突然の停電や雷、瞬低(瞬時電圧低下)は、誰にでも起こり得る身近な電気トラブルです。この記事では、それぞれの原因やリスク、影響とあわせ、家庭や仕事場で今すぐできる効果的な備えや対策を具体的に解説します。不意の電気トラブルから大切な暮らしを守る知識と行動が得られます。
突然の電気トラブルが起きる主な原因とは

私たちの生活に欠かせない電気ですが、「停電」「雷によるトラブル」「瞬低(瞬時電圧低下)」といった突然の電気トラブルは思わぬタイミングで訪れます。 正しい備えや対策をするためには、まずその原因や発生メカニズムを知ることが重要です。 この章では、代表的な3つのトラブルについて、それぞれの原因やリスクを分かりやすく解説します。
トラブルの種類 | 主な原因 | 主な発生シーン |
---|---|---|
停電 | 台風、落雷、設備故障、工事、電力需給のひっ迫 | 自然災害時、送電線・配電設備点検時 他 |
雷による電気トラブル | 落雷の直撃や誘導雷による電圧急上昇 | 雷雨発生時、夏季の夕立、多発地域での落雷シーズン |
瞬低(瞬時電圧低下) | 送電線への雷や事故、供給系統トラブル | 雷雲接近時、大規模事故・設備切替時 |
停電が発生する仕組みと主な原因
停電とは、電力会社からの電気供給が一時的または継続的に途絶えてしまう現象です。原因には、激しい台風による倒木や電柱の損傷、落雷、老朽化した設備の故障、工事による計画的な停電、または夏場の電力使用増加による需給逼迫が挙げられます。特に近年は気象災害の頻発により、各地で大規模停電が発生するリスクが高まっています。また、地域によってはイノシシやカラスなど野生動物の接触が原因となるケースも報告されています。
雷による電気トラブルのリスクと状況
雷は発生時、地表に向けて数百万ボルトもの電圧が瞬間的に放出されます。この落雷や、電線・屋外設備への誘導雷が原因で、家庭やオフィスの家電・電子機器が故障したり、火災に発展することもあります。 また、建物に直撃しなくとも、周囲の送電線や電話線を伝って高圧の電流が入り込むことで、プラグが差し込まれているだけでパソコンやテレビ、インターホンなどの精密機器がダメージを受けるリスクも高いです。気象庁の統計によれば、夏季の日本列島は落雷の被害が特に多く、「雷注意報」や「警報」の発表時は注意が必要です。
瞬低(瞬時電圧低下)とは何かをわかりやすく解説
瞬低(瞬時電圧低下)とは、通常の電圧が一瞬だけ大きく落ち込む現象で、その多くは数十ミリ秒(0.02〜0.1秒程度)から数秒と非常に短時間です。主な原因は、送電線や配電線への落雷、送電設備の事故、電力系統の切り替え作業や大規模な事故時の保護動作です。瞬低が起こると、家庭用の家電製品ではほとんど気付きませんが、パソコン、サーバー、製造設備など繊細な電子機器の場合は、予期せぬシャットダウンやデータ損失、装置トラブルに繋がることもあります。特にオフィスや工場、テレワークで重要な業務を担う場合は、被害は深刻となります。
停電・雷・瞬低が私たちの生活にもたらす主な影響

家庭で困ること・危険なこと
停電や雷、瞬時電圧低下(瞬低)は、家庭のあらゆる場所で生活の利便性や安全性に大きな影響を及ぼします。 例えば、夜間に停電が発生すると、照明が消え足元が見にくくなるため、転倒や怪我のリスクが高まります。 また、エレベーターが停止し閉じ込められる危険や、IHクッキングヒーター、冷蔵庫、エアコンなど電気機器の機能停止、スマートホーム機能が使えなくなるなど、現代の家庭が直面するリスクは多岐にわたります。
影響する家庭内機器 | 想定されるトラブル | 関連する二次的リスク |
---|---|---|
冷蔵庫 | 食品が傷みやすくなる | 食中毒の危険 |
エアコン・暖房 | 冷暖房の停止 | 熱中症・低体温症のおそれ |
医療用機器 | 在宅医療機器の停止 | 健康被害、生命への危険 |
Wi-Fiルーター | インターネット通信が途絶える | 情報収集や連絡手段の喪失 |
照明・家電全般 | 夜間の視界不良、家電の不具合 | 怪我、火災、盗難リスクの増大 |
また、雷による過電流(雷サージ)が電気機器に直接ダメージを与え、最悪の場合は機器の故障や火災を招く恐れもあります。 特にパソコンや液晶テレビ、ルーターなどの精密機器は破損しやすく、重要なデータの消失にもつながりかねません。
小規模事業所やテレワーク・リモートワーク時の注意点
近年、リモートワークやテレワークの普及によって、自宅や小規模事業所での「電気トラブル対策」が欠かせなくなっています。 停電や瞬低が発生すると、パソコンやNAS、プリンター、ネットワーク機器が突然停止したり、作成中の書類データが破損したりするリスクがあります。 そのため、仕事の中断や長時間のトラブル復旧により、納期の遅延や取引先への信頼低下といったビジネスリスクも発生します。
場面 | 主な影響 |
---|---|
Web会議中 | 通信断による会議の中断、重要連絡の遅延 |
データ作成・管理 | 保存していないデータの消失、不整合 |
事務所設備/小規模店舗 | POSレジシステムのダウン、セキュリティ停止 |
在宅医療・福祉事業所 | 生命維持装置の停止、利用者の安全確保困難 |
瞬低によって、サーバ等が一時的に停止・再起動し、ネットワークが不安定化することもありえます。 復旧後も一部の周辺機器が正常に動作しなくなるケースも報告されています。
電気トラブルに事前にできる備え

停電に備えるための日ごろの準備
突然の停電に備えるためには「普段の備え」が大切です。最近では大規模な自然災害だけでなく、局地的なトラブルや設備老朽化による計画停電も懸念されています。家庭でも事業所でも、電気が止まったときの影響を最小限にするため、電気なしでも「最低限生活できる準備」と、「家電製品の保護」がポイントになります。
家電・冷蔵庫・エアコンの対策
冷蔵庫や冷凍庫は、ドアの開閉を控えて冷気を逃がさない意識を家族全員で共有しましょう。停電時にはコンセントからプラグを抜くことで、再通電時の過電流による故障リスクを減らします。エアコンや洗濯機など大型家電は、雷や瞬低リスク時も念のため電源を切り、コンセントを抜く対応が有効です。特に高機能な最新家電は基盤が繊細なので、電源周りのトラブルに弱いケースがあります。
懐中電灯、モバイルバッテリー、防災グッズの備え
最低限の灯りと情報源の確保も大切です。停電時のためにLED懐中電灯やランタンは各部屋ごとに常備がおすすめです。常に充電されたモバイルバッテリーを用意すると、スマートフォンや小型通信機器の充電確保につながります。
さらに、
グッズ | 用途 | 具体的なポイント |
---|---|---|
LED懐中電灯・ランタン | 照明・安全確保 | 乾電池タイプと充電式両方を備える、各部屋に1台 |
モバイルバッテリー | 通信・情報収集 | スマートフォンを数回フル充電できる容量(10,000mAh以上推奨) |
電池類(予備含む) | 各種機器の維持 | 懐中電灯・ラジオ・時計などで使うサイズをリストアップ |
携帯用ラジオ | 災害時情報取得 | 乾電池式または手回し発電式があると災害時にも安心 |
非常用飲料水・食料 | 生活維持 | 最低3日分(できれば1週間分)、家族人数分を用意 |
他にもトイレ用のポータブルトイレ袋、簡易ガスコンロなどもあると安心です。
雷対策として有効なこと
雷による電子機器の故障や火災を防ぐには、「雷サージ対策」と「電源の抜き差し」が効果的です。夏場や台風シーズンには落雷による瞬間的な高電圧(雷サージ)が家電機器を壊すトラブルが増えます。特にパソコンやインターネット周辺機器、テレビなどは被害を受けやすいので注意が必要です。
雷サージ対応タップ・避雷器の活用
「雷サージ対応」や「避雷器機能付き」の電源タップが多く家電量販店やホームセンターで販売されています。これらは雷による一時的な過電流から家電製品を守ります。
分電盤用避雷器(SPD)の設置も、持ち家でより強固な対策をしたい場合には有効です。電気工事士資格が必要なため、電気工事店やメーカーサービスに相談しましょう。
パソコンやWi-Fiルーターのコンセント対策
パソコンやWi-Fiルーターのコンセントは雷が鳴り始めたら早めに抜くことがもっとも安全です。どうしても稼働を止められない場合には「雷サージ対応タップ」に接続し、必要があればデータのバックアップも事前に済ませておきましょう。
また、ネットワークケーブルや電話線からの侵入もあるので、雷対策用の通信ケーブルアダプターも活用するとより安全性が高まります。
瞬低が起きたときの機器の守り方
瞬低(瞬時電圧低下)は一瞬だけ電圧が落ちる現象で、パソコンや精密機器が強制終了したり故障したりする危険があります。「一瞬だけ電気が消えてすぐ復旧する」ケースでも、内部データ破損のリスクがあるため事前の対策がとても重要です。
無停電電源装置(UPS)の使用方法
オフィスや在宅ワーク用のパソコン、ビジネス電話、ネットワーク機器などには「無停電電源装置(UPS)」を導入すると安心です。UPSは瞬間的な電力トラブルや停電時でも、数分〜数十分間、機器に電気を送り続けます。その間に安全なシャットダウンや保存操作が可能となり、データ消失や機器故障リスクを大幅に軽減できます。
ご家庭では、重要なパソコンやネットワークの親機にコンパクトな家庭用UPS(APC、オムロンなど国内でも入手容易)を適切な容量で設置しましょう。設置位置や配線設計も、転倒や水没リスクを避ける配置が効果的です。
対象機器 | おすすめUPS容量 | 備考 |
---|---|---|
デスクトップパソコン | 500VA~1,000VA | 1分以上稼働できる容量が目安 |
ネットワークルーター・ONU | 350VA前後 | 複数台同時使用の場合は合計出力を確認 |
NAS(外部ストレージ)等 | 700VA~1,000VA | 安全終了機能付きを選ぶ |
UPSは定期的にバッテリーチェックや交換が必要なため、年に一度は点検日を決めて動作確認することも忘れずに行いましょう。
いざという時の正しい行動と注意点

停電時にまずやるべきこと・やってはいけないこと
停電が発生した際、まずは落ち着いて状況を確認することが重要です。 漏電や火災などの二次災害を防ぐため、懐中電灯を用い安全に行動してください。停電が家庭だけか、周辺地域全体か、まずは窓から外の明かりやご近所の状況を確認しましょう。
とくにマンションや集合住宅の場合、共用部の照明や自動ドアも停止していることがありますので、無理な移動は避けてください。自宅内の分電盤を確認し、ブレーカーが落ちていれば全ての家電を一度オフにした後で、主開閉器から順番にブレーカーを戻します。それでも電気が復旧しない場合は、ご自身で無理に作業せず、必ず電力会社や管理会社に連絡してください。
やるべきこと | やってはいけないこと |
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懐中電灯で周囲を確認する | ロウソクを使う(火災のリスク) |
冷蔵庫・冷凍庫をむやみに開閉しない | 暗い中での無理な移動 |
エレベーターの使用を控える | 分電盤の安易な触り過ぎ |
電力会社・管理会社への確認連絡 | スマートフォンの電池の無駄遣い |
雷のときの過ごし方・身を守る方法
雷が発生した場合は、屋内に避難し、金属製のものや水道管、電気製品から離れることが重要です。 自宅にいる場合、窓やドアから離れましょう。落雷時には配電盤やコンセント、家電製品から雷サージが侵入する恐れがあるため、可能な家電(パソコン・テレビなど)は電源プラグを抜いておきます。
屋外にいる場合は、なるべく低い姿勢をとり、樹木や電柱、高い建物の近くからは離れてください。車やバスの中に移動できるなら、車内で待機するのが安全です。また、川やプールなど水辺には近づかないようにしましょう。
避けるべき行動 | 推奨される対応 |
---|---|
木の下や高い場所にいる | 屋内に退避し窓から離れる |
家電・配線に触れる | 主要な家電のコンセントを抜く |
水回りでの作業 | 水道管や金属から離れる |
野外作業の継続 | 自動車・バスの中に避難 |
再通電後の家電の安全な使い方
通電再開時には「一斉に全ての電化製品の電源を入れない」ことがポイントです。 停電からの復旧直後は瞬間的に大きな電流が流れ、ブレーカーが再び落ちる場合や、一部の電気機器が故障するリスクがあります。まずはブレーカーを主幹から安全に順番に戻し、必ず家電製品同士の同時使用は避けてください。
冷蔵庫やエアコン、電子レンジなど消費電力の大きい家電から順次動作確認をし、不具合や異音・異臭など異常があればすぐに電源を切り、専門業者またはメーカー窓口へ相談しましょう。
特にパソコンや電子レンジ、テレビなど、精密機器は例えば「無停電電源装置(UPS)」につないでの使用や、コンセントを挿す前に点検を行うことが大切です。停電中は冷蔵庫や冷凍庫の食品も状態を確認し、傷みやすいものがないかチェックしましょう。
家族全員でできる、簡単な定期チェック項目

突然の電気トラブルにしっかり備えるためには、家族全員でできる「定期チェック」と準備がとても重要です。忙しい日常でも、月に一度や季節の区切りごとに実施できる簡便な確認ポイントを共有しましょう。以下のようなチェック項目を用意し、住まいの安心・安全を高めてください。
家庭で実践できる「もしも」のシミュレーショントレーニング
停電、雷、瞬低などの電気トラブルは予告なく発生するため、家族全員が対応方法を理解していることが大切です。定期的な「もしも」のシミュレーショントレーニングを実施して、いざという時に落ち着いて行動できるよう備えましょう。
チェック項目 | 確認内容 | 実施頻度の目安 |
---|---|---|
非常用ライトの場所を家族で確認 | 停電時すぐに使える場所に懐中電灯やランタンがあるか確認する | 1ヶ月に1回 |
モバイルバッテリーの充電状態 | スマートフォンや照明用バッテリーが使用可能かチェック | 1ヶ月に1回 |
分電盤(ブレーカー)の確認 | 家族全員が位置と操作方法を知っているかテストする | 季節の変わり目ごと |
避難経路・退避場所の確認 | 一時避難場所や安全な場所までの移動ルートを家族で共有 | 半年に1回 |
防災グッズケースの中身チェック | 保存食、水、医薬品、カイロなど必要な物が揃っているか確認 | 3ヶ月に1回 |
火災報知器・感震ブレーカーの点検 | 正常に作動するかテストし、電池交換など必要があれば実施 | 半年に1回 |
チェック内容を家族みんなで記録し、「できた」「できなかった」結果と次回の目標を会話することで、防災意識も高まります。家族のライフスタイルや年齢に合わせて項目や実施頻度をアレンジしましょう。
お子様や高齢者と共有しておきたいポイント
家庭内には、小さなお子様や高齢者がいる場合も多く、「突然の電気トラブル時の対応」を全員で確認しておくことが不可欠です。特に以下のような点を意識してシェアしましょう。
ポイント | 具体的な取り組み |
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懐中電灯の操作方法 | 手の届く場所・点灯方法を実際に使用しながら説明 |
119番・110番通報時のルール | 緊急時の連絡法と、住所・氏名を落ち着いて伝える練習 |
電化製品の安全な扱い | 停電・雷時はプラグに触れないことや、一度電源タップを必ず抜くことを伝える |
エレベーター使用中の対処 | 停電時は慌てず非常ボタンを押す、落ち着く場所を確認しておく |
家族・近所との連絡方法 | 非常時の集合場所や、主な連絡手段(固定電話、携帯、LINEなど)を事前に確認 |
防災対策やシミュレーションを「家族全員で実施」することで、実際のトラブル時にパニックにならず安心して対応できる土台を築けます。たとえば小学校や地域コミュニティの避難訓練の日に合わせて定期チェックを行うのもおすすめです。
まとめ

停電・雷・瞬低などの突然の電気トラブルは、いつどこで起こるか分かりません。被害を最小限に抑えるためにも、日頃から家電の点検や非常用グッズ(懐中電灯やモバイルバッテリー)、雷サージ対応タップ、UPS(無停電電源装置)などの備えが重要です。事前の備えと家族でのシミュレーションが、安心して日常を送るための最善策です。