工場の停電対策完全ガイド|電気設備のプロが教える損失を防ぐ実践的対策

はじめに

近年、台風や地震などの自然災害が頻発する中、工場における停電対策の重要性がかつてないほど高まっています。2019年の台風15号では千葉県で約64万戸が停電し、復旧に2週間を要した地域もありました。また、2018年の北海道胆振東部地震では、日本初の大規模ブラックアウトが発生し、商工関係の被害額は約13億円、売上影響額は1,318億円にも達したと推定されています。

私たち斉木電気設備では、1972年の設立以来、多くの工場や事業所の電気設備工事を手がけてまいりました。創業51年、総施工数20,000件超の実績の中で、停電対策の重要性を肌で感じ、数多くのお客様にBCP対策を含めた電源システムのご提案をしてきました。

本記事では、電気設備工事のプロフェッショナルとして、工場における停電対策の実践的なノウハウを包括的にご紹介します。この記事を読めば、停電リスクから工場を守り、事業の継続性を高めるための具体的な方法が分かります。

目次

  1. なぜ今、工場の停電対策が急務なのか
  2. 工場の停電対策の基本|BCP(事業継続計画)の策定
  3. 電源確保の方法|非常用電源システムの選択
  4. データ保護とシステムのバックアップ
  5. 電源に頼らない停電対策
  6. 緊急時の体制構築と従業員教育
  7. 補助金・助成金の活用
  8. 電気設備の定期点検とメンテナンス
  9. まとめ

1. なぜ今、工場の停電対策が急務なのか

1-1. DX化が進む工場では停電の影響がより深刻に

現代の工場では、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展しています。IoT機器によるリアルタイムデータ収集、AI制御による生産ライン最適化、クラウドベースの生産管理システムなど、あらゆる工程が電力に依存する状況になっています。

このDX化により、生産効率や品質管理の水準が飛躍的に向上した一方で、停電発生時のリスクも増大しています。従来のアナログ設備中心の工場であれば、一部の設備が停止するだけで済んだかもしれません。しかし、デジタル化された工場では、停電が発生すると工場全体の生産活動が一瞬で停止してしまう可能性があるのです。

DX化された工場の停電リスク

  • IoT機器の停止によるリアルタイムデータの損失
  • 生産ラインの自動制御システムの停止
  • 在庫管理システムの機能停止によるサプライチェーンへの影響
  • 品質管理システムの停止による製品品質保証の困難化

1-2. 自然災害の増加と電力インフラの老朽化

日本はもともと世界有数の自然災害大国ですが、近年は気候変動の影響もあり、台風の大型化、豪雨災害の増加、地震活動の活発化など、自然災害の脅威がさらに増しています。

こうした災害による停電は、送電網や発電施設の被害が大きいため、復旧に長期間を要するケースが増えています。災害時の停電対策は、もはや一時的・短期的に対処すべき課題ではなく、日常的に発生し得る大きなリスクとして捉える必要があります。

加えて、日本の電力インフラの老朽化も深刻な問題です。高度経済成長期に整備された送電設備の多くが耐用年数を超えつつあり、設備の老朽化による突発的な停電リスクも高まっています。

1-3. 停電による工場の具体的な被害

工場で停電が発生すると、以下のような深刻な被害が発生する可能性があります。

生産ラインの即時停止

停電が発生すると、生産ラインが即座に停止し、製造活動が中断されます。安全な状態で電源が落とされなければ、データの破損や設備の異常停止が生じ、復旧に長時間を要することもあります。機械自体に大きな被害がなくても、復旧作業にかかる人件費や生産機会の損失は膨大です。

重要データの消失

停電や電圧低下が発生すると、工場内の制御システムやサーバーが停止し、重要なデータが消失する可能性があります。IoT技術を利用して24時間365日機器からデータを収集している場合、停電によりセンサーの機能が停止し、貴重な生産データが失われるリスクが高まります。

製品の品質不良

停電により機械が停止したり、室内の温度・湿度管理ができなくなったりすると、製品の品質に大きな影響を与えます。特に精密な温度管理や時間管理が求められる工程では、停電による製品不良は避けられません。製造途中の製品が廃棄処分となれば、材料費や加工費の損失も発生します。

精密機器・設備の故障

停電や電圧低下は、工場内の精密機器にも大きなダメージを与えます。特に「瞬断」と呼ばれる瞬間的な停電は、制御盤やPLC(プログラマブルロジックコントローラー)をリセットさせ、システム全体を停止させる原因となります。急激な電力の遮断や復旧により、機器内部の電子部品が故障したり、システムエラーが発生したりする例も少なくありません。

取引先や顧客からの信用失墜

納期遅延や品質不良が発生すれば、取引先や顧客からの信用を失い、今後のビジネスに重大な影響を及ぼします。特に自動車産業や半導体産業などのサプライチェーンでは、一社の生産停止が業界全体に波及する可能性もあります。

2. 工場の停電対策の基本|BCP(事業継続計画)の策定

2-1. BCPとは何か

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、自然災害や感染症の流行、システム障害など、予期しない緊急事態が発生した際に、企業が事業を迅速に再開し、損害を最小限に抑えるための計画です。

2011年の東日本大震災では、多くの企業が倒産や長期間の生産停止に追い込まれました。この教訓から、BCPの重要性が広く認識されるようになり、現在では大企業だけでなく、中小企業においてもBCP策定が進んでいます。

2-2. 停電対策を含むBCP策定のステップ

工場の停電対策をBCPに組み込む際は、以下のステップで進めることが効果的です。

BCP策定の5ステップ

  1. リスクの洗い出しと影響度評価
    地震、台風、豪雨、落雷、設備の老朽化、人為的ミスなど、想定されるリスクをリストアップし、それぞれの発生確率と影響度を評価します。
  2. 重要業務の特定と目標復旧時間の設定
    事業継続に最も重要な「コア業務」を特定し、その業務をいつまでに復旧させる必要があるかという「目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)」を設定します。
  3. 必要な対策の決定
    目標復旧時間を達成するために、どのような対策が必要かを検討します。「どの設備に優先的に電力を供給するか」「非常用電源の容量はどれくらい必要か」「データのバックアップ体制はどうするか」などを具体的に決定します。
  4. 対策の実施と体制の構築
    決定した対策を実際に実施します。非常用電源の設置、データバックアップシステムの構築、緊急時の連絡体制の整備などを行います。
  5. 訓練と見直し
    定期的に訓練を実施し、計画が実際に機能するかを検証します。また、設備の更新や事業内容の変化に応じて、BCPを定期的に見直します。

2-3. 経営層と現場の共通認識が成功の鍵

BCP策定において最も重要なのは、経営層と現場の間で共通認識を持つことです。

経営層は「いつまでにどの事業を再開したいか」「製造がどの程度遅れると工場の維持が困難となるか」という経営判断をする必要があります。一方、現場は「どの設備が最も重要か」「復旧にどれくらいの時間がかかるか」という実務的な情報を持っています。

この両者が事前に意見交換を行い、「まず設備を導入する」という考え方ではなく、工場の実情を知ったうえで必要な設備を導入することが大切です。費用対効果を考え、想定リスクの予測被害額や対策を取ることによって生まれる付加価値などを算出することで、社内調整も円滑に運びやすくなります。

3. 電源確保の方法|非常用電源システムの選択

停電対策の中核となるのが、非常用電源の確保です。工場の規模や業種、予算に応じて、最適な非常用電源システムを選択することが重要です。

3-1. UPS(無停電電源装置)

UPSとは

UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)は、停電や電力の瞬断時において、装置やデータを守るための電力供給システムです。通常、装置とコンセントの間に設置され、インバータ部と蓄電池部で構成されています。

UPSの種類と特徴

1. 常時商用方式

平常時は商用電源を直接使用し、停電時にバッテリーへ切り替わる方式です。切り替え時に数ミリ秒の瞬断が発生しますが、構造がシンプルなため、導入コストが比較的低く抑えられます。小規模な機器やPCの保護に適しています。

2. 常時インバータ方式

商用電源を一度バッテリーに充電し、その電力をインバータで変換して常時供給する方式です。商用電源の影響を受けずに常に安定した電力が供給されるため、停電時も瞬断なく稼働が継続できます。精密機器や生産ラインなど、瞬断すら許されない工場設備に最適ですが、設備コストは高めです。

3. ラインインタラクティブ方式

通常は商用電源をそのまま利用しつつ、電圧の変動や瞬間的な低下に対しては自動的に補正を行う仕組みを備えています。停電時には内蔵バッテリーから電力を供給しますが、切替時間は非常に短く、短時間の停電であれば業務への影響を最小限に抑えることが可能です。コストと安定性のバランスに優れており、中小規模の工場に最も採用されやすい方式です。

UPS導入のポイント

  • 保護対象機器の消費電力と想定される停電時間を基に、適切な容量を算出
  • バッテリー寿命を考慮(鉛蓄電池:3~5年、リチウムイオン:6~8年)
  • 定期的な点検と動作確認の実施
  • ログ管理と障害履歴の把握

3-2. 自家発電設備

長時間の停電に対応するためには、自家発電設備の導入が効果的です。

LPガス発電機

LPガス(液化石油ガス)を燃料としてエンジンを駆動し、電力を生み出す発電機です。LPガスは工場敷地内のバルク貯槽またはシリンダー容器に備蓄でき、配管を通さず供給できるため、災害時に供給途絶が起こりません。

LPガスは長期保存が可能で劣化しにくく、排気中に二酸化炭素や黒煙を含まないため、環境への影響も抑えることができます。また、燃料の劣化が少なく、ディーゼル式やガソリン式のようなメンテナンスの手間を省くことができるのも大きなメリットです。

72時間以上の連続運転が可能なため、長期間の停電にも対応できます。ただし、製品の種類自体が少なく、化石燃料と比較すると燃費が割高になることがある点には注意が必要です。

ディーゼル発電機

軽油を燃料として、ディーゼルエンジンを動かして電気をつくり、電力を供給する発電機です。製品の取り扱いメーカーが多く、非常用発電機として広く普及しています。

小型から大型までさまざまな機種があり、幅広い出力に対応可能です。本体価格や燃料単価が比較的安価であり、広い設置スペースを確保できなくても導入しやすい点もメリットです。

一方で、燃料が劣化しやすく、いざという時に動かない場合があるため、定期的なメンテナンスが必要です。また、災害時にガソリンスタンドが被災すれば燃料を入手できなくなるリスクもあります。

3-3. 産業用蓄電池

産業用蓄電池は、一般住宅以外の建物に設置する大規模な蓄電システムです。余剰電力を備蓄して必要な時に使用することができ、災害時だけでなく平常時でも自家消費に使用可能であるため、全体の電力消費量を抑えることも可能です。

家庭用蓄電池と比較してはるかに大きな容量を持ち、平時でも工場の稼働に必要な電力量を供給できます。適切なメンテナンスをすることで、長期間の使用にも耐えられます。

ただし、初期費用がかかり、蓄電池を置くスペースが必要です。また、蓄電池に電力を供給するための太陽光発電などの設備投資が必要となる点も考慮が必要です。

3-4. 太陽光発電と蓄電池の組み合わせ

太陽光発電は、平地や屋上、屋根などに設置した太陽光パネルにより、太陽光を電気エネルギーに変換する発電システムです。燃料費がかからないだけでなく、二酸化炭素も排出しないクリーンな発電方法であり、電力の源となる太陽光が枯渇することがありません。

太陽光発電単体では夜間や悪天候時に発電できないという弱点がありますが、産業用蓄電池と併用することで、日中に発電した電力を蓄え、夜間や停電時に使用することが可能になります。

太陽光発電+蓄電池のメリット

  • BCP対策とカーボンニュートラルの両立
  • 税制優遇や補助金の活用で導入費用を抑制
  • 平常時の電気代削減効果
  • 企業の環境への取り組みとしてSDGs評価向上

3-5. 電気自動車(EV)の活用

近年、環境への配慮から電気自動車(EV)を社用車として導入する企業が増えています。電気自動車のバッテリーは容量が大きいため、非常時の電源として活用することが可能です。

非常用電源を使用できない場合でも、電気自動車の電力を活用することで最低限の電力を供給できるようになります。小規模な電力需要であれば、満充電になった電気自動車のバッテリーからの電力供給で数日間稼働させることも可能です。

平常時は業務用車両として使用し、非常時には移動式の電源として活用できるため、費用対効果も高い選択肢といえます。

非常用電源システムの導入をご検討の方へ

斉木電気設備では、工場の規模や業種、ご予算に応じた最適な非常用電源システムをご提案いたします。現地調査からシステム設計、施工、メンテナンスまでワンストップで対応いたします。お問い合わせはこちら

4. データ保護とシステムのバックアップ

4-1. データバックアップの重要性

工場における停電対策として、データのバックアップは極めて重要です。停電が発生すると、機器やサーバーが突然停止し、重要な生産データや業務に必要な情報が消失するリスクが高まります。

特に、生産管理システム、品質管理データ、設計データ、顧客情報などは、企業の重要な資産であり、消失すれば事業の継続が困難になる可能性があります。

4-2. バックアップの方法

クラウドストレージの活用

クラウドストレージにデータをバックアップすることで、工場内のサーバーが被災しても、データを安全に保管できます。インターネット経由でアクセスできるため、復旧作業もスムーズに進められます。

物理的な外部ストレージへのバックアップ

NAS(ネットワーク接続ストレージ)や外付けハードディスクなど、物理的な外部ストレージへの定期的なバックアップも有効です。ただし、工場内に保管している場合は災害時に同時に被災する可能性があるため、できれば別の場所に保管することが推奨されます。

3-2-1ルールの実践

データバックアップの基本原則として「3-2-1ルール」があります。

  • 3:データを3つ持つ(オリジナル1つ+バックアップ2つ)
  • 2:2種類の異なる媒体に保存する
  • 1:1つは遠隔地に保管する

このルールに従うことで、データ消失のリスクを大幅に低減できます。

4-3. システムのクラウド化

基幹システムをクラウド化することも、停電対策として有効です。オンプレミス(自社内設置)のサーバーでシステムを運用している場合、停電によりサーバーが停止すれば、システム全体が使用できなくなります。

クラウド型のシステムであれば、データセンターは複数の電源系統や自家発電設備を備えており、停電のリスクが極めて低くなります。また、工場が被災しても、インターネット環境さえあればシステムにアクセスできるため、業務の継続性が大幅に向上します。

ただし、クラウド化には一定のコストがかかり、セキュリティ面での配慮も必要です。自社の業務内容やデータの機密性を考慮し、専門家と相談しながら進めることをおすすめします。

5. 電源に頼らない停電対策

非常用電源の確保は停電対策の中核ですが、災害時には電源自体が被害を受ける可能性もあります。そのため、電力に頼らない形での停電対策も重要です。

5-1. 蓄光テープの活用

停電時、工場内は真っ暗になり、従業員の避難や安全確保が困難になります。そこで有効なのが、蓄光テープです。

蓄光テープは、蛍光灯や太陽光などの光を蓄えて、暗闇で発光することで目印となる防災用途に開発された製品です。階段の段差、避難経路、障害物の位置などに貼ることで、停電により電力が供給されない場合であっても、危険箇所や避難経路の視認性を高めることができます。

蓄光テープのメリット

  • 電力不要で長時間発光(製品によっては10時間以上)
  • 導入コストが比較的低い
  • 設置が簡単で、すぐに実施できる
  • 電気式避難誘導灯のバックアップとして有効
  • メンテナンスがほとんど不要

5-2. 非常用ライトの準備

災害による停電発生時に避難する必要がある場合に備えて、非常用ライトを施設内のあらゆる場所に配置しておくことも重要です。

懐中電灯、ヘッドライト、ランタンなど、用途や場所に応じて適切なものを用意します。特にヘッドライトは両手が自由になるため、復旧作業や避難誘導に便利です。

電池式のものは定期的に電池の残量を確認し、必要に応じて交換しておくことが重要です。また、手回し充電式や太陽光充電式のライトも、電池切れの心配がないため有効です。

5-3. バッテリー式のPCやタブレットの活用

従業員が業務で使用するPCを、ノートPCのようなバッテリー搭載型のものにすることも停電対策の一つです。デスクトップPCは電力供給が常に必要であり、停電が発生した途端に使用できなくなり、データが損失するおそれもあります。

バッテリーが搭載されたPCであれば、停電発生時にもデータ損失を回避でき、一定時間作業を継続できます。インターネット接続が維持できれば、情報収集や連絡手段として使用することも可能です。

タブレット端末も同様に、バッテリー駆動で長時間使用できるため、停電時の業務継続に役立ちます。

6. 緊急時の体制構築と従業員教育

6-1. 緊急時の連絡体制の確立

工場における停電対策として、緊急時の連絡体制を確立しておくことは極めて重要です。

まずは組織図などから、既に定められている役割分担を再確認します。もし役割分担が明確でない場合は、非常時の責任者や担当者を決め、事前に周知しておきましょう。

停電が発生する時間帯や状況によっても、必要な対応や連絡先は異なります。昼間の稼働時間帯であれば現場責任者が対応できますが、夜間や休日の場合は、誰にどのように連絡するかを明確にしておく必要があります。

また、停電時には固定電話が使えない可能性があるため、携帯電話やSNS、電子メールなどの多様な連絡手段を準備することも大切です。緊急連絡網を作成し、全従業員に配布しておくことをおすすめします。

6-2. 従業員への緊急時の対応教育

緊急事態が発生した際、まず優先すべきは従業員の安全確保です。そのため、非常時の安否確認方法や避難経路の周知、定期的な避難訓練を実施することで、従業員が迅速かつ安全に避難できるようにすることが重要です。

従業員教育のポイント

  • 避難訓練の実施:年に1~2回程度、停電を想定した避難訓練を実施。実際に照明を落として暗闇の中での避難を体験
  • 設備の安全停止手順の教育:各設備の担当者に対して、緊急時の安全停止手順を教育し、マニュアル化
  • 情報伝達訓練:誰が誰に何を報告するのか、どのような情報を優先して伝達するのかを訓練を通じて習熟

6-3. 停電対応マニュアルの作成

停電が発生した際に、従業員が適切に行動できるよう、停電対応マニュアルを作成することが推奨されます。

マニュアルには、以下の内容を含めることが一般的です。

  • 停電発生時の初動対応(安全確認、設備の停止手順)
  • 連絡体制と報告先
  • 避難経路と避難場所
  • 非常用電源の起動手順
  • 復旧作業の手順
  • 復旧後の確認事項

マニュアルは、各持ち場に配置し、誰でもすぐに参照できるようにしておくことが重要です。また、定期的に内容を見直し、設備の変更や組織体制の変更に対応させることも忘れてはいけません。

7. 補助金・助成金の活用

停電対策のための設備導入には、一定のコストがかかります。しかし、国や自治体では、BCP対策や省エネ・再エネ設備の導入に対して、様々な補助金や助成金制度を用意しています。これらを活用することで、導入コストを大幅に抑えることが可能です。

7-1. LPガス災害バルク補助金制度

LPガス発電機の導入を検討している場合、「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金(LPガス災害バルク補助金制度)」を活用できる可能性があります。

補助金の概要

  • 補助率:定額補助(2/3相当または1/2相当)
  • 補助対象設備:LPガス発電機、空調機器、給湯器など
  • 対象施設:医療施設、福祉施設、公的な避難所となりうる施設など(工場でも条件を満たせば対象となる場合あり)

7-2. BCP実践促進助成金(東京都)

東京都では、「BCP実践促進助成金」という制度があり、BCPの実践に必要な設備等の導入に要する経費の一部を助成しています。

補助対象設備:自家発電装置、蓄電池、安否確認システム、感染症対策の物品、従業員用の備蓄品、データバックアップ専用のサーバー、基幹システムのクラウド化など

補助率:中小企業者で1/2、小規模企業者で2/3以内

補助上限金額:1,500万円(申請下限額10万円)

各都道府県でも同様の補助金制度が用意されている場合がありますので、自社の所在地の自治体に確認することをおすすめします。

7-3. 太陽光発電・蓄電池関連の補助金

太陽光発電や産業用蓄電池の導入に関しては、環境省と経済産業省でさまざまな支援が行われています。

  • 地域脱炭素の推進のための交付金
  • 地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業
  • 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
  • ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
  • 工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)

など、多数の補助金制度が用意されています。補助金には申請期限がありますので、早めに導入を検討し、専門業者や自治体の窓口に相談することをおすすめします。

7-4. 補助金申請のポイント

補助金申請の注意点

  • 申請期限を確認する:補助金には申請期限があり、予算が尽きれば期限前でも受付が終了する場合があります
  • 申請要件を正確に把握する:補助金によって対象となる設備や企業規模、地域などの要件が異なります
  • 専門家に相談する:補助金申請には専門的な知識が必要な場合があります。電気設備工事会社や補助金申請代行業者など、専門家に相談することで申請の成功率を高められます

私たち斉木電気設備でも、補助金制度のご案内や申請サポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。

8. 電気設備の定期点検とメンテナンス

8-1. 電気設備の寿命と更新時期

どんなに優れた停電対策設備を導入しても、定期的なメンテナンスを怠れば、いざという時に機能しない可能性があります。

電気設備には寿命があり、法定耐用年数を超えて使用している設備は、突然の故障や性能低下のリスクが高まります。

主な電気設備の更新時期の目安

  • 受変電設備:15~20年
  • 配電盤・分電盤:15~25年
  • 非常用発電機:15~20年
  • UPS(無停電電源装置):本体10~15年、バッテリー3~8年

設備の老朽化は停電の原因にもなるため、計画的な更新が重要です。

8-2. 法令で義務付けられた点検

ビルや工場の電気設備は、電気事業法によって定期的な点検が義務付けられています。怠ると罰金や罰則の対象となるだけでなく、重大な事故につながる可能性もあります。

自家用電気工作物の定期点検

高圧受電設備(キュービクル)を設置している工場では、電気主任技術者の選任または外部委託による定期点検が義務付けられています。月次点検、年次点検、精密点検など、定められた頻度で点検を実施する必要があります。

非常用発電機の点検

消防法により、非常用発電機は年1回の総合点検が義務付けられています。実際に発電機を起動し、負荷運転を行うことで、非常時に確実に作動するかを確認します。

8-3. UPSのメンテナンス

UPS(無停電電源装置)も、定期的なメンテナンスが必要です。

  • 定期点検と動作確認:UPSが正常に作動するか、定期的な放電試験や自己診断機能のチェックが不可欠
  • バッテリーの交換:鉛蓄電池タイプであれば3~5年、リチウムイオンタイプでも6~8年を目安に交換を計画
  • ログ管理と障害履歴の把握:異常発生時の原因究明や再発防止策の立案に活用

8-4. 自家発電設備のメンテナンス

LPガス発電機やディーゼル発電機などの自家発電設備も、定期的なメンテナンスが必要です。

特にディーゼル発電機は、燃料が劣化しやすいという特性があります。長期間使用しないと燃料が変質し、いざという時にエンジンが始動しないというトラブルが発生する可能性があります。定期的に試運転を行い、燃料の状態やエンジンの動作を確認することが重要です。

LPガス発電機は燃料の劣化が少ないというメリットがありますが、それでもエンジンオイルの交換や点火プラグの点検など、基本的なメンテナンスは必要です。

9. まとめ|停電対策は企業の信頼と継続性を守る投資

工場における停電対策は、もはや「あればいい」というレベルではなく、「なくてはならない」必須の経営課題となっています。

自然災害の頻発、DX化の進展、電力インフラの老朽化など、停電リスクを取り巻く環境は年々厳しくなっています。停電によって生産が停止すれば、売上の損失だけでなく、取引先や顧客からの信用を失い、企業の存続にも関わる事態となりかねません。

本記事でご紹介した停電対策のまとめ

  1. BCP(事業継続計画)の策定
    リスクを洗い出し、重要業務を特定し、目標復旧時間を設定した上で、必要な対策を決定します。経営層と現場の共通認識を持つことが成功の鍵です。
  2. 非常用電源の確保
    UPS(無停電電源装置)、自家発電設備(LPガス発電機、ディーゼル発電機)、産業用蓄電池、太陽光発電など、工場の規模や業種に応じた最適な電源システムを選択します。
  3. データ保護とシステムのバックアップ
    クラウドストレージや外部ストレージへの定期的なバックアップ、基幹システムのクラウド化により、データ消失のリスクを低減します。
  4. 電源に頼らない対策
    蓄光テープ、非常用ライト、バッテリー式のPCなど、電力に頼らない形での停電対策も重要です。
  5. 緊急時の体制構築と従業員教育
    緊急時の連絡体制の確立、避難訓練の実施、停電対応マニュアルの作成により、従業員が適切に行動できるようにします。
  6. 補助金・助成金の活用
    国や自治体の補助金制度を活用することで、導入コストを大幅に抑えることができます。
  7. 電気設備の定期点検とメンテナンス
    設備の寿命を把握し、法令で義務付けられた点検を確実に実施します。UPSや自家発電設備の定期メンテナンスも忘れてはいけません。

停電対策は、単なるコストではなく、企業の信頼と継続性を守るための重要な投資です。適切な対策を講じることで、万が一の停電時にも事業を継続でき、顧客や取引先からの信頼を維持することができます。