飲食店開業に必須!電気容量の目安と確実な計算方法を電気設備のプロが徹底解説

飲食店の開業準備を進める中で、多くのオーナー様が見落としがちなのが「電気容量」の問題です。理想の物件を見つけ、こだわりの厨房機器を揃えたものの、いざ営業を始めようとしたら「ブレーカーが落ちて営業できない」「追加工事に予想外の費用がかかる」といったトラブルに直面するケースは少なくありません。

有限会社斉木電気設備では、創業51年、総施工数20,000件超の実績を通じて、数多くの飲食店の電気設備を手がけてまいりました。本記事では、そのノウハウをもとに、飲食店に必要な電気容量の基礎知識から実践的な計算方法、そして容量不足時の対処法まで、専門家の視点から分かりやすく解説いたします。

なぜ飲食店では電気容量が重要なのか

飲食店は一般のオフィスや住宅と比べて、圧倒的に多くの電力を消費します。厨房には業務用冷蔵庫、製氷機、食洗機、電気調理機器など、高出力の電気機器が集中しています。さらに客席には照明やエアコンも必要です。

これらの機器を同時に使用すると、想像以上の電力が必要になります。電気容量が不足していると、以下のような深刻な問題が発生します。

営業中のブレーカー遮断リスク

ピークタイム時、複数の調理機器を同時使用した際にブレーカーが落ちると、調理中の料理がダメになるだけでなく、レジシステムや照明も停止し、営業そのものがストップしてしまいます。お客様の信頼を失い、評判にも大きな影響を与えかねません。

希望の厨房機器が使えない

中古厨房機器を格安で購入できても、電源が対応していなければ使用できません。特に業務用オーブンや大型食洗機などは200V電源が必要なケースが多く、100Vしか供給されていない物件では追加工事が必須となります。

予想外の追加工事費用

物件契約後に電気容量の不足が判明すると、電気工事に数十万円~数百万円の追加費用が発生することもあります。開業資金の計画が大きく狂ってしまうリスクがあるのです。

電気容量の基礎知識:V・A・Wの関係性

電気設備を理解するには、まず基本的な電気の単位を押さえておく必要があります。

電圧(V:ボルト)

電気を押し出す力を表します。日本の一般的な電圧は100Vまたは200Vです。飲食店では、100Vの低圧電源だけでなく、より大きな電力を必要とする機器のために200V電源も必要になるケースが多くあります。

電流(A:アンペア)

電気の流れる量を表します。電力会社と契約する際の「契約アンペア数」がこれにあたります。30A、40A、50Aといった数値で表され、この数値が大きいほど、一度に多くの電気を使用できます。

電力(W:ワット)

実際に消費されるエネルギー量を表します。各電気機器には「消費電力」として表示されており、この数値が機器が実際に使う電気の量です。

三者の関係式

これら三つの単位には、以下の関係があります。

電力(W)= 電圧(V)× 電流(A)

この公式を変形すると、

電流(A)= 電力(W)÷ 電圧(V)

となります。

例えば、1500Wの電子レンジを100V電源で使用する場合、

1500W ÷ 100V = 15A

の電流が流れることになります。

同じ1500Wの機器でも、200V電源で使用すれば、

1500W ÷ 200V = 7.5A

と、必要な電流は半分になります。これが200V電源が効率的と言われる理由です。

飲食店に必要な電気容量の目安

では、実際に飲食店ではどの程度の電気容量が必要なのでしょうか。業態・規模別の目安をご紹介します。

業態別の電気容量目安

カフェ・軽飲食店(10~15坪)

  • 必要容量:40A~60A(単相)
  • **主な電気機器:**エスプレッソマシン、業務用冷蔵庫、製氷機、電子レンジ、エアコン、照明
  • **特徴:**調理に火力をあまり使わず、電気調理機器も比較的小型のため、電気容量は控えめで済むケースが多い

一般的な飲食店(20~30坪:和食・イタリアン・フレンチなど)

  • 必要容量:60A~100A(単相)+ 200V回路
  • **主な電気機器:**業務用冷蔵庫(複数台)、製氷機、食洗機、電気調理機器、スチームコンベクションオーブン、業務用エアコン(200V)
  • **特徴:**客席数が増え、厨房機器も本格的になるため、電気容量も大幅に増加。200V対応が必須

重飲食店(ラーメン店・中華料理・焼肉店など)

  • 必要容量:100A以上(単相)+ 三相200V(動力)
  • **主な電気機器:**大型冷蔵庫・冷凍庫(複数台)、製氷機、業務用食洗機、大型換気扇、強力エアコン、ダクト換気システム
  • **特徴:**高火力調理により排熱が多く、強力な換気設備が必要。動力契約(三相200V)が必須となるケースが多い

店舗面積あたりの簡易計算法

電気設備の専門家として、私たちは以下の簡易計算式も使用しています。

必要電気容量(kW)= 店舗面積(坪)× 0.5~1.0kW

この係数は業態によって調整します。

  • 軽飲食:0.5~0.6kW/坪
  • 一般飲食:0.7~0.8kW/坪
  • 重飲食:0.9~1.2kW/坪

例えば、20坪の和食店であれば、

20坪 × 0.7kW = 14kW = 140A(100V換算)

が目安となります。

ただし、これはあくまで概算です。実際には使用する機器の仕様を詳細に確認する必要があります。

実践的な電気容量の計算方法

ここからは、より正確に必要な電気容量を計算する方法をご説明します。

ステップ1:使用機器のリストアップ

まず、店舗で使用するすべての電気機器をリストアップします。

【厨房機器】

  • 業務用冷蔵庫
  • 業務用冷凍庫
  • 製氷機
  • 電気オーブン
  • スチームコンベクションオーブン
  • 電子レンジ
  • IH調理器
  • 食器洗浄機
  • 電気フライヤー

【客席・共用部】

  • 業務用エアコン
  • 照明器具
  • レジスター・POSシステム
  • 給湯器
  • トイレ設備

ステップ2:各機器の消費電力を確認

各機器のカタログや仕様書、または機器本体の銘板シールに記載されている「消費電力(W)」または「定格電流(A)」を確認します。

主要機器の消費電力参考値

機器名消費電力目安
業務用冷蔵庫(縦型4ドア)400~600W
業務用冷凍庫500~800W
製氷機(25kg型)200~300W
電子レンジ(業務用)1500~2000W
スチームコンベクションオーブン3000~6000W
食器洗浄機4000~6000W
業務用エアコン(10畳用・200V)1500~2500W
IH調理器(卓上型)1400~3000W

ステップ3:同時使用率を考慮する

すべての機器を同時に最大出力で使うことは現実的にはありません。そこで「同時使用率」を考慮します。

一般的な飲食店の同時使用率は**60~80%**程度です。

実質必要電力 = 総消費電力 × 同時使用率

具体的計算例:20坪の和食店

使用機器と消費電力

  • 業務用冷蔵庫2台:500W × 2 = 1000W
  • 業務用冷凍庫1台:600W
  • 製氷機:250W
  • 電子レンジ:1500W
  • スチームオーブン:5000W
  • 食洗機:5000W
  • 業務用エアコン2台(200V):2000W × 2 = 4000W
  • 照明(LED):500W
  • その他(レジ等):200W

総消費電力合計:18,050W

同時使用率70%を適用

18,050W × 0.7 = 12,635W

必要アンペア数の算出(100V換算)

12,635W ÷ 100V = 約126A

余裕を持たせた契約容量

実際には、起動時の突入電流や将来の機器追加を考慮し、20~30%の余裕を持たせます。

126A × 1.2 = 約150A

この店舗では、単相100Vで150A以上の契約、さらに200V回路の設置が必要と判断できます。

単相と三相:200V電源の種類と選び方

飲食店で200V電源が必要になった際、「単相200V」と「三相200V(動力)」の違いを理解することが重要です。

単相200V

家庭用の延長のような電源で、単相3線式配線により100Vと200Vを同時に供給できます。

使用機器例:

  • 業務用エアコン(小~中型)
  • 電気オーブン
  • 一部の電気調理機器

契約形態: 従量電灯B・C(一般家庭と同じ契約)

メリット:

  • 導入コストが比較的安い
  • 工事が簡易

デメリット:

  • 大型機器には対応できない
  • 効率が三相より劣る

三相200V(動力)

工場や大型施設で使われる、より強力で効率的な電源です。

使用機器例:

  • 大型業務用エアコン
  • 大型冷蔵・冷凍庫
  • 連続式食器洗浄機
  • 強力な換気ファン
  • 大型調理機器

契約形態: 低圧電力(動力契約)

メリット:

  • 大出力機器を効率よく動かせる
  • 電気代の単価が安い(基本料金は高い)

デメリット:

  • 初期工事費用が高額(20万円~)
  • 基本料金が高め

どちらを選ぶべきか

一般的な目安として、

  • 店舗面積20坪未満、軽~中程度の飲食店 → 単相200Vで対応可能
  • 店舗面積20坪以上、重飲食店、大型機器使用 → 三相200V(動力)が推奨

ただし、使用機器の仕様により判断が変わるため、必ず専門家に相談することをお勧めします。

物件選定時の電気容量チェックポイント

物件を契約する前に、必ず以下のポイントを確認しましょう。

1. 契約アンペア数の確認

テナント内のブレーカーや分電盤を確認し、現在の契約アンペア数を把握します。ブレーカーには「30A」「50A」などの表示があります。

もしブレーカーが見当たらない場合や確認できない場合は、物件オーナーまたは管理会社に必ず確認してください。

2. 単相2線式か単相3線式か

分電盤のカバーを開けて、配線が2本か3本かを確認します。

  • 2本(単相2線式) → 100Vのみ、30Aまで。飲食店には不向き
  • 3本(単相3線式) → 100Vと200Vが使用可能。飲食店に適している

単相2線式の場合、単相3線式への変更工事が必要になり、追加費用が発生します。

3. 動力(三相200V)の引き込み状況

重飲食店や大型機器を使用する場合、動力が必要になります。

  • 建物に動力が引き込まれているか
  • 他のテナントで動力を使用しているか
  • 動力メーターは設置されているか

動力が未設置の場合、電柱からの引き込み工事が必要になり、工事費用は20万円~100万円と高額になる可能性があります。

4. 幹線容量とテナント割り当て

ビル全体の幹線(メイン配線)容量に余裕があっても、各テナントへの割り当てに制限がある場合があります。

特に古いビルでは、建物全体の電気容量が不足しており、増設したくてもできないケースもあります。必ず確認が必要です。

5. 増設工事の可否と承諾

電気容量の増設が必要な場合、オーナーの承諾が必要です。

物件によっては、

  • 建物の構造上、増設不可
  • オーナーが工事を許可しない
  • 増設費用を誰が負担するかで揉める

といったトラブルが発生することもあります。契約前に必ず確認し、可能であれば契約書に明記してもらいましょう。

居抜き物件の注意点

居抜き物件は初期投資を抑えられる魅力がありますが、電気容量に関しては特に注意が必要です。

前テナントの業態を確認

前のテナントがカフェだった物件に、ラーメン店を開業する場合、電気容量が全く足りない可能性が高いです。

前テナントの業態と自店の業態を比較し、より電力消費の多い業態へ変更する場合は、必ず電気容量の確認と増設工事を検討してください。

残置機器の電源仕様

居抜き物件に残されている厨房機器は、そのまま使えると思い込みがちですが、以下のリスクがあります。

  • 機器が古く、消費電力が大きい(省エネ性能が低い)
  • 電源仕様が特殊(単相200Vが必要なのに100Vしかない等)
  • 動力機器が残っているが、動力契約をしていない

必ず機器の仕様を確認し、そのまま使用可能かを専門家に確認してもらいましょう。

配線の劣化

長年使用された物件では、配線自体が劣化していることがあります。見た目は問題なくても、絶縁不良や接触不良を起こしている可能性があり、火災リスクにもつながります。

電気設備の専門家による点検を強くお勧めします。

電気容量不足時の対処法と工事費用

物件契約後に電気容量の不足が判明した場合、以下のような対処法があります。

対処法1:契約アンペア数の変更

電力会社に申請し、契約アンペア数を増やす方法です。

費用目安: 無料~5万円程度(建物の配線状況による)

メリット: 比較的安価で簡単

デメリット: 建物の幹線容量に余裕がないと増設できない

対処法2:専用回路・コンセントの増設

消費電力の大きい機器(エアコン、オーブン、食洗機など)のために、分電盤から専用の配線を引く方法です。

費用目安:

  • 100V専用回路:1.5万円~3万円/回路
  • 200V専用回路:2万円~5万円/回路
  • エアコン専用コンセント:2万円~4万円

メリット: 特定機器の安定稼働が可能

デメリット: 根本的な容量不足の解決にはならない

対処法3:単相3線式への変更

単相2線式(100Vのみ)の建物を単相3線式(100V+200V)に変更する工事です。

費用目安: 10万円~30万円

メリット: 200V機器が使用可能になる

デメリット: 建物によっては工事不可能な場合もある

対処法4:動力(三相200V)の新規引き込み

三相200Vを新たに引き込む工事です。重飲食店や大型機器使用の場合に必要になります。

費用目安: 20万円~100万円(引き込み距離や工事内容による)

内訳:

  • 電柱からの引き込み工事:10万円~50万円
  • 動力盤設置工事:5万円~20万円
  • 店内配線工事:5万円~30万円

メリット: 大型機器が使用可能、ランニングコストが下がる

デメリット: 初期費用が高額

対処法5:省エネ機器への変更

どうしても電気容量の増設が難しい場合、使用機器を見直す方法もあります。

  • 古い機器を最新の省エネ機器に変更
  • 電気式からガス式への変更
  • LED照明への変更

費用目安: 機器による(数万円~数十万円)

メリット: 電気工事不要、ランニングコストも削減

デメリット: 機器購入費用が必要

電気容量に関するよくある質問

Q1. 物件を契約してしまった後に電気容量不足が判明した場合はどうすればよいですか?

まずは電気設備の専門業者に現地調査を依頼してください。建物の状況により、増設可能か、どの程度の費用がかかるかが判断できます。

増設が不可能な場合は、使用機器の変更や、最悪の場合は物件の変更も検討する必要があります。だからこそ、契約前の確認が極めて重要なのです。

Q2. 中古厨房機器を購入する際の注意点は?

必ず以下を確認してください。

  • 電源仕様(100V/200V、単相/三相)
  • 消費電力(W)または定格電流(A)
  • プラグの形状

購入前に、機器の仕様書や側面の銘板を撮影し、電気設備業者に確認してもらうことをお勧めします。

Q3. 電気代を安くする方法はありますか?

電気容量とは直接関係ありませんが、以下の方法でランニングコストを削減できます。

  • 電力会社の変更(新電力への切り替え)
  • 動力契約の活用(大型機器使用の場合)
  • LED照明への変更
  • 省エネ機器への更新
  • デマンド監視装置の設置

詳しくは電気設備の専門家にご相談ください。

Q4. 工事はどこに依頼すればよいですか?

電気工事は、電気工事士の国家資格を持った専門業者でなければ行えません。

信頼できる業者の選び方:

  • 電気工事業の登録がある
  • 実績が豊富(特に飲食店の実績)
  • 見積もりが明確
  • アフターフォローがしっかりしている

有限会社斉木電気設備では、創業51年、総施工数20,000件超、自治体関連6,000件超の実績があり、飲食店の電気設備工事も多数手がけております。

まとめ:成功する飲食店開業のために

飲食店の開業において、電気容量は見えない基盤でありながら、営業の成否を左右する極めて重要な要素です。

開業成功のための電気容量チェックリスト

□ 使用予定の全機器をリストアップした
□ 各機器の消費電力を確認した
□ 必要な電気容量を計算した
□ 物件の現在の契約アンペア数を確認した
□ 単相3線式か確認した
□ 200V電源の有無を確認した
□ 動力が必要な場合、引き込み状況を確認した
□ 増設工事の可否をオーナーに確認した
□ 増設が必要な場合の費用を把握した
□ 電気設備の専門家に相談した

これらすべてを物件契約に確認することで、後から発覚する高額な追加工事を避けることができます。

最も重要なのは、電気設備の専門家に早い段階で相談することです。

「この物件で、この業態の店舗は開業できるか」 「どのような電気工事が必要で、費用はどれくらいか」 「より効率的で経済的な方法はないか」

こうした疑問に、現場を知り尽くした専門家だからこそ答えられる視点があります。

有限会社斉木電気設備では、創業51年の豊富な経験をもとに、飲食店オーナー様の夢の実現を電気設備の面から全力でサポートいたします。物件選定の段階からお気軽にご相談ください。