)

特定事業者の指定を受けるため、前年度のエネルギー使用量が1,500kl以上となった場合、翌年度の5月末日までに地方経済産業局へ届出が必要です。

義務③:定期報告書の提出(毎年度)

提出期限:毎年7月末日まで

報告内容

  • 前年度のエネルギー使用量の詳細
  • エネルギー消費原単位の推移
  • 省エネ取組の実施状況
  • 2023年改正後は非化石エネルギーの使用状況も追加

この報告内容に基づき、事業者はS・A・B・Cの4段階で評価されます。

義務④:中長期計画書の提出(原則毎年度)

提出期限:毎年7月末日まで(定期報告書と同時提出)

計画内容

  • 今後のエネルギー削減目標
  • 具体的な省エネ施策
  • 設備更新計画
  • 2023年改正後は非化石エネルギーへの転換計画も追加

義務⑤:省エネ取組の実践

目標:中長期的に見て年平均1%以上のエネルギー消費原単位の低減

取り組むべき事項

  • 判断基準に定められた措置の実践
  • 管理標準の設定
  • 設備の適切な保守・点検
  • エネルギー使用設備の効率的運用

4. 2023年改正で何が変わった?3つの重要ポイント

2023年4月に施行された改正省エネ法は、カーボンニュートラル実現に向けた大きな転換点となりました。

ポイント①:対象エネルギーの拡大

改正前

  • 化石エネルギー(石油、ガス、石炭など)のみが対象

改正後

  • 非化石エネルギーも報告対象に追加
    • 太陽光発電
    • 風力発電
    • 水力発電
    • 地熱
    • バイオマス
    • 水素・アンモニア

これにより、すべてのエネルギーの使用の合理化が求められるようになりました。

ポイント②:非化石エネルギーへの転換義務

特定事業者は、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換について、以下の対応が必要になりました。

新たな義務

  • 非化石エネルギーへの転換目標を含む中長期計画の作成
  • 非化石エネルギーの使用状況の定期報告

実務上の対応例

  • 太陽光発電設備の導入計画
  • 電気自動車への切り替え
  • 省エネ設備への更新(LED照明、高効率空調など)

ポイント③:電気需要の最適化(ディマンド・レスポンス)

上げDR(デマンド・レスポンス)

  • 再生可能エネルギーの余剰電力が発生する時間帯(晴天時の昼間など)に、電力使用量を増やす取組

下げDR

  • 電力需給が逼迫する時間帯に、電力使用量を抑制する取組

報告義務

  • DR実施日数等の報告が必要

5. エネルギー使用量の計算方法【実践編】

自社が対象事業者に該当するかを判定するには、正確なエネルギー使用量の計算が必要です。

ステップ1:各エネルギー使用量の集計

対象となるエネルギー

  • 電気
  • 都市ガス・LPガス
  • 灯油
  • 重油
  • ガソリン(社用車)
  • 軽油

本社、工場、店舗、営業所など、すべての事業所の使用量を集計します。

ステップ2:熱量(GJ)への換算

各エネルギーに換算係数を乗じて、熱量単位「GJ(ギガジュール)」に統一します。

主な換算係数

  • 電気:9.76 GJ/千kWh
  • 都市ガス:44.8 GJ/千Nm³(標準的な値、ガス会社により異なる)
  • LPガス:50.8 GJ/トン
  • 灯油:36.7 GJ/kl
  • A重油:39.1 GJ/kl

ステップ3:原油換算値(kl)の算出

ステップ2で求めた熱量に換算係数「0.0258 kl/GJ」を乗じて、原油換算値を求めます。

計算式

原油換算値(kl)= 熱量(GJ)× 0.0258

実践例:中規模製造業の場合

A社の年間エネルギー使用状況

  • 電気:150万kWh → 150 × 9.76 = 1,464 GJ
  • 都市ガス:2万Nm³ → 20 × 44.8 = 896 GJ
  • 灯油:10kl → 10 × 36.7 = 367 GJ
  • 合計:2,727 GJ

原油換算

  • 2,727 GJ × 0.0258 = 約70.4 kl

この場合、1,500kl未満のため、特定事業者には該当しません。

便利ツールの活用

資源エネルギー庁が提供する「原油換算ツール」を使えば、エクセルで簡単に計算できます。

原油換算ツール(資源エネルギー庁)


6. 罰則と優遇措置:知らないと損する制度

省エネ法には、違反した場合の罰則と、適切に対応した場合の優遇措置があります。

違反した場合の罰則

届出・報告義務違反

  • エネルギー使用状況届出書を提出しない
  • 定期報告書・中長期計画書を提出しない
  • 虚偽の報告をした

罰則50万円以下の罰金

省エネ取組が不十分な場合の流れ

  • 指導・助言:経済産業局からの指導
  • 報告徴収・立入検査:改善状況の確認
  • 合理化計画の作成指示:具体的な改善計画の提出を指示
  • 勧告:計画に従わない場合
  • 公表:勧告に従わない場合、企業名が公表される
  • 命令:公表後も改善しない場合
  • 罰則:命令違反の場合、100万円以下の罰金

適切に対応した場合の優遇措置

事業者クラス分け評価制度

定期報告書の内容に基づき、事業者をS・A・B・Cの4段階で評価します。

Sクラス(優良事業者)の優遇

  • 省エネ設備導入時の補助金採択で優遇
  • 行政手続きの簡素化
  • 企業イメージの向上

評価のポイント

  • エネルギー消費原単位の改善率
  • 非化石エネルギーへの転換状況
  • 省エネ取組の先進性

省エネ補助金の活用

Sクラス評価を受けると、以下のような補助金が受けやすくなります。

  • 省エネルギー投資促進支援事業:設備更新費用の1/3~1/2を補助
  • ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化支援事業
  • 高効率設備導入支援

7. 2026年以降の動向と今後の対策

省エネ法は今後も進化し続けます。2026年以降の動向を把握し、早めの対策が重要です。

2026年4月に予定される主な変更

変圧器の省エネ基準強化

  • 変圧器に対する第三次判断基準の適用
  • より高効率な変圧器への更新が実質的に義務化

排出量取引制度との連携

  • GX(グリーントランスフォーメーション)推進法に基づく排出量取引制度が本格化
  • 省エネ法の報告データが排出量取引に活用される可能性

今後求められる企業の対応

短期的対応(1~2年)

  • 現状把握
    • 全事業所のエネルギー使用量の正確な把握
    • 省エネポテンシャルの洗い出し
  • 運用改善
    • 照明・空調の適切な運用管理
    • 設備の定期メンテナンス
    • 従業員への省エネ意識の啓発
  • 老朽設備の更新計画策定
    • LED照明への切替
    • 高効率空調設備への更新
    • 受変電設備の診断・更新計画

中長期的対応(3~5年)

  • 再生可能エネルギーの導入
    • 太陽光発電設備の設置
    • 自家消費型発電システムの構築
  • 建物のZEB化
    • 断熱性能の向上
    • BEMS(ビルエネルギー管理システム)の導入
  • 電力契約の見直し
    • 再エネ由来電力への切替
    • DR対応可能な契約プランの検討

8. 電気設備会社が提案する省エネ対策

創業51年、総施工数20,000件超の実績を持つ斉木電気設備が、実際の現場で効果を上げている省エネ対策をご紹介します。

即効性のある省エネ施策

LED照明への更新

効果:電気代30~50%削減(照明費用) 投資回収期間:3~5年 ポイント

  • 水銀灯や蛍光灯からの更新で大きな効果
  • 省エネ補助金の活用で初期費用を抑制
  • 照度を維持しながら消費電力を削減

空調設備の更新・運用改善

効果:電気代20~40%削減(空調費用) 投資回収期間:5~8年 ポイント

  • 15年以上経過した設備は更新を推奨
  • インバーター制御への更新
  • 適切な温度設定と運転時間管理

受変電設備の診断・更新

効果:電力損失5~15%削減 投資回収期間:10~15年 ポイント

  • 変圧器の高効率化
  • デマンド監視システムの導入
  • 力率改善によるデマンド低減

中長期的な省エネ投資

太陽光発電設備の導入

効果

  • 電気代削減
  • 非化石エネルギー比率向上(省エネ法対応)
  • BCP(事業継続計画)対策

当社の施工実績

  • 工場屋根への自家消費型太陽光発電
  • 駐車場ソーラーカーポート
  • 蓄電池併設システム

BEMS(ビルエネルギー管理システム)導入

効果

  • エネルギー使用状況の「見える化」
  • 設備の最適運転制御
  • 省エネ法報告業務の効率化

まとめ

省エネ法は、単なる法令遵守の問題ではなく、企業のコスト削減社会的責任を両立させる重要な制度です。

本記事の重要ポイント

  • 対象判定:事業者全体で原油換算1,500kl以上なら特定事業者
  • 2023年改正:非化石エネルギーも報告対象に追加
  • 義務対応:定期報告書・中長期計画書の提出は毎年7月末まで
  • 罰則注意:未提出は50万円以下の罰金、命令違反は100万円以下の罰金
  • 優遇措置:Sクラス評価で補助金が受けやすくなる
  • 2026年:変圧器の省エネ基準強化など、さらなる制度改正

斉木電気設備からのメッセージ

省エネ法への対応は、確かに企業にとって負担となる面もあります。しかし、適切に対応することで、

  • 電気代の大幅削減
  • 設備の長寿命化
  • 企業イメージの向上
  • 補助金の活用
  • 従業員の環境意識向上

など、多くのメリットを得ることができます。

当社では、省エネ診断から設備更新、省エネ法報告書作成支援まで、トータルでサポートしております。

「省エネ法の対応、どこから手をつければいいか分からない」 「エネルギー使用量の計算方法が分からない」 「効果的な省エネ対策を知りたい」

このようなお悩みをお持ちの事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。創業51年の実績と経験を活かし、貴社に最適な省エネソリューションをご提案いたします。