工場の収益を圧迫する電気代の高騰にお悩みではありませんか?近年の電気料金の上昇は、燃料価格の変動や再生可能エネルギー発電促進賦課金などが主な原因ですが、適切な対策を講じることでコスト削減は十分に可能です。この記事では、工場の電気代を削減するための具体的なアイデアを、大規模な「設備投資編」7選と、明日からすぐに実践できる「運用改善編」8選に分けて、合計15の施策を網羅的に解説します。自社の電力使用状況を正確に把握する方法から、照明のLED化、高効率な空調・コンプレッサーの導入、太陽光発電による自家消費、さらには活用できる補助金制度まで、貴社の状況に合わせて最適なコスト削減策を見つけるための情報が満載です。この記事を最後まで読めば、無駄なコストを削減し、利益を最大化するための具体的なアクションプランを描けるようになります。
工場の電気代が高騰する3つの理由
「最近、工場の電気代が異常に高い…」と感じている経営者や工場担当者の方は多いのではないでしょうか。それもそのはず、工場の電気代はここ数年でかつてないほど高騰しています。省エネ対策を検討する前に、まずはなぜ電気代が上がっているのか、その根本的な理由を理解することが重要です。ここでは、工場の電気代を押し上げている主な3つの要因を詳しく解説します。
理由1:燃料価格の変動と円安の影響
日本の電力の多くは、液化天然ガス(LNG)や石炭、石油などを燃料とする火力発電によって作られています。これらの燃料のほとんどは海外からの輸入に頼っているため、国際的な市場価格や為替レートの変動が電気料金に直接影響します。
電気料金明細に記載されている「燃料費調整額」という項目が、この影響を反映するものです。近年、世界的なエネルギー需要の増加やウクライナ情勢などに伴い燃料価格が高騰。さらに、歴史的な円安が輸入価格を押し上げ、燃料の調達コストは増大し続けています。この上昇した燃料調達コストが燃料費調整額として電気料金に上乗せされるため、工場が使用する電力量が変わらなくても、請求額が大幅に増加してしまうのです。
理由2:再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価上昇
「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」も、電気代を押し上げる大きな要因です。これは、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及を目的として、電力会社が再エネで発電された電気を買い取る費用を、すべての電気使用者が負担する制度です。
再エネ賦課金の単価は国が毎年決定しており、再エネの導入量が増えるにつれて上昇する傾向にあります。この賦課金は電気の使用量に応じて課金されるため、電力使用量が膨大な工場にとっては、無視できないコスト負担となっています。たとえ自社で省エネ努力をしても、賦課金単価自体が上昇すれば、それだけで電気代は上がってしまいます。
| 年度 | 賦課金単価(円/kWh) |
|---|---|
| 2021年度 | 3.36 |
| 2022年度 | 3.45 |
| 2023年度 | 1.40 |
| 2024年度 | 3.49 |
※2023年度は一時的に単価が下がりましたが、2024年度には過去最高水準にまで上昇しており、今後も動向を注視する必要があります。
理由3:電力需給の不安定化と卸電力市場価格の高騰
2016年の電力小売全面自由化以降、多くの企業が従来の電力会社から「新電力」へ契約を切り替えました。新電力の多くは自社の発電所を持たず、日本卸電力取引所(JEPX)から電気を仕入れて販売しています。
このJEPXの取引価格は、電力の需要と供給のバランスによって30分ごとに変動します。夏場や冬場の電力需要の急増や、大規模な発電所の計画外停止などによって電力供給が不足すると、市場価格は一気に高騰します。特に、料金プランがこの市場価格に連動する「市場連動型プラン」を契約している場合、市場価格の高騰がそのまま自社の電気料金に跳ね返ってくるリスクがあります。こうした電力需給の不安定化が、工場の電気代を予測困難にし、高騰させる一因となっているのです。
まずは現状把握から 工場の電気代の内訳を知る方法
工場の電気代削減に取り組む上で、最初に行うべきことは「現状把握」です。やみくもに対策を講じても、効果が薄いばかりか、無駄なコストをかけてしまう可能性さえあります。自社の工場が「いつ」「どこで」「何に」電気をどれだけ使っているのかを正確に把握することこそが、効果的な削減策を立案するための最初の、そして最も重要なステップとなります。
この章では、電気代削減の土台となる現状把握の方法について、2つのステップで具体的に解説します。
電気料金の仕組みを理解する
まず、毎月支払っている電気料金がどのように計算されているのか、その仕組みを正しく理解する必要があります。多くの工場が契約している高圧・特別高圧電力の料金は、主に「基本料金」と「電力量料金」の2つで構成されています。
| 料金項目 | 決定要因 | 削減アプローチの方向性 |
|---|---|---|
| 基本料金 | 契約電力(最大需要電力:デマンド値) | ピーク電力の抑制(デマンドコントロール) |
| 電力量料金 | 電力使用量(kWh) | 全体的な電力使用量の削減(省エネルギー) |
基本料金は、電力の使用量に関わらず毎月固定でかかる料金です。これは、過去1年間における30分ごとの平均使用電力のうち、最も大きい値であった「最大需要電力(デマンド値)」によって決定されます。重要なのは、一度デマンド値が更新されると、その後の1年間はその値を元に基本料金が計算され続けるという点です。つまり、たった30分間だけ電力使用量が突出してしまうと、1年間の基本料金が高くなってしまうのです。そのため、使用電力のピークをいかに抑えるかが基本料金削減の鍵となります。
一方、電力量料金は、実際に使用した電力量(kWh)に応じて変動する料金です。ここには、燃料価格の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整額」や、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」なども含まれます。電力量料金を削減するためには、工場全体の総エネルギー使用量を減らす、純粋な「省エネ」活動が必要となります。
エネルギーの見える化で無駄を発見
電気料金の仕組みを理解したら、次に自社の工場における電力使用状況を「見える化」します。これにより、これまで気づかなかったエネルギーの無駄を発見し、具体的な削減ターゲットを絞り込むことができます。
最も手軽な方法は、毎月の電力会社の検針票(請求書)を確認することです。月ごとの電力使用量や料金の推移、力率などを確認することで、季節による変動や前年との比較ができます。しかし、これだけでは工場全体の合計値しかわからず、「どの設備が」「どの時間帯に」電力を消費しているかまでは把握できません。
そこで有効なのが、エネルギー管理システム(EMS)の導入です。EMS(Energy Management System)とは、工場内の設備やエリアごとにセンサーや計測器を設置し、電力使用量をリアルタイムで監視・記録・分析するシステムのことです。特に工場向けはFEMS(Factory Energy Management System)とも呼ばれます。
EMSを導入することで、以下のような詳細なデータが得られます。
- 設備ごとの電力消費量と稼働状況
- 生産ラインや工程ごとのエネルギー原単位
- 時間帯別・曜日別の電力使用量の推移
- デマンド値のリアルタイム監視とピーク予測
これらのデータを分析することで、非稼働時間にもかかわらず電力を消費している待機電力の大きな設備や、特定の工程における非効率なエネルギー使用といった、具体的な問題点を発見できます。この「見える化」によって得られた客観的なデータに基づき、次の章で解説する設備投資や運用改善といった具体的な削減策の優先順位を決定することが、賢明な省エネ活動の第一歩となるのです。
【設備投資編】工場の電気代 削減アイデア7選
ここでは、初期投資は必要ですが、長期的かつ大きな電気代削減効果が期待できる設備投資に焦点を当てたアイデアを7つご紹介します。最新の省エネ設備へ更新することは、ランニングコストの削減だけでなく、生産性の向上や企業の環境価値向上にも繋がります。後述する補助金制度の活用も視野に入れながら、計画的に進めていきましょう。
照明をLEDに交換する
工場内で使用されている水銀灯や蛍光灯をLED照明に交換することは、電気代削減の第一歩として非常に効果的です。特に、天井が高く、24時間稼働している工場ではその効果は絶大です。
LED照明は、従来の水銀灯と比較して消費電力を約5分の1から8分の1にまで削減できるうえ、寿命も数倍長いため、交換の手間やコストも大幅に削減できます。さらに、水銀灯のように点灯までの時間がかからず、瞬時に最大光量に達する点もメリットです。発熱量が少ないため、夏場の空調負荷を軽減する副次的な効果も期待できます。
高効率な空調設備へ更新する
工場の電力消費において、空調設備が占める割合は決して小さくありません。特に設置から10年以上経過した古い業務用エアコン(GHPやEHP)は、エネルギー効率が著しく低下している可能性があります。
最新の高効率な空調システムへ更新することで、消費電力を大幅に削減できます。設備選定の際には、JIS規格に基づいて算出されるAPF(通年エネルギー消費効率)の数値を比較検討しましょう。数値が高いほど省エネ性能が高いことを示します。また、エリアごとに最適な温度管理ができるシステムを導入することで、無駄なエネルギー消費をさらに抑制できます。
省エネ型コンプレッサーを導入する
圧縮空気を作り出すコンプレッサーは、工場の総電力消費量の約25%を占めることもある、電力消費の大きい設備です。古いコンプレッサーを最新の省エネ型モデルに更新することで、大きなコスト削減が見込めます。
インバータ制御の活用
インバータ制御機能を持つコンプレッサーは、圧縮空気の使用量に応じてモーターの回転数を最適に制御します。これにより、負荷が少ない時間帯の無駄な電力消費を徹底的に排除し、従来の一定速運転のコンプレッサーと比較して大幅な省エネを実現します。特に、一日のうちで負荷変動が大きい工場には最適な選択肢です。
台数制御の最適化
複数台のコンプレッサーを運用している場合は、台数制御システムの導入が有効です。必要な空気量に対して、最もエネルギー効率が良くなるように複数台のコンプレッサーの稼働・停止を自動で最適化します。これにより、個々のコンプレッサーが部分負荷で非効率に運転されるのを防ぎ、システム全体のエネルギー効率を最大化させることができます。
生産設備に高効率モーターを導入する
ポンプ、ファン、コンベアなど、工場内のあらゆる生産設備で使われているモーターも、主要な電力消費源です。現在、モーターには「トップランナー制度」が適用されており、エネルギー効率の高い製品(IE3プレミアム効率モーターなど)が標準となっています。旧式の標準モーター(IE1など)を使用し続けている場合、高効率モーターに交換するだけで、モーター単体の消費電力を数%から10%以上削減できる可能性があります。
変圧器(トランス)を更新する
高圧電力を受電している工場に不可欠な変圧器(トランス)は、24時間365日稼働し続けており、稼働中は常に電力損失が発生しています。この変圧器も「トップランナー制度」の対象機器であり、新しいモデルほど電力損失が少なく、エネルギー効率が高くなっています。設置から15~20年以上経過している古い変圧器は、最新の高効率変圧器に更新することで、待機電力にあたる無負荷損を大幅に削減できます。
太陽光発電システムで自家消費する
工場の広大な屋根や遊休地を活用して太陽光発電システムを設置し、発電した電力を自社工場で消費(自家消費)する方法です。電力会社から購入する電力量そのものを減らすことができるため、電気料金を直接的に削減できます。燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金の影響を受けない安定した電力源を確保できるため、電気料金高騰のリスクヘッジとしても極めて有効です。また、災害時の非常用電源としての活用や、企業の脱炭素経営への貢献もアピールできます。
窓や壁の断熱性能を強化する
空調の効率を最大限に高めるためには、建物の断熱性能の向上が欠かせません。工場の屋根や外壁に遮熱塗料を塗布する、窓に遮熱フィルムを貼る、断熱パネルを設置するといった対策により、外気温の影響を受けにくくなります。これにより、夏は室温の上昇を抑え、冬は室温の低下を防ぐことができるため、冷暖房設備の負荷が軽減され、消費電力の削減に繋がります。
【運用改善編】明日からできる工場の電気代 削減アイデア8選
大規模な設備投資には時間もコストもかかりますが、日々の運用方法を見直すだけでも工場の電気代は大幅に削減できます。ここでは、比較的コストをかけずに明日からでも始められる、即効性の高い8つの削減アイデアをご紹介します。
デマンド監視で基本料金を削減する
高圧・特別高圧電力を契約している工場にとって、電気の基本料金は「デマンド値」によって決まります。デマンド値とは、30分ごとの電力使用量の平均値のうち、過去1年間で最も高かった値(最大需要電力)のことです。つまり、たった30分でも突出して電力を使ってしまうと、その後の1年間の基本料金が高額になってしまうのです。
このデマンド値を抑制するために有効なのが「デマンド監視」です。デマンド監視装置(デマンドコントローラー)を導入することで、電力使用量をリアルタイムで監視し、設定した目標値を超えそうになると警報音や通知で知らせてくれます。警報が鳴った際に、一時的に空調を止めたり、優先度の低い設備の稼働をずらしたりする「ピークカット」や「ピークシフト」を行うことで、デマンド値を効果的に抑制し、基本料金の削減につなげることができます。
空調の温度設定や運用方法を見直す
工場全体の消費電力の中でも、空調設備が占める割合は非常に大きい傾向にあります。そのため、空調の運用を少し見直すだけで大きな省エネ効果が期待できます。すぐに実践できる具体的な方法を見ていきましょう。
| 対策項目 | 具体的な運用方法 |
|---|---|
| 適正温度の徹底 | 作業環境や製品品質に影響のない範囲で、冷暖房の温度設定を法令や推奨値(例:夏期28℃、冬期20℃)に近づける。1℃の差でも大きな削減効果があります。 |
| フィルターの定期清掃 | フィルターの目詰まりは冷暖房効率を著しく低下させます。月に1〜2回を目安に清掃することで、無駄な電力消費を防ぎます。 |
| 室外機周辺の環境整備 | 室外機の吹出口や吸込口の周りに物を置かず、風通しを良くします。夏場は日よけ(すだれや遮光ネット)を設置して直射日光を避けるだけでも効率が向上します。 |
| 空気循環の促進 | サーキュレーターやシーリングファンを併用し、工場内の空気を循環させましょう。温度ムラがなくなり、空調の設定温度を緩和しても快適性を保ちやすくなります。 |
コンプレッサーの圧力設定を最適化する
圧縮空気を作るコンプレッサーも、工場における主要な電力消費源の一つです。多くの工場では、必要以上に高い圧力で空気を供給しているケースが見られます。コンプレッサーの吐出圧力を0.1MPa(メガパスカル)下げるだけで、消費電力を約7〜8%も削減できると言われています。
まずは、実際に使用している末端の機械やエアツールが必要とする圧力を正確に把握し、供給圧力を必要最低限まで引き下げる検討をしましょう。また、配管からのエア漏れ(空気漏れ)は、コンプレッサーが無駄な稼働をする大きな原因です。定期的にエア漏れの箇所を点検し、速やかに補修することも極めて重要です。
不要な照明のこまめな消灯を徹底する
「使わない電気は消す」という基本的な行動も、工場全体で徹底すれば大きな削減効果を生み出します。従業員の意識だけに頼るのではなく、ルール化や仕組み化を進めることが成功の鍵です。
- 休憩時間や昼休みの一斉消灯をルール化する。
- 稼働していないエリアや倉庫、通路などの不要な照明は常に消灯しておく。
- 照明のスイッチに担当エリアを明記したステッカーを貼り、誰でも分かりやすくする。
- 窓からの自然光を積極的に取り入れ、日中は窓際の照明を消す。
設備の待機電力を削減する
生産設備やオフィス機器は、稼働していない時間でも待機電力を消費しています。一つひとつは小さな電力でも、工場全体の設備が24時間365日電力を消費し続けると、その総量は無視できません。夜間や休日など、長期間使用しない設備は主電源からオフにすることを徹底しましょう。どの設備をいつ誰がオフにするのか、明確なルールを定めて周知することが大切です。
定期的なメンテナンスで設備効率を維持する
設備の汚れや摩耗は、エネルギー効率の低下を招き、同じ作業をするにもより多くの電力を必要とする原因になります。定期的なメンテナンスは、省エネだけでなく、設備の安定稼働や長寿命化にも不可欠です。
- 空調や集塵機のフィルター清掃・交換
- モーターやポンプなど、駆動部の潤滑油の点検・補充
- 熱交換器のフィン(冷却フィン)の清掃
これらのメンテナンスを計画的に実施し、設備の性能を常に最適な状態に保つことが、無駄な電力消費の抑制につながります。
電力会社の契約プランを見直す
2016年の電力小売全面自由化以降、多くの事業者が電力市場に参入し、多様な料金プランが提供されています。現在の契約内容が、自社の工場の操業実態(操業時間、電力使用のピークなど)に本当に合っているか一度見直してみましょう。複数の電力会社から見積もりを取り、料金シミュレーションを行うことで、電気料金単価そのものを引き下げられる可能性があります。特に、新電力への切り替えは、電気の品質を変えることなく料金だけを安くできる有効な手段です。
従業員の省エネ意識を向上させる
これまで紹介した運用改善策を成功させるためには、現場で働く従業員一人ひとりの協力が欠かせません。省エネ活動を全社的な取り組みとして定着させるための仕組みづくりが重要です。
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 情報の見える化と共有 | 電力使用量のデータをグラフなどで分かりやすく掲示し、省エネの成果を全社で共有する。具体的な削減目標を設定し、進捗を報告する。 |
| 教育・啓発活動 | 定期的な研修会や勉強会を実施する。ポスターやステッカーを作成し、各設備やスイッチの近くに掲示して注意を促す。 |
| 体制づくり | 部門横断的な省エネ推進チームを結成し、定期的に工場内を巡回する「省エネパトロール」を実施して改善点を探す。 |
省エネを一部の担当者だけの仕事にせず、全従業員が参加する改善活動として位置づけることで、継続的かつ大きな成果を生み出すことができます。
工場の電気代削減に活用できる補助金と助成金
工場の電気代を削減するための設備投資は、長期的に見れば大きなコスト削減効果が期待できますが、初期投資が高額になることが導入の障壁となるケースも少なくありません。しかし、国や地方自治体が提供する補助金や助成金を活用することで、その負担を大幅に軽減し、投資回収期間を短縮することが可能です。ここでは、工場の省エネ設備導入に利用できる代表的な支援制度をご紹介します。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金
「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」は、経済産業省資源エネルギー庁が管轄する、事業者向けの代表的な省エネ支援制度です。工場の生産性を向上させながら、エネルギー消費効率の高い設備やシステムの導入を支援することを目的としています。この補助金は、事業内容に応じて複数のカテゴリーに分かれているのが特徴です。
対象となる設備は、本記事の【設備投資編】でご紹介したLED照明、高効率空調、省エネ型コンプレッサー、高効率モーター、変圧器(トランス)など多岐にわたります。申請には公募期間が定められており、要件も細かく規定されているため、専門家や支援機関に相談しながら準備を進めることをお勧めします。
| 事業類型 | 概要 | 主な対象設備・事業 |
|---|---|---|
| (A)先進事業 | 先進的で高い省エネ効果が見込まれる技術・設備の導入を支援 | 先進的な高効率設備、未利用熱活用システムなど |
| (B)オーダーメイド型事業 | 個別の工場に合わせたオーダーメイドの省エネ対策を支援 | 工場全体のエネルギー効率を最適化するシステム導入など |
| (C)指定設備導入事業 | あらかじめ定められた高い省エネ性能を持つ汎用的な設備の導入を支援 | 高効率空調、業務用給湯器、高性能ボイラ、高効率変圧器、LED照明など |
| (D)エネマネ事業 | EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入とエネマネ事業者の活用を支援 | EMS機器、計測・制御装置、エネマネ事業者との契約 |
特に「(C)指定設備導入事業」は、多くの工場で導入しやすい汎用設備が対象となっており、活用しやすい制度と言えるでしょう。補助率は対象経費の3分の1から2分の1程度、上限額も数億円規模と大きいため、大規模な設備更新を検討する際には必ず確認したい制度です。
地方自治体が提供する独自の支援制度
国の制度に加えて、都道府県や市区町村といった地方自治体も、地域内の事業者を対象とした独自の補助金・助成金制度を用意している場合があります。これらの制度は、国の補助金よりも申請要件が緩やかであったり、より地域の実情に合った支援内容になっていたりすることが特徴です。
例えば、東京都では中小企業を対象とした省エネ設備導入の助成金があり、LED照明や高効率空調への更新費用の一部を補助しています。また、工業地帯を抱える愛知県や大阪府などでも、独自の省エネ・再エネ導入支援策が展開されています。
これらの情報を探すには、工場の所在地である「都道府県名」や「市区町村名」と、「工場 省エネ 補助金」「中小企業 設備投資 助成金」といったキーワードを組み合わせて検索するのが有効です。また、地域の商工会議所や中小企業支援センターなどに相談するのも良い方法です。
重要な点として、自治体の制度は、国の補助金と併用できるケースがあることです。併用が認められれば、自己負担額をさらに圧縮し、より有利な条件で最新の省エネ設備を導入できます。申請を検討する際は、それぞれの制度の併用可否について必ず確認しましょう。
まとめ
本記事では、工場の電気代が高騰する理由から、具体的な削減アイデアを「設備投資」と「運用改善」の2つの側面から合計15個、ご紹介しました。電気代の削減は、企業のコスト競争力を高める上で避けては通れない重要な経営課題です。
工場の電気代は、燃料価格の変動や再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)単価の上昇などを背景に、今後も高止まりする可能性があります。だからこそ、現状を正確に把握し、計画的に対策を講じることが不可欠です。
「照明のLED化」や「高効率な空調・コンプレッサーへの更新」といった設備投資は、初期費用がかかるものの、長期的には大きな削減効果が期待できます。一方で、「デマンド監視」や「各種設備の設定温度・圧力の最適化」「こまめな消灯」といった運用改善は、明日からでも始められる即効性のある取り組みです。
大規模な設備投資を検討する際には、「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」や地方自治体が提供する制度など、活用できる補助金・助成金を積極的に情報収集することをおすすめします。初期投資の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
重要なのは、まず自社の電力使用状況を「見える化」し、どこに無駄が潜んでいるのかを特定することです。その上で、本記事で紹介したアイデアの中から自社の状況に合ったものを組み合わせて実践してみてください。小さな改善の積み重ねが、結果的に大きなコスト削減へと繋がります。